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18ーそれは突然に
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楽しかった時間の余韻を引きずり
私は仕事に復帰した
あれからも、真島さんからは電話やメールも
相変わらずほぼ毎日あるし、時間が空けば会いに来てくれる、寂しい思いをさせないようにしてくれてるのかな
とある日の帰り道
買い物を終えて家へと向かって歩いていた
車道に一台の黒塗りの車
私の少し前で停り、後部座席のドアが開く
「久美さんですね」
『どちら様ですか?』
「東城会六代目会長堂島大吾と申します」
その人は車から降り、丁寧に頭を下げた
『何か、私に?』
「お時間ありますか?」
『少しなら』
「車の中でいいので」
『分かりました』
東城会の会長?
一番偉い人?
東城会って事は、きっと真島さん絡みの話だろう
「お時間取らせるのもあれなので、単刀直入に言います」
『はい』
「真島さんと、別れてください」
何?
別れる…?
『あ、あの』
「真島さんに、縁談があります。東城会にとってとても重要な繋がりになるものです。久美さんには詳しくお話してもわからないと思うので…、真島さんにとっても、良い話です」
『ま、真島さんは…それを望んでるんですか?』
「まだ、具体的には話してません。でも、東城会の事がかかっていれば断ることはほぼ出来ません、真島さんは…東城会の幹部ですから」
胸が締め付けられる
『私は…』
「久美さんの事は、少し調べさせて貰いました…その…売春していたことも」
ああ…胸がキュッとなる
こんな日が来るんじゃないかと
心のどこかで思ってた
『そうですか』
「今回の縁談、真島さんに、とても相応しい御相手です」
私は…相応しくないと…
そっか…
『どうすれば…いいんですか』
「姿を消して頂きたい」
『無理です、子供も居ますから』
「住む場所などは全てこちらで用意します」
『どこに行けと?』
「なるべく遠くに」
どうして私が東城会のためにそんな事までしなきゃいけないのか
『別れればいいんですよね?』
「はい」
『そうしますから、私に構わないでください』
『真島さんも、断れないんですよね?』
「そうですね、恐らく」
それなら、もう私には抗うすべもない
「では、これを」
『なんですか?』
「お金にお困りの様でしたので」
手切れ金?
『受け取らなければ?』
「それは困ります」
『…』
『分かりました』
『一つだけ、教えてください』
「私に答えられることなら」
『どうして真島さんなんですか?』
「御相手の女性が…真島さんの元恋人です」
『え?』
「二人は、以前東城会のせいで引き裂かれた…ようなもので、嫌いで別れたわけではありません。真島さんは、根っからの極道なんですよ、心底惚れてた女性がいても、組、東城会のためにその時は離れるしかなかった…東城会の現会長としても、あの時の罪滅ぼしとでも言いますか…あの二人には辛い思いをさせてしまったので…」
『その方は…今でも真島さんのことを?』
「そうです、とある会社のご令嬢です」
なるほどね、確かに売春婦よりずっといいに決まってる
私みたいなのは捨てても大したことはないって事か
どのくらい前のことなのかわからないけど
別れてもずっと好きでいたって事?
そっか…
そんな人がいたんだ
なんだ…
『ありがとうございます』
「わかって頂けて良かったです」
『真島さんが…そのほうが、幸せならいいです』
そう言って、車から降りる
手には無機質な封筒
恐らく、通帳と印鑑が入ってるんだろう
車が走り出して、直ぐに見えなくなった
歩道の脇の石垣にへたり込む
覚悟してたはずなのに…
どんなに幸せでも、それに終わりが来ることを
私のような人間が幸せをずっと続けられるわけがないんだもん…
空を見上げる
だめ、強くいなきゃ
娘が心配する
幸せな夢を見れた
それだけでいいじゃない
あんなに大切にされて、愛されて…
人生の中で一番幸せを感じた
そんな気持ちになれただけで…
心の中にずっと真島さんの事を大切な思い出として仕舞っておけば
『ふぅぅ…』
携帯を出して、真島さんの名前を出す
『ありがとう…さよなら』
一言メールを送って
全て消去するだけ
送信を押せば、全て終わって元に戻るだけ
怖くないよ、戻るだけなんだから
涙で見えずらくなった画面の
送信ボタンを押した