mha短編
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「轟くんって、意外と天然だよね」
カチャカチャと金属の重なり合う音や、様々な機械音が延々と響く室内。調整中の手を止めずにポツリとそう言うと、当人は左右で色の違う目を大きく見開いた。
「天然…?俺が?」
「あ、ごめん、嫌だった?」
「嫌っつーか………俺、マグロじゃないんですけど」
大真面目な顔してそう言う彼に、今度はこちらが目を見開く番だった。
「あっはは!なにそれ!」
「なにかおかしい事言いました?」
「あははははっ!ひーっ!おかしいよ!おかしすぎるってー!」
腹を抱えて笑い転げるさくらを不思議そうな顔で見ている彼の名は轟焦凍くん。有名ヒーローを数多く輩出するここ雄英高校の中でも超有名な彼。
なんとあのエンデヴァーの息子で、実技も座学も成績優秀だし、その上イケメン。ここ重要。
入学当初から私達2年の間でも噂になっていた完璧超人のような彼がこのような天然だと知ったのはつい最近、彼のヒーローコスチュームやサポートアイテムを作るようになってからだ。
最初は噂の1年生どんなもんじゃい、ちょっとスカしてる?とか思ったけど、よくよく話してみたら超純粋で世間知らずの天然ボケボーイだった。確かにイケメンだけど、面白可愛くてマスコットのような飼い犬のような存在だ。
「はー、笑った笑った。んじゃ、ちょっとこれつけてみてくれる?」
「え…あぁはい」
どう言う意味か説明してほしいような視線をまざまざと感じるが教える気はない。この純粋さを失ってほしくはないのよ。
ということで、彼の視線を無視して整備したサポートアイテムを身に付けさせ、そちらに話題を切り替えた。(切り替えたというか、本来こちらが本題なのだけど)
「ん、おっけ、よさそうだね。あとなんか気になるとことか欲しいものとかある?」
「この間の演習で靴がダメになっちまったからまたお願いします。」
「えっ!また!?」
靴はほんの2週間前に改良して渡したばかりだったのに。
「えーショック…両方?片方?!」
「左だけ」
「ってことは熱か!!う〜〜〜ん…何してたの?」
「ずっともってたんだが、焔を長時間使う訓練してた時に」
「ん〜〜〜なんでだろ!くっそ〜イケると思ったのに〜!!」
彼の焔はものすごく高温になるので、それに堪えられる物を作るのは至難の業だ。もちろんそれだけではなく靴としても履き心地が良くなくてはならない。靴は本当に難しいのだ。
「…わかった、ちょっと時間頂戴。来週の金曜日、また工房来てくれる?」
それから毎日毎日、靴の製作をしていた。図書館で本を読み漁り、先生に相談し、クラスメイトに相談し、なんとか改良した。
しかし、これが最善かと言われると、その出来ではない。何かが足りないのだが、その何かがどうしても思いつかない。
今日は水曜日。期日まであと2日あるのでもう少し考えたいが、今からもう一度製作しても間に合わない…。どうするべきかと迷ったが、取り敢えずは一度試着してもらおうと、放課後に轟くんを呼び出した。
「どう?サイズ大丈夫?」
「あぁ、問題ない。さすがさくら先輩。言ってたより2日も早く出来上がってる」
「うーん……そう言われると、ちょっとツライ。正直不本意なのよね。もっと何か出来るはずなの。温度には堪えると思うけど、柔軟性が…。
なんかもっと出来そうな気がするんだけどなぁ…あとちょっとでなんか閃きそうなのに…うーん」
そう一人でブツブツと呟いていると、突然後方からヤバいという声が聞こえてきた。
「さくら先輩っ!逃げてくださいっ!!」
「へ??」
「!」
ドォォォォォォ…ン
逃げろと言う言葉の数秒の後に大きな爆音が室内に木霊する。
間抜けな声をあげることしか出来なかったさくらだったが、音のわりに衝撃は感じなかった。
「びびっ………た?」
大きな音にギュッと閉じていた目をそっと開けると、目の前には白いシャツと赤いネクタイ。そして赤と白の髪がかかる端正な顔立ちが、普段よりもずっとずっと近くにあった。
「怪我は無いか?」
「………あぁ、うん、大丈夫」
どうやら、爆発の直前に危険を察知した彼によって抱えられて避難していたようだ。すごい、私なんてへ?とか言うことしか出来なかったのに。
「さっすがヒーロー科。反射神経ヤバいね」
「先輩はボケっとしすぎです」
「すみません!大丈夫でしたか!」
バタバタと慌ただしい中、この騒動を起こした1年生の女子が近付いてきた。
「ちょっと明ちゃ〜ん!これで何回目!?」
「今日はまだ2回目です!」
「まだの使い方がおかしいな!」
「お元気そうで何よりです!では私はベイビー製作に戻ります!」
そう言って本当に背を向け走り去っていった、はちゃめちゃすぎる彼女は発目明。一年生だが恐ろしいまでの探究心と製作意欲で、すでに数多くの作品を作り上げている。
ヒーロー科1年生のエースが轟くんなら、サポート科1年生のエースは彼女だろう。私も先輩として彼女に負けないように努力しないと。
「明ってあの才能抜きで見たらヤバい奴よね、ホント。
いやそれにしてもビビった。あの子のアレは何回も遭遇してるけどこんなに至近距離は初め、て……………」
「さくら先輩?」
「は………ちょっと待って、ヤバい…」
「どこか打ちました?」
突然言葉を詰まらせたさくらを心配そうに覗き込む轟くん。しかし彼女はどこか遠くを見ているような瞳をしていた。そうかと思えば突然、彼の肩を勢いよく掴んだ。
「ちょっと脱いで!!!」
「は?!」
「靴!!いいから早く!!思いついた!!思いついちゃった!!よっしキタ!!脱いで、今日はもう帰ってまた金曜来て!!よっしゃーーー!!やったるーーー!!」
"ヤバい奴"と評した彼女と同じような表情で工房へと戻るさくらに取り残され、轟焦凍はサポート科はすごい人が多いなと感心しながら家路に着いた。
そして約束の金曜日。
焦凍は放課後すぐに工房に向かおうと思っていた。しかし普通に話していたつもりが何故か爆豪を怒らせてしまい喧嘩をふっかけられ、避けるために個性を使用したところを相澤先生に見つかってしまい職員室でこってりお説教を喰らうハメになってしまった。
ようやく解放された頃には空が赤く染まりだしていた。
先輩は待っているだろうか。普段は朗らかで明るい人だが、アイテムやコスチュームなどの事となると熱くなる人だ。今度は先輩に怒られるかもしれない。流石に説教のハシゴは避けたい焦凍は駆け足で工房に向かった。
そっと工房の扉を開けて中に入ると、さくら先輩は普段からよく座っている席に着いていた。
「先輩」
入り口から声をかけるが、返事がない。というか、ブツブツと独り言を言いながら自分の世界に入り込んでいる。近付いて声をかけても尚気付く様子はない。仕方が無いので向かいの席に腰掛けて課題をしながら待つことにした。
「いよっし!!!できた!!!!!」
さくらは完成した白いブーツを両手に掲げてそう大きな声を出した。
ようやくできた!あの明の起こした爆発の衝撃で何故か急激に閃いた案は実際に作ってもうまくいったように思う。明には今度チョコでも買ってこよう。
さぁ、あとはこれを轟くんに履いてもらうだけよ。あぁ、早く履いてみてほしい!早く金曜になってくれないかしら!!
「お疲れ様です」
「ありがとう!見てよこの美しいフォルムと………んん!?」
唐突に声をかけられてそちらを見れば、なんとなんと依頼主である轟くんが向かいの席に座っているではないか!
「なんでいるの!?」
「なんでって…約束してたじゃ無いですか。」
「え?金曜でしょ?」
「…今日は金曜ですよ」
「えぇっ!?」
やってしまった。集中しすぎて2日も経っていたなんて。
「ヤバ、2日も経ってんの?うわ、ほんと、汗臭いわ」
「いや、先輩ずっと作業してたんですか?そっちの方がヤバいですけど」
「まぁそんなことはいいわ!ちょっと!出来たからコレ履いてみて!!今!!すぐ!!」
ガタンと勢いよく席を立つ。
いやはやなんというか、2日もまともに休憩も飲食もしておらずほとんど同じ体勢で作業していたのに、急に立ち上がったせいだろう。立った瞬間に目の前がぐにゃりと歪み体勢を崩してしまったのだ。
「っ、ぶね」
地面とこんにちわしそうになっていたさくらを、轟くんがまたもや華麗にキャッチした。さすがヒーロー科、反射神経がすごい。(2日ぶり2度目)
「ぁー、ごめーん、目ぇ回ってるわ」
「何してるんですか。無茶苦茶しすぎですよ」
「いやー熱中しちゃって」
そんな雑談をしているうちに、ようやく視界がグルグル回っていたのが正常になった。
「ふぅー、もう大丈夫っぽい!ごめん、受け止めてくれてありがとね」
そう言い体を離れようとしたその時、グッと轟くんの腕に力が込められた。
「?どした?」
「……なんか……」
小さくつぶやくと轟くんは衝撃的な行動に出た。
なんと!さくらの首筋に鼻を押し付けクンクンと嗅いでいるのだ。
「ちょ!!なにしてんの!!」
「すげーいい匂いがする」
「は!?!?そんなわけないじゃん!!汗だよ!!くっさいでしょ!!やめてよ!!」
ギャーと大きな声を出して抵抗したら、轟くんは腕の拘束を緩めてくれた。しかし、もちろん距離はまだ近い。
顔を青くしてそんなわけあるかと言うさくらの顔をじっと見ると更に信じられない言葉をなげかけた。
「全然臭くない、甘い匂いがする。俺、先輩の汗の匂い、好きです」
「〜〜〜っ!?!?!?」
じっとさくらの顔を見つめながらのそんな言葉、しかも、目の保養になるレベルのイケメンから。他意はないのだろうと分かっていてもさくらは顔を赤く染めパクパクと口を開閉することしかできなくなった。
彼の天然はボケじゃなく、タラシの方だったかとさくらは内心確信したのだった。
カチャカチャと金属の重なり合う音や、様々な機械音が延々と響く室内。調整中の手を止めずにポツリとそう言うと、当人は左右で色の違う目を大きく見開いた。
「天然…?俺が?」
「あ、ごめん、嫌だった?」
「嫌っつーか………俺、マグロじゃないんですけど」
大真面目な顔してそう言う彼に、今度はこちらが目を見開く番だった。
「あっはは!なにそれ!」
「なにかおかしい事言いました?」
「あははははっ!ひーっ!おかしいよ!おかしすぎるってー!」
腹を抱えて笑い転げるさくらを不思議そうな顔で見ている彼の名は轟焦凍くん。有名ヒーローを数多く輩出するここ雄英高校の中でも超有名な彼。
なんとあのエンデヴァーの息子で、実技も座学も成績優秀だし、その上イケメン。ここ重要。
入学当初から私達2年の間でも噂になっていた完璧超人のような彼がこのような天然だと知ったのはつい最近、彼のヒーローコスチュームやサポートアイテムを作るようになってからだ。
最初は噂の1年生どんなもんじゃい、ちょっとスカしてる?とか思ったけど、よくよく話してみたら超純粋で世間知らずの天然ボケボーイだった。確かにイケメンだけど、面白可愛くてマスコットのような飼い犬のような存在だ。
「はー、笑った笑った。んじゃ、ちょっとこれつけてみてくれる?」
「え…あぁはい」
どう言う意味か説明してほしいような視線をまざまざと感じるが教える気はない。この純粋さを失ってほしくはないのよ。
ということで、彼の視線を無視して整備したサポートアイテムを身に付けさせ、そちらに話題を切り替えた。(切り替えたというか、本来こちらが本題なのだけど)
「ん、おっけ、よさそうだね。あとなんか気になるとことか欲しいものとかある?」
「この間の演習で靴がダメになっちまったからまたお願いします。」
「えっ!また!?」
靴はほんの2週間前に改良して渡したばかりだったのに。
「えーショック…両方?片方?!」
「左だけ」
「ってことは熱か!!う〜〜〜ん…何してたの?」
「ずっともってたんだが、焔を長時間使う訓練してた時に」
「ん〜〜〜なんでだろ!くっそ〜イケると思ったのに〜!!」
彼の焔はものすごく高温になるので、それに堪えられる物を作るのは至難の業だ。もちろんそれだけではなく靴としても履き心地が良くなくてはならない。靴は本当に難しいのだ。
「…わかった、ちょっと時間頂戴。来週の金曜日、また工房来てくれる?」
それから毎日毎日、靴の製作をしていた。図書館で本を読み漁り、先生に相談し、クラスメイトに相談し、なんとか改良した。
しかし、これが最善かと言われると、その出来ではない。何かが足りないのだが、その何かがどうしても思いつかない。
今日は水曜日。期日まであと2日あるのでもう少し考えたいが、今からもう一度製作しても間に合わない…。どうするべきかと迷ったが、取り敢えずは一度試着してもらおうと、放課後に轟くんを呼び出した。
「どう?サイズ大丈夫?」
「あぁ、問題ない。さすがさくら先輩。言ってたより2日も早く出来上がってる」
「うーん……そう言われると、ちょっとツライ。正直不本意なのよね。もっと何か出来るはずなの。温度には堪えると思うけど、柔軟性が…。
なんかもっと出来そうな気がするんだけどなぁ…あとちょっとでなんか閃きそうなのに…うーん」
そう一人でブツブツと呟いていると、突然後方からヤバいという声が聞こえてきた。
「さくら先輩っ!逃げてくださいっ!!」
「へ??」
「!」
ドォォォォォォ…ン
逃げろと言う言葉の数秒の後に大きな爆音が室内に木霊する。
間抜けな声をあげることしか出来なかったさくらだったが、音のわりに衝撃は感じなかった。
「びびっ………た?」
大きな音にギュッと閉じていた目をそっと開けると、目の前には白いシャツと赤いネクタイ。そして赤と白の髪がかかる端正な顔立ちが、普段よりもずっとずっと近くにあった。
「怪我は無いか?」
「………あぁ、うん、大丈夫」
どうやら、爆発の直前に危険を察知した彼によって抱えられて避難していたようだ。すごい、私なんてへ?とか言うことしか出来なかったのに。
「さっすがヒーロー科。反射神経ヤバいね」
「先輩はボケっとしすぎです」
「すみません!大丈夫でしたか!」
バタバタと慌ただしい中、この騒動を起こした1年生の女子が近付いてきた。
「ちょっと明ちゃ〜ん!これで何回目!?」
「今日はまだ2回目です!」
「まだの使い方がおかしいな!」
「お元気そうで何よりです!では私はベイビー製作に戻ります!」
そう言って本当に背を向け走り去っていった、はちゃめちゃすぎる彼女は発目明。一年生だが恐ろしいまでの探究心と製作意欲で、すでに数多くの作品を作り上げている。
ヒーロー科1年生のエースが轟くんなら、サポート科1年生のエースは彼女だろう。私も先輩として彼女に負けないように努力しないと。
「明ってあの才能抜きで見たらヤバい奴よね、ホント。
いやそれにしてもビビった。あの子のアレは何回も遭遇してるけどこんなに至近距離は初め、て……………」
「さくら先輩?」
「は………ちょっと待って、ヤバい…」
「どこか打ちました?」
突然言葉を詰まらせたさくらを心配そうに覗き込む轟くん。しかし彼女はどこか遠くを見ているような瞳をしていた。そうかと思えば突然、彼の肩を勢いよく掴んだ。
「ちょっと脱いで!!!」
「は?!」
「靴!!いいから早く!!思いついた!!思いついちゃった!!よっしキタ!!脱いで、今日はもう帰ってまた金曜来て!!よっしゃーーー!!やったるーーー!!」
"ヤバい奴"と評した彼女と同じような表情で工房へと戻るさくらに取り残され、轟焦凍はサポート科はすごい人が多いなと感心しながら家路に着いた。
そして約束の金曜日。
焦凍は放課後すぐに工房に向かおうと思っていた。しかし普通に話していたつもりが何故か爆豪を怒らせてしまい喧嘩をふっかけられ、避けるために個性を使用したところを相澤先生に見つかってしまい職員室でこってりお説教を喰らうハメになってしまった。
ようやく解放された頃には空が赤く染まりだしていた。
先輩は待っているだろうか。普段は朗らかで明るい人だが、アイテムやコスチュームなどの事となると熱くなる人だ。今度は先輩に怒られるかもしれない。流石に説教のハシゴは避けたい焦凍は駆け足で工房に向かった。
そっと工房の扉を開けて中に入ると、さくら先輩は普段からよく座っている席に着いていた。
「先輩」
入り口から声をかけるが、返事がない。というか、ブツブツと独り言を言いながら自分の世界に入り込んでいる。近付いて声をかけても尚気付く様子はない。仕方が無いので向かいの席に腰掛けて課題をしながら待つことにした。
「いよっし!!!できた!!!!!」
さくらは完成した白いブーツを両手に掲げてそう大きな声を出した。
ようやくできた!あの明の起こした爆発の衝撃で何故か急激に閃いた案は実際に作ってもうまくいったように思う。明には今度チョコでも買ってこよう。
さぁ、あとはこれを轟くんに履いてもらうだけよ。あぁ、早く履いてみてほしい!早く金曜になってくれないかしら!!
「お疲れ様です」
「ありがとう!見てよこの美しいフォルムと………んん!?」
唐突に声をかけられてそちらを見れば、なんとなんと依頼主である轟くんが向かいの席に座っているではないか!
「なんでいるの!?」
「なんでって…約束してたじゃ無いですか。」
「え?金曜でしょ?」
「…今日は金曜ですよ」
「えぇっ!?」
やってしまった。集中しすぎて2日も経っていたなんて。
「ヤバ、2日も経ってんの?うわ、ほんと、汗臭いわ」
「いや、先輩ずっと作業してたんですか?そっちの方がヤバいですけど」
「まぁそんなことはいいわ!ちょっと!出来たからコレ履いてみて!!今!!すぐ!!」
ガタンと勢いよく席を立つ。
いやはやなんというか、2日もまともに休憩も飲食もしておらずほとんど同じ体勢で作業していたのに、急に立ち上がったせいだろう。立った瞬間に目の前がぐにゃりと歪み体勢を崩してしまったのだ。
「っ、ぶね」
地面とこんにちわしそうになっていたさくらを、轟くんがまたもや華麗にキャッチした。さすがヒーロー科、反射神経がすごい。(2日ぶり2度目)
「ぁー、ごめーん、目ぇ回ってるわ」
「何してるんですか。無茶苦茶しすぎですよ」
「いやー熱中しちゃって」
そんな雑談をしているうちに、ようやく視界がグルグル回っていたのが正常になった。
「ふぅー、もう大丈夫っぽい!ごめん、受け止めてくれてありがとね」
そう言い体を離れようとしたその時、グッと轟くんの腕に力が込められた。
「?どした?」
「……なんか……」
小さくつぶやくと轟くんは衝撃的な行動に出た。
なんと!さくらの首筋に鼻を押し付けクンクンと嗅いでいるのだ。
「ちょ!!なにしてんの!!」
「すげーいい匂いがする」
「は!?!?そんなわけないじゃん!!汗だよ!!くっさいでしょ!!やめてよ!!」
ギャーと大きな声を出して抵抗したら、轟くんは腕の拘束を緩めてくれた。しかし、もちろん距離はまだ近い。
顔を青くしてそんなわけあるかと言うさくらの顔をじっと見ると更に信じられない言葉をなげかけた。
「全然臭くない、甘い匂いがする。俺、先輩の汗の匂い、好きです」
「〜〜〜っ!?!?!?」
じっとさくらの顔を見つめながらのそんな言葉、しかも、目の保養になるレベルのイケメンから。他意はないのだろうと分かっていてもさくらは顔を赤く染めパクパクと口を開閉することしかできなくなった。
彼の天然はボケじゃなく、タラシの方だったかとさくらは内心確信したのだった。