あんだざの章
ぽっかりと空に浮かんだ月の下。
どれくらい眠っていたのだろうか。目覚めると坂口と太宰は小舟の上にいた。
「ここ、どこ……?」
「さあな」
辺りには何もなく、月明かりだけが二人を照らすばかりである。岸すら見えず、ここが川なのか海なのかすらわからなかった。
「この舟、どこに行くんだろう?」
「さあて、どこだろうなぁ?」
小舟はただただゆったりと、二人を乗せて進んでゆく。
「行き先もわからないのに、あんたは怖くないのか?」
「怖くないよ、安吾がいるから」
「そうかい、そりゃあよかった」
坂口にはわかっていた。ここが現ではないことも、小舟の行き先が図書館ではないことも。口には出さなかった。きっと太宰もなんとなく気づいている。
俺たちは帰れない場所まで来てしまった。
けれども、二人でなら、どこまでも行けるだろう。
小舟はゆったりと進んでゆく。
二人を乗せてどこまでもどこまでも―――
どれくらい眠っていたのだろうか。目覚めると坂口と太宰は小舟の上にいた。
「ここ、どこ……?」
「さあな」
辺りには何もなく、月明かりだけが二人を照らすばかりである。岸すら見えず、ここが川なのか海なのかすらわからなかった。
「この舟、どこに行くんだろう?」
「さあて、どこだろうなぁ?」
小舟はただただゆったりと、二人を乗せて進んでゆく。
「行き先もわからないのに、あんたは怖くないのか?」
「怖くないよ、安吾がいるから」
「そうかい、そりゃあよかった」
坂口にはわかっていた。ここが現ではないことも、小舟の行き先が図書館ではないことも。口には出さなかった。きっと太宰もなんとなく気づいている。
俺たちは帰れない場所まで来てしまった。
けれども、二人でなら、どこまでも行けるだろう。
小舟はゆったりと進んでゆく。
二人を乗せてどこまでもどこまでも―――