day by day
◆朝の特権
徳田秋声の朝は早い。夜明けと共に起き、身支度を整える。自室をさっと掃除した後は食堂で早めの朝食を取る。この時間はほとんど人がいないので落ち着くのだ。一息つくと中庭で少しだけ花を摘む。今の時期はアマリリスが綺麗に咲いている。それを持って向かうのは司書室だ。そっと入室し、摘んだばかりの花を窓際に飾る。音を立てないように、執務机に雑に積まれた書類や本を整理する。これが助手である徳田の日課であった。
さて、そろそろ司書を起こさねばならない。
司書室の奥に、小さな研究室がある。扉には「就寝中」の札がかかっていた。こことは別に司書の部屋はあるのだが、仕事がしやすいから、と彼女はよくここで寝泊まりしているのだった。
「司書さん、入るよ」
一声掛けて中に入る。司書はまだ夢の中だ。すやすやと眠る彼女の顔を覗き込み可愛いな、などと思いながら、べりっと布団を剥いで起こしにかかった。
「司書さん、朝だよ。ほら、起きて」
「んん~、もう少しだけ…」
「今日の朝ごはんは君の好きなオムレツだったけど、君の分、なくなっても知らないよ?」
「それは困る……」
寝ぼけ眼でもそもそと起きだす司書に「おはよう」と声を掛ければ「おはよう、徳田先生」と彼女はふにゃりと笑って答えた。
(役得だよなぁ……)
普段はキリッとしている司書のこんなに気の抜けた姿は、毎朝起こしに来る徳田くらいしか知らない。着替えだした司書を見て慌てて部屋を出た徳田は、彼女を待ちながら助手としての特権に少し優越感に浸るのだった。
徳田秋声の朝は早い。夜明けと共に起き、身支度を整える。自室をさっと掃除した後は食堂で早めの朝食を取る。この時間はほとんど人がいないので落ち着くのだ。一息つくと中庭で少しだけ花を摘む。今の時期はアマリリスが綺麗に咲いている。それを持って向かうのは司書室だ。そっと入室し、摘んだばかりの花を窓際に飾る。音を立てないように、執務机に雑に積まれた書類や本を整理する。これが助手である徳田の日課であった。
さて、そろそろ司書を起こさねばならない。
司書室の奥に、小さな研究室がある。扉には「就寝中」の札がかかっていた。こことは別に司書の部屋はあるのだが、仕事がしやすいから、と彼女はよくここで寝泊まりしているのだった。
「司書さん、入るよ」
一声掛けて中に入る。司書はまだ夢の中だ。すやすやと眠る彼女の顔を覗き込み可愛いな、などと思いながら、べりっと布団を剥いで起こしにかかった。
「司書さん、朝だよ。ほら、起きて」
「んん~、もう少しだけ…」
「今日の朝ごはんは君の好きなオムレツだったけど、君の分、なくなっても知らないよ?」
「それは困る……」
寝ぼけ眼でもそもそと起きだす司書に「おはよう」と声を掛ければ「おはよう、徳田先生」と彼女はふにゃりと笑って答えた。
(役得だよなぁ……)
普段はキリッとしている司書のこんなに気の抜けた姿は、毎朝起こしに来る徳田くらいしか知らない。着替えだした司書を見て慌てて部屋を出た徳田は、彼女を待ちながら助手としての特権に少し優越感に浸るのだった。