迎えの車に乗ってから真島さんはずーっと手を離さない

私は、自分がもしあの時死んでも真島さんが無事ならいいと思ってた
でも、この入院の間ずっと真島さんの様子がおかしくて、ある時お見舞いに来てくれた冴島さんに聞いてみたんだ

『冴島さん、真島さんなんか元気ない感じがするんですけど…』
「ああ…まあ、アイツなりに今回は相当ショックやったんやろな」
『…』
「ワシら、自分が殺られる事には無頓着やねん、どうせいつか死ぬくらいしか思うとらんかった、ヤクザなんてそんなもんや｣
「せやけどな、大切なもん見つけたら変わんねんな」
『大切なもの』
「ワシもそうや、家族が居るとな」
「それに、今まではムカついたら殴りに行けばそれなりにスッキリしたわ、けどもうそれは出来ん」
「ただジッとしとくんは一番アイツには難しいんやろな｣
「まだ、カタギに慣れとらんのやわ」
『そ、そうなんですか』
「それに、身に染みたんやろ、久美を失うって事がどれだけ自分にダメージ与えるか｣
『…』
「やからな、久美、お前ももう真島の一部みたいなもんや、欠けたらアカンのや」
『そっか…』

私が良いと思ってたことも、真島さんにとっては良くなかったんだな

「ワシらみたいな家族も居らんかったそういう奴は、失くす怖さこんな後になって知るもんなんやな…死っちゅうやつと誰より身近に居たのに、急に怖くなりよる。自分が生きとるのに、自分の一部が欠けてしもうて、それでも生きなきゃならんのは怖いやろ？｣
『はい…』
「せやから、ずっとアイツと居ってやってくれや」


それを聞いた時に、もう私一人の身体じゃないんだなって思った
そこまで思われてるんだって
だから、自分のことももっと大事にしようって…



繋がれた手にギュッと力を入れてみる

「ん？」

私を見る真島さんに、ニコッと笑顔で返す
手を離して、肩をグイッと引き寄せられ
私はその胸に抱きついた
大きな手が、ポンポンと私の背中を優しく叩いた

あなたがいるから生きていける
お前がいるから生きていける

二人はもう、一つなんだ