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馬鹿な俺
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俺には久美と言う大切な奴が居った
そりゃもう何よりも大事やった
自分の命よりも…
そんなに大事やったのに
馬鹿な俺は…くだらん事で意地を張って
手放してしもうた
『なんでよ、なんでそうなるの?』
「あ?組のもんが見た言うとるんや」
『だからぁ〜、言ってるじゃん!違うってば!』
「んならなんであないなとこに居ったんや」
『それは…』
「俺に言えない事があるんか」
久美が、ホテル街で知らん男の車から降りてきた
それを聞いたのは3日前の事や
調べさせたらどこぞの金持ちのボンボン
カタギの男やと
「他の男と何してたんや?あ?」
『…ホントに、辞めてよ…』
「あ?聞いたことに答えろや、久美」
『怖い…』
「そりゃお前ヤクザやからな、俺は!」
『やましい事なんてしてない…』
「ハッ!お前もどうせカタギの男の方がええんやろ」
『何言ってんの!?』
「ええで?怖いんやろ?なぁ!んならもう終わりやな」
『…なんで…何でそんなこと…言うの…離れないって…いったのに…』
「お前が望んだんやろが!」
頭に血が上って後先考えずに勝手な憶測で
久美を責めた
ただのヤキモチやったんや…
この世で一番信じとる人間や
それなのに、口から出てくる言葉は
大切な久美を傷付けるものばかりで…
泣いとる久美をそのまま置いて部屋を出た
あれから一ヶ月…
意地を張り続けた俺は、久美からの電話にもメールにも応えず
そのうち連絡さえも来なくなった
今日…一ヶ月ぶりに久美を見かけた
こんなに会わなかったこともなければ、声を聞かなかったこともないのに、一ヶ月ぶりに見た久美は…知らん女のように見えた
その時に、どれだけ自分がアホなのか
どれだけ取り返しのつかないことをしたのか
どれだけ久美の事が大切だったのか
思い知らされた
久美の隣には
知らん男が居った…
やっぱりそうなんか
そりゃそうか、普通の男の方が久美を幸せに出来るよな
良かったやないか
そんな事を頭の中で繰り返し繰り返し唱えながら
背中を向けて歩き出す
『真島さん!』
嘘やろ
『真島さんってば!』
やめろ久美
そう思ってても、俺の腕を掴むその小さな手の温もりがまだ懐かしいとまでは思えなくて…
「久美…」
その眼からは、ポロポロと涙が零れ落ちる
『なんで…』
「…」
『どうして手離しちゃうのよ!』
『離さないって言ったのに!』
「…俺の事なんかほっとけや」
『なんで?放っておけるわけないじゃない!』
「なんでや、こんなヤクザなんかよりもっとお前のこと幸せにしてくれる奴おんのやろ?それでええやんか」
『話は最後までちゃんと聞いて』
久美の横にさっきまで居った男が近づいてきた
「真島さん…ですね」
「あ?」
「ああ、失礼…私はこういう者です」
差し出された名刺
そこには調べさせた会社の専務の肩書き
コイツの親父の会社
今更や、そんなもんとうに知っとる
それを受け取らずにいると
ソイツはまた胸ポケットにしまう
「久美がお世話になってます」
「は?」
おい、もう呼び捨てなんか?
クソッタレが!
「私は久美の従兄弟です。色々と相談を受けてましてね」
「従兄弟!?相談?」
「あなたとの事について…ですよ」
「…」
『ちょっと!回りくどい言い方したらもっとややこしくなる!』
「ああ、ごめんごめん」
『真島さんの事…真島さんとの事相談してたの…これからも一緒に居れるように…』
「なんやて?」
「久美にはもう両親が居ません、ご存知かと思いますが事故で亡くしました」
「あ?ああ…」
「アレからは、うちで久美を引き取ってました。なので従兄弟ですが妹のような存在です。」
「…」
「久美が、あなたとの交際をうちの父や母に認めてもらうために私に相談していた、という事です」
「そ、そうなんか?」
『そうだよ…言わなかった私もいけなかったよね…』
「んでも…ヤクザの俺とのなんて賛成されるわけないやろ?」
「私に相談するほど、真剣という事ですよ」
『…』
久美は、下を向いたままで
『賛成して貰えなくても…私の真剣な思いはおじさんとおばさんに分かってもらいたくて…』
「私は、真島さんの事をよく聞いていたので…まあ、久美を幸せにしてくれるなら」
俺は拳を握りしめた
「当たり前や、半端な気持ちで一緒に居たわけやない」
「とりあえず、誤解は解けましたかね」
「あ、ああ…」
「それなら久美、後は二人で話なさい」
『はい…』
そう言うと従兄弟だと言った男は待たせていた車に乗って去っていった
『真島さん…』
「久美…スマンかった…」
『私こそ…』
「いや、俺がアホやった…お前のこと一番わかっとると思っとったのに…」
『私も…嫌な思いさせてごめんなさい』
「久美が謝ることないで?なんや…お互いまだまだ知らん事あるな」
『うん』
「ほなら、これからもっと知っていけばええか」
『え?!』
「せやから、これからも一緒に居ってくれや」
『はい!』
久美を強く強く抱きしめる
もうこんな馬鹿な事はしない
ホンマにコイツしか居らんのや
『うぅ…真島…さん…く、苦しいッ』
「あ、スマン!」
『はぁ…ンフッ、嬉しい』
「もう、今度こそ離さへんで」
コクッと頷く
これからも色々超えなければならない壁はあるだろうけど…お前とのこれからの旅は
どんなに辛くなろうとも久美がそばに居るそう思うだけで強くなれるんや
どんな事からも俺が守ってやるで…久美
馬鹿な俺やけど
これからも宜しくやで?
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