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day by day

◆眩い君

 青く広がる空にジリジリと照りつける太陽。日陰にいてもじんわりと汗ばむ季節になった。そんな中、高村は木陰でスケッチをしていた。目線の先には、向日葵。の、中にいる司書。
 中庭の花の手入れをするのだと、室生と張り切っていた。森からは熱中症にならないよう、こまめに水分を取るように、と言われていたっけ。
 僕も大概だけれど、この暑さでよくあんなに動き回れるなぁ……などと思いながら彼女の姿を追う。草むしりをし、肥料をやり、土混じりの汗を流すなんて、自分には到底できない、と高村は思った。だのに、何故だろう。
「眩しいなぁ」
 楽しそうな彼女のその姿は眩しかった。
 室生がホースを持ってきた。今度は水やりをするらしい。司書が先を持ち、構える。と、勢いよく水が飛び出した。「きゃあ!」と司書が叫ぶ。水の勢いが強すぎたのだった。耐えられず手を放してしまったために、生き物のようにホースがのたうちまわる。思わず笑いだす司書。謝る室生の声が聞こえるが、高村にはどうでもよかった。目が司書に釘づけになる。

 太陽のように輝くたくさんの向日葵
 きらきらと舞う水飛沫
 その中で笑う司書

 なんて眩いのだろうか。美しく煌めいて、目を逸らしたくなる程なのに逸らせない。
 高村の手が動く。キャンバスに筆を滑らせる。そうしてどれくらいの時間が経っただろうか。気づけば疲れて眠っていたらしい。
「高村先生、熱中症になっちゃいますよ?」
「手入れも終わったから図書館に戻りましょう?」と司書に起こされ、「あれ?」とあたりを見れば、夕暮れ時になっていた。「今行くよ」と画材を片づけ始める。
「それから、」
 司書はほんのり頬を染めながら言った。
「ありがとうございます」
「えっ」
 きょとんとする高村に「何でもないです」と笑って司書は歩き出す。
「あっ」と高村は気づき顔を赤らめる。
 手の中のキャンバスには向日葵の中で大輪の花のように笑う司書の姿があった。
「本当、君は眩しいな」
 そう小さく呟くと、高村は司書の後を追うのだった。
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