day by day
◆お疲れさん
乱雑に脱ぎ捨てられた服、積み上げられて今にも倒れそうな本の山、しまい逃した炬燵の上には食べかけのつまみに飲みかけの酒瓶、床には書きかけの原稿だのゴミなのかそうでないのかわからないものが散乱している。足の踏み場もないこの部屋の主は、俺、坂口安吾だ。別にいいだろう?困ってないし。
珍しく机に向かって原稿とにらめっこしていた時だった。
バンッと激しくドアが開いたんで驚いて振り向いたら、司書がツカツカとこっちに歩いてきて、そのまま俺のベッドにダイブした。
「もうやってらんない!」
……、いや、ちょっとまて。アンタ館長と一緒に上の奴らに報告しに行ってたんじゃなかったのか。というか、
「ここ司書室じゃねぇんだけど?」
「面倒くさい」
だからってわざわざこんな汚い部屋に来なくてもいいんじゃないだろうか。
しかたねえなぁとベッドに腰掛けると
「なでなでして」
と手を掴まれた。
こんなに甘える彼女が今まであっただろうか、いや、ない。口調も幼くなっているし、顔もほんのり赤い。…赤い?もしかして、こいつ酒を飲んだな?普段から酒と煙草の匂いが充満している部屋だから気がつかなかったが、司書から少し酒の匂いがする。酒などほとんど飲まない奴がこんなになるほど飲むなんて、余程きついことを言われたのだろうか。髪を撫でられてうとうとしている顔をよく見れば、目も赤く、泣き腫らした後のようだった。
「無理、すんなよ…」
気持ちよさそうに眠ってしまった彼女に向かってそんな言葉しか言えない自分がなんだか虚しくなって、俺も隣に横になる。
頼れと言っても無理はするなと言っても絶対に一人で抱え込もうとするこいつに掛けてやる相応しい言葉など、今の俺は持っていないけれど、せめて、ここに逃げてきたときくらいは受けとめてやろう。まぁ、とりあえず、少しは部屋を片付けるか。
乱雑に脱ぎ捨てられた服、積み上げられて今にも倒れそうな本の山、しまい逃した炬燵の上には食べかけのつまみに飲みかけの酒瓶、床には書きかけの原稿だのゴミなのかそうでないのかわからないものが散乱している。足の踏み場もないこの部屋の主は、俺、坂口安吾だ。別にいいだろう?困ってないし。
珍しく机に向かって原稿とにらめっこしていた時だった。
バンッと激しくドアが開いたんで驚いて振り向いたら、司書がツカツカとこっちに歩いてきて、そのまま俺のベッドにダイブした。
「もうやってらんない!」
……、いや、ちょっとまて。アンタ館長と一緒に上の奴らに報告しに行ってたんじゃなかったのか。というか、
「ここ司書室じゃねぇんだけど?」
「面倒くさい」
だからってわざわざこんな汚い部屋に来なくてもいいんじゃないだろうか。
しかたねえなぁとベッドに腰掛けると
「なでなでして」
と手を掴まれた。
こんなに甘える彼女が今まであっただろうか、いや、ない。口調も幼くなっているし、顔もほんのり赤い。…赤い?もしかして、こいつ酒を飲んだな?普段から酒と煙草の匂いが充満している部屋だから気がつかなかったが、司書から少し酒の匂いがする。酒などほとんど飲まない奴がこんなになるほど飲むなんて、余程きついことを言われたのだろうか。髪を撫でられてうとうとしている顔をよく見れば、目も赤く、泣き腫らした後のようだった。
「無理、すんなよ…」
気持ちよさそうに眠ってしまった彼女に向かってそんな言葉しか言えない自分がなんだか虚しくなって、俺も隣に横になる。
頼れと言っても無理はするなと言っても絶対に一人で抱え込もうとするこいつに掛けてやる相応しい言葉など、今の俺は持っていないけれど、せめて、ここに逃げてきたときくらいは受けとめてやろう。まぁ、とりあえず、少しは部屋を片付けるか。