【置いとくだけ】私の弟は死んだ
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授業が終わってから山田先生に従って、今後の予定を聞くために学園内を移動する。
生徒たちもついて来たがったが、結局委員会やら掃除当番やらアルバイトで散り散りになった。
下級生の授業はこの時間には終わり、各々好きな時間を過ごしているらしい。上級生になると実習などで時間が不規則になるようで、これから私もその授業を受け持つ可能性があるということだった。
山田先生は、歩きながら目に見えた建物を次々と案内してくれる。
これだけの広大な敷地であっても、やはり忍術を学ぶ学校とだけあって正確な地図を紙などに残していないらしい。
新入生用の簡単な地図で主要なものの場所は把握したが、学園全体を把握するにはそれなりに時間がかかってしまいそうだ。
「あそこが煙硝蔵です。私と同じ黒い装束の教師がいるでしょ?あの人が、同じ一年は組教科担当の土井半助ですよ。」
「これから関わることかが多くなる。挨拶していきましょ。」という山田先生のにこやかな声を聞きながら、私は口を開けた間抜けな顔でフリーズした。
あの半助にそっくりな男がそこに立っていたのだ。
「土井先生、今ちょっといいかね?」
男に話しかける山田先生の声を聞きながら、必死に感情を押し殺して状況を整理しようとする。
土井半助、名前まで一緒なのか?こんなにも似通った顔で同じ名前で別人な筈はない。きっとこの男は私の知っている土井半助だ。
過去あんなにも探し回った半助だ。
死んだはずの人間だ。
男が山田先生の呼びかけでこちらへ顔を向け、その後ろにいた名前の姿に気づいて目を丸くして固まる。
2人して目を見合わせて黙り込んだ。
時間が止まったようだった。
「土井先生?苗字先生?」
山田先生の声に我に返る。
止まったように感じた時間が動き出した。
驚きと喜びと、怒りが一気に押し寄せてきて、顔が真っ赤になっていたんじゃ無いかと思う。
いつの間にか呼吸も止めていたようで、少し苦しい。
慌てて顔の前で手を振って、「何でもありません。」と誤魔化した。山田先生は納得した風ではないが、「そうか?」とだけ返し、再び土井に向き直る。
"土井先生"は、はくはくと口を数度動かして何か言おうとしているが、言葉が出ないようだ。
「なんだ、2人して間抜けな顔して。もしかしてお前さんたち知り合いだったの?」
あっ…いや…そのぉ…と1人しどろもどろになっている"土井先生"を、よくよく観察する。
「…名前?」
やっと出た男の声は自信なさげだった。
自己紹介よりも先に名前の名前を呼んだということは、この男は名前の知っている半助で間違い無いのだろう。
名前の哀れな幻覚でも他人の空似でもないようだ。
5年前、私が血眼になって探した男が、平然と目の前に立っている。
生きていたの?
何故連絡をよこさなかったの?
元気そうだね。
いままでどうやって過ごしてたの?
半助がいなくなってから、ヒトヨタケは無くなってしまったよ。
ねえ、もしかしてアンタ敵城に寝返ったの?
半助が大恩あるヒトヨタケを裏切って敵方に降るはずなどない。そう信じていたけれど、実際はどうなのだ。
連絡もなしで私の前から姿を消すだなんて、と名前に不信感が募る。
行方知れずになってから一年も連絡をしなかったという事はつまり、私の存在はその程度だったという事なのか。
そう思ったらどんな感情よりも怒りが勝ってムカムカとしてきた。
喉まで出かかった言葉はたくさんあるのに、
「はい、苗字名前です。はじめまして。」
私は、とびきりの笑顔を半助に向けていた。
名前の弟、半助は殉職したのだ。
生徒たちもついて来たがったが、結局委員会やら掃除当番やらアルバイトで散り散りになった。
下級生の授業はこの時間には終わり、各々好きな時間を過ごしているらしい。上級生になると実習などで時間が不規則になるようで、これから私もその授業を受け持つ可能性があるということだった。
山田先生は、歩きながら目に見えた建物を次々と案内してくれる。
これだけの広大な敷地であっても、やはり忍術を学ぶ学校とだけあって正確な地図を紙などに残していないらしい。
新入生用の簡単な地図で主要なものの場所は把握したが、学園全体を把握するにはそれなりに時間がかかってしまいそうだ。
「あそこが煙硝蔵です。私と同じ黒い装束の教師がいるでしょ?あの人が、同じ一年は組教科担当の土井半助ですよ。」
「これから関わることかが多くなる。挨拶していきましょ。」という山田先生のにこやかな声を聞きながら、私は口を開けた間抜けな顔でフリーズした。
あの半助にそっくりな男がそこに立っていたのだ。
「土井先生、今ちょっといいかね?」
男に話しかける山田先生の声を聞きながら、必死に感情を押し殺して状況を整理しようとする。
土井半助、名前まで一緒なのか?こんなにも似通った顔で同じ名前で別人な筈はない。きっとこの男は私の知っている土井半助だ。
過去あんなにも探し回った半助だ。
死んだはずの人間だ。
男が山田先生の呼びかけでこちらへ顔を向け、その後ろにいた名前の姿に気づいて目を丸くして固まる。
2人して目を見合わせて黙り込んだ。
時間が止まったようだった。
「土井先生?苗字先生?」
山田先生の声に我に返る。
止まったように感じた時間が動き出した。
驚きと喜びと、怒りが一気に押し寄せてきて、顔が真っ赤になっていたんじゃ無いかと思う。
いつの間にか呼吸も止めていたようで、少し苦しい。
慌てて顔の前で手を振って、「何でもありません。」と誤魔化した。山田先生は納得した風ではないが、「そうか?」とだけ返し、再び土井に向き直る。
"土井先生"は、はくはくと口を数度動かして何か言おうとしているが、言葉が出ないようだ。
「なんだ、2人して間抜けな顔して。もしかしてお前さんたち知り合いだったの?」
あっ…いや…そのぉ…と1人しどろもどろになっている"土井先生"を、よくよく観察する。
「…名前?」
やっと出た男の声は自信なさげだった。
自己紹介よりも先に名前の名前を呼んだということは、この男は名前の知っている半助で間違い無いのだろう。
名前の哀れな幻覚でも他人の空似でもないようだ。
5年前、私が血眼になって探した男が、平然と目の前に立っている。
生きていたの?
何故連絡をよこさなかったの?
元気そうだね。
いままでどうやって過ごしてたの?
半助がいなくなってから、ヒトヨタケは無くなってしまったよ。
ねえ、もしかしてアンタ敵城に寝返ったの?
半助が大恩あるヒトヨタケを裏切って敵方に降るはずなどない。そう信じていたけれど、実際はどうなのだ。
連絡もなしで私の前から姿を消すだなんて、と名前に不信感が募る。
行方知れずになってから一年も連絡をしなかったという事はつまり、私の存在はその程度だったという事なのか。
そう思ったらどんな感情よりも怒りが勝ってムカムカとしてきた。
喉まで出かかった言葉はたくさんあるのに、
「はい、苗字名前です。はじめまして。」
私は、とびきりの笑顔を半助に向けていた。
名前の弟、半助は殉職したのだ。
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