幾度となく空を仰ぐ
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昔から時々、ある夢を見る。
視界に広がる空と大地、間を隔てる地平線。
自分の体が宙に浮いていることを理解する。
意思とは関係なく風に乗り、城や町、平原の上空を疾風の如く翔ける。
空を翔ける夢。
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気づくと見慣れた天井が広がっており、首元の石が窓から射す光に反射して自分の顔を照らしていた。
夢にしては鮮明な宙に浮く感覚や風を切る感覚。
少しの間余韻に浸ると、目覚めたばかりで重い体をなんとか起こし、部屋を後にする。
焼きたてのパンや、ベーコンの香ばしい匂いに包まれながら階段を降りると、調理場でいつものように朝食の用意をする父の姿があった。
「おはよう。」
そう言って椅子に座り、テーブルに置いてあるミルクをコップに注いでいると、父がこちらに顔を向けた。
「おはよう、やっと起きたか。いくら休みだからといっても、日頃の自己管理は大事だぞ。剣士たるもの常に己に打ち克たなければ…、そういえば、今日はリンクが来る日ではなかったか?」
「そうだった!!」
私はすっかりそのことを忘れていた。
呆れた様子の父を横目に、急いで朝食を済ませ身なりを整えると、道場へ向かった。
すでに道場では金髪碧眼の青年が、剣を振るっていた。
「待たせてごめん!リンク」
「俺も今着いたところだから。」
彼はこちらに気づくと、剣を鞘に納め微かに笑みを見せる。
私と彼は親同士が古くからの友人であり、彼は幼いころから父が開いたこの剣術教室によく顔を出していた。
物心ついた時には既に剣を握り、父から剣術を教わっていた私は、彼とよく手合わせをしたが、一度も勝ったことがない。
並外れた身体能力と剣の才能を持つ彼が、子供ながらに何人もの大人を負かしていたことをはっきりと覚えている。
その剣捌きはとても見事で、周りに居合わせた全員が一瞬にして魅了されてしまう程だった。
彼がハイラル城に仕えるようになってから、顔を出す頻度はかなり減ってしまったが、時々こうして近況話や鍛練をしに来てくれる。
並外れた才能を持ちながら、決して驕ることなく日々の努力を怠らない。
表情が乏しいため感情を読み取りずらい所はあるが、実直で心優しい彼は私の自慢の幼馴染だ。
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彼に鍛練を付き合ってもらった後、それぞれの近況話を含め他愛もない話で盛り上がった。
ハイラル平原の戦いで突如現れた謎の塔の話、正体不明の時を渡るガーディアンやシーカーストーンと呼ばれる不思議な力を秘めた石のこと、どの話も興味深いものばかりだった。
「実は明日、そのガーディアンに興味を持った姫様が研究所へ行くのを護衛することになったんだ。」
「え!?本当に!?」
彼は無言で頷いた。
「すごい、リンク!!…でもこれから忙しくなりそうだね。なかなか会えなくなるかも。」
「今まで通りとはいかないけど、必ずまた会いに行くよ。」
「お父さんもリンクが来てくれると色々助かるって言ってたし、絶対だよ?」
太陽がすっかり西に傾いた空の下、明日に備えるため城へと帰っていく彼の背中に「待ってるからね!」と声をかけると、彼は振り向き手を振った。