短編 落乱
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【現パロ】
これまでのあらすじ。
後輩(孫兵とお付き合いしている)にダブルデートに誘われた私は、水族館と遊園地の複合レジャー施設に行くことになった。1日楽しんだ後、これから帰路に着くよ!
半日を一緒に過ごしたイルカのぬいぐるみには、右のヒレに押し笛が入っている。
ぬいぐるみを抱き抱えて歩くなんて幼い時分にもした記憶がない。最初は少しの気恥ずかしさがあったが、後輩が自分と揃いのシロイルカを抱える姿が可愛かったから、私もついつい仕舞うタイミングを逃して始終抱っこしてしまっていた。
私がイルカのぬいぐるみを「キュイッ」と鳴らすと、後輩の腕の中にいるシロイルカが返事をくれるのが楽しい。
灯りも少なく暗い道を駅へ向かう途中、「せっかくだから帰り道は海沿いを歩こう」と、八左ヱ門の腕を引いて大きな通りから逸れた遊歩道を進んだ。
後輩が駆けて、私たちを追い抜かす。
コンクリートに波が打ち付けられる音と木々がざわめく音だけが聞こえた。
少し開けた場所に出る。
この時間では人は少ないだろうと考えていたが、まさか無人とは思わなかった。真っ黒な海から心地よい風が吹いて来る。
柵から少し身を乗り出して海を覗くと、弾けた波飛沫が少し顔にかかった。
「海の匂い!」
少し離れたところから後輩の大きな声が届く。
私は海に囲まれて育ったから、この臭いが、音が、当たり前に感じるけれど、彼女には珍しいものなのかと思うと思わず小さく笑ってしまった。
同じく噛み殺すように笑う八左ヱ門が、後輩たちを眺めながら「まだまだ元気だな」と呟いて、私の隣に頬杖をついた。
昼間に乗ったジェットコースターのレールが動くカタカタという音が響いたので、そちらに目を向ける。おそらく最終運転だろう乗客の悲鳴が聞こえて、また2人でクスクスと笑った。
「今日も楽しかった」と呟くと、柵に掛けた私の手に八左ヱ門の熱い手が重なった。
「朝の土砂降りはどうなる事かと思ったけどな」
「雨女なもんで、すみませんね〜」
背中にも温もりを感じたので、私は思い切って八左ヱ門の手を自分のお腹に回して、体を後ろに預ける。頭上の八左ヱ門の顔を見上げると、マスクの向こうに彼のニッコリ笑った顔が見えた。実際は見えてないんだけど。
たぶん私の照れたような顔も八左ヱ門にはバレているんだろう。
「ん。」
マスクを顎にずらした八左ヱ門が、こちらを見つめてきた。
先を越された!と悔しい気持ちになるが、二人とも同じ気持ちなのは分かりきっているので、私も観念して体を翻す。八左ヱ門の手が私の腰に回った。私も最後の悪あがきと思い、八左ヱ門の背中に腕を回して頬を肩に預けてみるが、彼は動かない。
ズルいなぁ…今回は私の負けか。
あちらはあちらで仲良くしているだろうけど、あまり後輩たちを待たせてしまうのも忍びない。
覚悟を決めて、自分のマスクを下にズラす。
八左ヱ門の顔が近づいてきて、目を瞑った。
一瞬だけ口先が触れたので顔を離したが、八左ヱ門は物足りないのかまた顔を近づけてくる。
触れた唇に、今度は三つだけ数えて顔を離した。
素早くマスクを付け直して八左ヱ門の手を握り、元の道へ戻るよう引く。
ここが外でなかったら、私ももう少し素直になれたのに。
後輩たちを待たせていなければ、もう少し海風に当たっていたかもしれない。
照れ隠しにイルカのぬいぐるみを抱き直して「今日も一日楽しかった」ともう一度告げる。八左ヱ門が「また来ような」とイルカの右ヒレに触れたので、イルカが「キュイっ」と返事をした。
これまでのあらすじ。
後輩(孫兵とお付き合いしている)にダブルデートに誘われた私は、水族館と遊園地の複合レジャー施設に行くことになった。1日楽しんだ後、これから帰路に着くよ!
半日を一緒に過ごしたイルカのぬいぐるみには、右のヒレに押し笛が入っている。
ぬいぐるみを抱き抱えて歩くなんて幼い時分にもした記憶がない。最初は少しの気恥ずかしさがあったが、後輩が自分と揃いのシロイルカを抱える姿が可愛かったから、私もついつい仕舞うタイミングを逃して始終抱っこしてしまっていた。
私がイルカのぬいぐるみを「キュイッ」と鳴らすと、後輩の腕の中にいるシロイルカが返事をくれるのが楽しい。
灯りも少なく暗い道を駅へ向かう途中、「せっかくだから帰り道は海沿いを歩こう」と、八左ヱ門の腕を引いて大きな通りから逸れた遊歩道を進んだ。
後輩が駆けて、私たちを追い抜かす。
コンクリートに波が打ち付けられる音と木々がざわめく音だけが聞こえた。
少し開けた場所に出る。
この時間では人は少ないだろうと考えていたが、まさか無人とは思わなかった。真っ黒な海から心地よい風が吹いて来る。
柵から少し身を乗り出して海を覗くと、弾けた波飛沫が少し顔にかかった。
「海の匂い!」
少し離れたところから後輩の大きな声が届く。
私は海に囲まれて育ったから、この臭いが、音が、当たり前に感じるけれど、彼女には珍しいものなのかと思うと思わず小さく笑ってしまった。
同じく噛み殺すように笑う八左ヱ門が、後輩たちを眺めながら「まだまだ元気だな」と呟いて、私の隣に頬杖をついた。
昼間に乗ったジェットコースターのレールが動くカタカタという音が響いたので、そちらに目を向ける。おそらく最終運転だろう乗客の悲鳴が聞こえて、また2人でクスクスと笑った。
「今日も楽しかった」と呟くと、柵に掛けた私の手に八左ヱ門の熱い手が重なった。
「朝の土砂降りはどうなる事かと思ったけどな」
「雨女なもんで、すみませんね〜」
背中にも温もりを感じたので、私は思い切って八左ヱ門の手を自分のお腹に回して、体を後ろに預ける。頭上の八左ヱ門の顔を見上げると、マスクの向こうに彼のニッコリ笑った顔が見えた。実際は見えてないんだけど。
たぶん私の照れたような顔も八左ヱ門にはバレているんだろう。
「ん。」
マスクを顎にずらした八左ヱ門が、こちらを見つめてきた。
先を越された!と悔しい気持ちになるが、二人とも同じ気持ちなのは分かりきっているので、私も観念して体を翻す。八左ヱ門の手が私の腰に回った。私も最後の悪あがきと思い、八左ヱ門の背中に腕を回して頬を肩に預けてみるが、彼は動かない。
ズルいなぁ…今回は私の負けか。
あちらはあちらで仲良くしているだろうけど、あまり後輩たちを待たせてしまうのも忍びない。
覚悟を決めて、自分のマスクを下にズラす。
八左ヱ門の顔が近づいてきて、目を瞑った。
一瞬だけ口先が触れたので顔を離したが、八左ヱ門は物足りないのかまた顔を近づけてくる。
触れた唇に、今度は三つだけ数えて顔を離した。
素早くマスクを付け直して八左ヱ門の手を握り、元の道へ戻るよう引く。
ここが外でなかったら、私ももう少し素直になれたのに。
後輩たちを待たせていなければ、もう少し海風に当たっていたかもしれない。
照れ隠しにイルカのぬいぐるみを抱き直して「今日も一日楽しかった」ともう一度告げる。八左ヱ門が「また来ような」とイルカの右ヒレに触れたので、イルカが「キュイっ」と返事をした。
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