俺は夏菜子の待つ会長室へ戻る
何年ぶりや？
アイツとの事は、俺の中で区切りがついとる
それを伝えればええだけや

ドアを開ける

「吾朗さん！｣

夏菜子が俺に抱きついてきた

「お、おい｣
「会いたかった…｣

潤んだ目で俺の事を見上げる
途端にあの頃に戻ったような錯覚を起こした

「夏菜子…俺な―｣「いや！言わないで！｣
「もう離れたくない！吾朗さんの傍にいたいの｣
「待てや、話聞け｣

夏菜子の肩を掴んで離す

「俺な、惚れとる女おんねん｣
「…｣
「マジなんや、絶対離しとうないんや｣
「お金を取った人なのに？｣
「そんな奴ちゃう、あれは俺のためだと思ってやったんや、そういう奴や｣
「体を売るような人なのに？｣
「ああ、せや、せやけど本気で惚れたんや、誰に何を言われようとアイツが好きなんや…愛しとるんや…｣
「そんな…｣
「だから、お前とは戻らん｣



終わったと思ったのに
私の気持ちはずっと真島さんの事でいっぱいだった
酷いことを言って、真島さんを傷つけたのに…

ポケットのスマホが震えてる
見ると知らない番号

『もしもし』
「久美か？｣
『冴島さん？』
「せや、突然スマンな、会えるか？｣
『…』
「頼むわ｣
『わかりました』