短編 落乱
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【くの一の恐ろしさ、お教え致しましょうか】潮江文次郎
草木も眠る丑三つ時。
夜間演習から帰ると、学園には潮江文次郎の鍛錬する声が響いていた。
私と文次郎は昔から合同授業があると何かとコンビを組まされたりする腐れ縁。
結構仲が良かったりする。
1年前、五年生のはじめの頃は私もよく文次郎と一緒に夜中に鍛錬していたけれど、ここ最近は顔を合わせないくらい生活リズムが変わっていた。
私はプロのくのいちになると決めてからあまり筋トレはしていない。
上級生になって、色を使うことが増えて、忍者とくの一は役割が全然違うんだと気が付いた。
このまま忍たまたちと同じペースで筋トレを続けてムキムキになんてなったりしたら目も当てられないもの。
そんなわけで、私はそれまで忍たまに交じって行っていたトレーニングをやめた。
今日みたいに夜間演習がある日以外は、昼間に礼儀作法や体力トレーニングに勤しみ、夜は美容のためにぐっすり眠るという健全な生活をしている。
毎日のように会っていた文次郎との時間が減ってしまったのはとても残念だったが、
久々に聞いたあいつの声に「今日も頑張ってるな」なんて嬉しくなった。
私が文次郎を意識しだしたのは、いつからだったか。
これといったキッカケはなかった気がするけれど、五年生になってから卒業後の進路についてよく考えるようになった。
10年後、私は何をしているだろうと考えたときに、
『今と同じように文次郎と一緒にいたい。』
と思ってしまったのが、運の尽き。
学園一ギンギンに忍者している男、潮江文次郎に片思いなんて、頭を抱えたくなってくる。
忍者の三禁とはよく言ったもので、しばらく私は一人で悩んだ。
あいつは私のことは男とまでは思っていなくとも“女の子”だとはかけらも思っていないだろう。
「よっ 文次郎。今晩もよくやるわね。」
「名前、久しぶりだな。そう言うお前は、最近俺たちのトレーニングに参加しないじゃないか。体、鈍ってるんじゃないか?」
なんて少し意地悪に笑いながら、嫌味な言い方をしてくるのは、きっと私のことを同級生と同じような友人だと思っているから。
「おあいにく様。体力トレーニングと戦闘訓練は続けてるわよ。」
「そうか、じゃあちょうどいい。今日は1人で走り込みをしていたんだが、今から組手に付き合ってくれ。」
「いやよ、夜更かしは美容の敵なの。夜間演習で疲れたし、私はもう寝るわ。」
「ほどほどにしなさいよ。」と言いながら、私はあらかじめお香の匂いをつけておいた手拭いを文次郎に手渡した。
「おう、ありがとう。」と汗を拭きながら文次郎が言うのを聞きながら、くのいち教室へと踵を返す。
この手ぬぐいで、少しくらい私が女の子だってことを意識すればいい。
一時は悩んだけれど、悩んだって仕方がない。
だって私は、まだ潮江文次郎の“女の子”の土俵にさえ立っていないんだもの。
これは色の授業の一環だと思って、文次郎のこと振り返らせてやるつもり。
「名前のやつ、今まで美容なんて気にするタマじゃなかったくせに…」
潮江文次郎は手拭いの匂いをスン…と吸い込んで、頬を赤らめながら呟いた。
草木も眠る丑三つ時。
夜間演習から帰ると、学園には潮江文次郎の鍛錬する声が響いていた。
私と文次郎は昔から合同授業があると何かとコンビを組まされたりする腐れ縁。
結構仲が良かったりする。
1年前、五年生のはじめの頃は私もよく文次郎と一緒に夜中に鍛錬していたけれど、ここ最近は顔を合わせないくらい生活リズムが変わっていた。
私はプロのくのいちになると決めてからあまり筋トレはしていない。
上級生になって、色を使うことが増えて、忍者とくの一は役割が全然違うんだと気が付いた。
このまま忍たまたちと同じペースで筋トレを続けてムキムキになんてなったりしたら目も当てられないもの。
そんなわけで、私はそれまで忍たまに交じって行っていたトレーニングをやめた。
今日みたいに夜間演習がある日以外は、昼間に礼儀作法や体力トレーニングに勤しみ、夜は美容のためにぐっすり眠るという健全な生活をしている。
毎日のように会っていた文次郎との時間が減ってしまったのはとても残念だったが、
久々に聞いたあいつの声に「今日も頑張ってるな」なんて嬉しくなった。
私が文次郎を意識しだしたのは、いつからだったか。
これといったキッカケはなかった気がするけれど、五年生になってから卒業後の進路についてよく考えるようになった。
10年後、私は何をしているだろうと考えたときに、
『今と同じように文次郎と一緒にいたい。』
と思ってしまったのが、運の尽き。
学園一ギンギンに忍者している男、潮江文次郎に片思いなんて、頭を抱えたくなってくる。
忍者の三禁とはよく言ったもので、しばらく私は一人で悩んだ。
あいつは私のことは男とまでは思っていなくとも“女の子”だとはかけらも思っていないだろう。
「よっ 文次郎。今晩もよくやるわね。」
「名前、久しぶりだな。そう言うお前は、最近俺たちのトレーニングに参加しないじゃないか。体、鈍ってるんじゃないか?」
なんて少し意地悪に笑いながら、嫌味な言い方をしてくるのは、きっと私のことを同級生と同じような友人だと思っているから。
「おあいにく様。体力トレーニングと戦闘訓練は続けてるわよ。」
「そうか、じゃあちょうどいい。今日は1人で走り込みをしていたんだが、今から組手に付き合ってくれ。」
「いやよ、夜更かしは美容の敵なの。夜間演習で疲れたし、私はもう寝るわ。」
「ほどほどにしなさいよ。」と言いながら、私はあらかじめお香の匂いをつけておいた手拭いを文次郎に手渡した。
「おう、ありがとう。」と汗を拭きながら文次郎が言うのを聞きながら、くのいち教室へと踵を返す。
この手ぬぐいで、少しくらい私が女の子だってことを意識すればいい。
一時は悩んだけれど、悩んだって仕方がない。
だって私は、まだ潮江文次郎の“女の子”の土俵にさえ立っていないんだもの。
これは色の授業の一環だと思って、文次郎のこと振り返らせてやるつもり。
「名前のやつ、今まで美容なんて気にするタマじゃなかったくせに…」
潮江文次郎は手拭いの匂いをスン…と吸い込んで、頬を赤らめながら呟いた。
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