やるべき事
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?side
その子は何だか不思議な感じの子だった。
だって、初めての私に対して、お金を使ってくださいっていってお金を渡してくれたから。
普通は見ず知らずの人にお金を貸したりしない。
でも、その子は善意で貸してくれた。使ってって。
もしかしたら。お金を使ったことが無いのかなって…。
差し出されたお金は結構な額があったから…。
この子…大丈夫なのかなって…心配になってしまった。
「お金貸してくれてありがとう、凄く助かったわ」
「ううん。役に立てて…良かった」
*はぺこりと頭を下げてその少女の前から移動しようとしたが、
「待って!」
手を掴まれてしまった。
「え…あの…」
「お金を貸してくれたお礼がしたいの。私と一緒に来てくれない?」
「でも…」
「あっ、名前を言ってなかったね。私は真菰。貴女は?」
「……えっと…」
*回想…。
《*、君の名前は人には言ってはいけないよ?》
「どうして?」
《君はいずれ、この世界では知らない人物になるだろうから…。そうなるとあらぬ誤解や噂が立つと、これからやる事に支障が出てしまう。だから…外では違う名前を名乗るんだよ。いいね》
「分かった…」
「珀(はく)」
「珀ね。よろしくね」
「うん、よろしく真菰さん」
「真菰でいいよ。同じ年くらいだし、気楽に話してくれた方が嬉しいもん」
「分かった…真菰…」
「うん!」
真菰と一緒に町中を歩く。色んな人が行き交う。気配も交じり合って…。少し居心地が悪い…。
ああ、私、こうして人と関わるのが初めてだからかな…。
話をするのもそうだ…。こんな風に清以外と話したことなんて無い。まるで…前の私に戻ったみたい…。
手を繋いでもらっているのに、*の手は温かくならない。
「珀の手はいつも冷たいの?」
「そんな事はないと…思うんだけど…」
「今日はそんなに寒くはないと思うんだけど、なんでだろうね」
「分からな……」
最後の言葉が言えなかった。
足元から氷のような冷たさが感じられた。
ドクドクと心臓が早鐘を打つ。
何…なんだろう…。凄く、凄く嫌な感じがする。
キョロキョロと辺りを見る。幼い*にとってそれがどこからきているのかが分からなかったが嫌な予感は止まない。
「姉さん、今日は何を作ってくれるの?」
「今日は何にしましょうか…義勇は何が食べたい?」
ドクン‼‼
大きく心臓が音を立てた。
*は心臓の音が外に漏れるんじゃないかと……錯覚した。
それくらいに、音がやけに煩かった。
この人……この人達………危ない。
ふと、視線をあげれば、女性の頭の所に真っ白な花があった。汚れの無い純白の花。
その花がチラチラと見える度に、息が苦しくなる。
苦しさに胸をおさえ、その場にうずくまった。
「珀、どうしたの!?」
はっはっはっ。
珀からは短い呼吸が繰り返されている。何が……。
?side
後ろの方で何か騒がしくなって振り向くと、人だかりができていた。
「どうしたのかしら」
「何かあったのかな?」
「義勇、ちょっといってみましょう」
「えっ、でも…」
「野次馬かもしれないけど、困っている人だったら、助けてあげたいの。ダメかな」
「いいよ。姉さんは…決めたら譲らないんでしょ?」
「ごめんね、義勇」
「ううん。そこが、姉さんの良い所だから」
「ありがとう。逞しくなったわね。義勇」
姉さんは僕の頭を撫で、人混みへと足を進めた。
人だかりの中心は小さな女の子が二人。一人は布らしきものを目深く被っていて、顔が見えなかった。
「大丈夫?」
「なんか、急に苦しくなったみたいで」
「大丈夫よ。大丈夫。何も怖くないわよ」
優しく声が聞え、優し背中を叩いて*の背中をさする。
ああ、何て、優しい人なんだろう…。この人を……死なせなくない………。
でも、私にはそれを救う術が無い…。
温かい気持ちになるが、それと同時に
冷たいものが心臓を鷲掴みにされる感覚が拭えない。
【術ならある…】
キンッと耳に響いたのはどこか懐かしい声。
誰…
【主が手にしているモノに想いを込めればいい。一度だけ力を貸してやろう】
良いの?
【俺の気が変わらぬ内に早くしろ…】
先程落とした小銭がいくつかあった。ぎゅっと握ると、次第に手の中が熱くなる。
そっと手のひらを開けると、深紅の勾玉があった。
【それを目の前にいる娘に渡せ…。お前の想いを俺が代行して、守ってやる】
お願い…してもいいの……?
【仕方がないがな………。任せろ………】
「ありがとう…もう、大丈夫…です」
「本当に?無理しちゃだめよ?」
「大丈夫なの珀?」
「うん、大分…落ち着いたから…」
ゆっくり立ち上がり、女の人に頭を下げた。
「ありがとう御座います…。あの、これ…」
先程の深紅の勾玉を差し出した。
「これは?」
「お礼です…。あの…受け取ってください…。お守りなんです」
「良いの?私がもらっても…」
「うん、あなたに持っていて欲しいから…」
娘side
その子から差し出された勾玉は曇りのない、とても澄んだ深紅の色。
凄く高価なものだとすぐに分かった。その子に返そうとすると
その子は首を横に振り、持っていて…の一点張りだった。
お守りと言っていた。
強い気持ちを感じ、私はその勾玉を大事に胸にしまうと
その子は笑った。
その顔は凄く…綺麗だった。
「気を付けてね、無理は本当にダメよ」
「うん、分かりました」
「私もいるから、大丈夫よ」
「そうね、お願いしてもいいかしら」
「うん」
「姉さん…」
「ああ、ごめんなさいね義勇。今行くわ」
娘は*をそっと抱きしめた。
「あなたは一人ではないわ。大丈夫よ」
目線を合わせると娘が笑う。つられて、*も笑った。
義勇side
姉さんはお人良しだ。だから、どんな人も姉さんに好意を抱く。男なら特に。
でも、姉さんには許嫁がいる。その人とも、近く祝言を上げる予定だ。
姉さんには幸せにになって欲しい。
俺がもう少し大きければ…っと何度も思うことがあった。
幼い俺では姉さんを支える事が出来ない。
そういえば、姉さんはあの子から何かもらったようだった。
義「姉さん、何をもらったんだ?」
「ん?ああ、これよ」
懐から大事そうに出してきたのは深紅の勾玉だった。
義「綺麗だね」
「ええ、とても高価に見えたんだけど、御礼だって。お守りだって言っていたから」
義「なら、大事にしないとだね」
「ええ、大事にしないと、あの子に悪いものね」
狭霧山
あれから、真菰に手を引かれてやって来たのは、狭霧山と言われる山の麓にある小屋だった。
「ちょっと待っててね」
そういって真菰は小屋の中に入っていった。
中から少し楽し気な会話が聞こえる。
ぼんやりとしていると、くんっと手を引かれ、誘われるまま小屋の中に入っていた。
「この子が珀だよ。御礼がしたくて、今日泊まってもらおうかなって思うんだけど、ダメかな…」
「俺に聞くな。鱗滝さんに聞いてみたらどうだ」
「うん。錆兎は反対しないんだね」
「反対も何も、こんな時間に追い返すことも出来んからな」
「どうかしたのか?」
「鱗滝さん、あのね…」
真菰が鱗滝という人に話しかけているが、錆兎だったかな?綺麗なオレンジ色の髪を持った少年は私の事を疑いの目で見ている。
それも、仕方が無い事だって分かっているけど…あの目は…ちょっと…何かすれば、すぐに切りかかる…そんな意志の強い目だった。
少し、すごんでしまった私を、真菰がやんわりと話しかけてきてくれた。
「珀、家の中じゃ羽織はいらないからとるよ?」
「っ!」
びくりと身体を震わせた。
「取るの…嫌なの?」
「嫌じゃないけど…気持ち悪がられる…から…」
「珀が?私達と何が違うの?」
「色…髪の色とか…」
「私は気にしないよ?だって、錆兎の髪の色は獅子色だし、鱗滝さんは灰色っぽいでしょう?私は黒で、皆それぞれ色は持っているから、気にしなくて大丈夫よ」
「家の中で羽織は邪魔になる。誰もお主を咎めたりしない…」
ぽんぽんと少しごつごつとした手が*の頭を撫でる。と同時にするりと羽織が取り払われた。
「わぁ~」
「っ!」
「白銀とは珍しい。それに左右瞳の色が違うが、それも異端ではない。青空のように、新緑の森の様で美しいではないか」
「気持ち悪くないの…?」
「ああ、儂は美しいと思うぞ」
「珀、とっても綺麗ね。隠すなんて勿体ないよ。錆兎もそう思うでしょう?」
「…別に」
「照れなくてもいいのに。素直じゃないんだから」
「羽織はここに畳んでおくぞ」
「あっ、すみません…」
「今日は泊っていきなさい。日が落ちてから外に出るのは危険だ」
「やった!ありがとう鱗滝さん。私、ご飯の手伝いをするね」
「川魚が沢山獲れたから、串に刺してもらってもいいか?」
「うん」
「私も何か…手伝い…ますか…」
「あんたは客人だ。座ってろ」
くんっと着物の裾を引っ張られ、再び床に座り込む。
「でも、悪い…です…し」
「ここにいろ…。俺は布団を敷きに行ってくる」
そのまま錆兎は後ろの戸を開けて中に入ってしまった。
何もする事が無くなった(人1)はぼんやりと真菰と鱗滝のやり取りを見ていた。
二人はきっと親しい関係なんだと思う。錆兎も鱗滝さんには信頼を置いているのが分かった。でも、三人は親子でないのだとも…。親の事を”さん”づけにはしない。でも、とても温かい。
エアリスも、疲れて帰ってきた時は笑って出迎えてくれた。お疲れ様って言ってくれたっけ。クラウドは錆兎みたいにぶっきらぼうに言っていたけど、嫌な感じじゃないのは分かった。
クラウドと錆兎はよく似ている。幼い頃の彼はきっとこんな感じだったんだろうか…。
ふわふわする…これが【家族】のぬくもりなんでしょうか…。…フーゲン様。
その子は何だか不思議な感じの子だった。
だって、初めての私に対して、お金を使ってくださいっていってお金を渡してくれたから。
普通は見ず知らずの人にお金を貸したりしない。
でも、その子は善意で貸してくれた。使ってって。
もしかしたら。お金を使ったことが無いのかなって…。
差し出されたお金は結構な額があったから…。
この子…大丈夫なのかなって…心配になってしまった。
「お金貸してくれてありがとう、凄く助かったわ」
「ううん。役に立てて…良かった」
*はぺこりと頭を下げてその少女の前から移動しようとしたが、
「待って!」
手を掴まれてしまった。
「え…あの…」
「お金を貸してくれたお礼がしたいの。私と一緒に来てくれない?」
「でも…」
「あっ、名前を言ってなかったね。私は真菰。貴女は?」
「……えっと…」
*回想…。
《*、君の名前は人には言ってはいけないよ?》
「どうして?」
《君はいずれ、この世界では知らない人物になるだろうから…。そうなるとあらぬ誤解や噂が立つと、これからやる事に支障が出てしまう。だから…外では違う名前を名乗るんだよ。いいね》
「分かった…」
「珀(はく)」
「珀ね。よろしくね」
「うん、よろしく真菰さん」
「真菰でいいよ。同じ年くらいだし、気楽に話してくれた方が嬉しいもん」
「分かった…真菰…」
「うん!」
真菰と一緒に町中を歩く。色んな人が行き交う。気配も交じり合って…。少し居心地が悪い…。
ああ、私、こうして人と関わるのが初めてだからかな…。
話をするのもそうだ…。こんな風に清以外と話したことなんて無い。まるで…前の私に戻ったみたい…。
手を繋いでもらっているのに、*の手は温かくならない。
「珀の手はいつも冷たいの?」
「そんな事はないと…思うんだけど…」
「今日はそんなに寒くはないと思うんだけど、なんでだろうね」
「分からな……」
最後の言葉が言えなかった。
足元から氷のような冷たさが感じられた。
ドクドクと心臓が早鐘を打つ。
何…なんだろう…。凄く、凄く嫌な感じがする。
キョロキョロと辺りを見る。幼い*にとってそれがどこからきているのかが分からなかったが嫌な予感は止まない。
「姉さん、今日は何を作ってくれるの?」
「今日は何にしましょうか…義勇は何が食べたい?」
ドクン‼‼
大きく心臓が音を立てた。
*は心臓の音が外に漏れるんじゃないかと……錯覚した。
それくらいに、音がやけに煩かった。
この人……この人達………危ない。
ふと、視線をあげれば、女性の頭の所に真っ白な花があった。汚れの無い純白の花。
その花がチラチラと見える度に、息が苦しくなる。
苦しさに胸をおさえ、その場にうずくまった。
「珀、どうしたの!?」
はっはっはっ。
珀からは短い呼吸が繰り返されている。何が……。
?side
後ろの方で何か騒がしくなって振り向くと、人だかりができていた。
「どうしたのかしら」
「何かあったのかな?」
「義勇、ちょっといってみましょう」
「えっ、でも…」
「野次馬かもしれないけど、困っている人だったら、助けてあげたいの。ダメかな」
「いいよ。姉さんは…決めたら譲らないんでしょ?」
「ごめんね、義勇」
「ううん。そこが、姉さんの良い所だから」
「ありがとう。逞しくなったわね。義勇」
姉さんは僕の頭を撫で、人混みへと足を進めた。
人だかりの中心は小さな女の子が二人。一人は布らしきものを目深く被っていて、顔が見えなかった。
「大丈夫?」
「なんか、急に苦しくなったみたいで」
「大丈夫よ。大丈夫。何も怖くないわよ」
優しく声が聞え、優し背中を叩いて*の背中をさする。
ああ、何て、優しい人なんだろう…。この人を……死なせなくない………。
でも、私にはそれを救う術が無い…。
温かい気持ちになるが、それと同時に
冷たいものが心臓を鷲掴みにされる感覚が拭えない。
【術ならある…】
キンッと耳に響いたのはどこか懐かしい声。
誰…
【主が手にしているモノに想いを込めればいい。一度だけ力を貸してやろう】
良いの?
【俺の気が変わらぬ内に早くしろ…】
先程落とした小銭がいくつかあった。ぎゅっと握ると、次第に手の中が熱くなる。
そっと手のひらを開けると、深紅の勾玉があった。
【それを目の前にいる娘に渡せ…。お前の想いを俺が代行して、守ってやる】
お願い…してもいいの……?
【仕方がないがな………。任せろ………】
「ありがとう…もう、大丈夫…です」
「本当に?無理しちゃだめよ?」
「大丈夫なの珀?」
「うん、大分…落ち着いたから…」
ゆっくり立ち上がり、女の人に頭を下げた。
「ありがとう御座います…。あの、これ…」
先程の深紅の勾玉を差し出した。
「これは?」
「お礼です…。あの…受け取ってください…。お守りなんです」
「良いの?私がもらっても…」
「うん、あなたに持っていて欲しいから…」
娘side
その子から差し出された勾玉は曇りのない、とても澄んだ深紅の色。
凄く高価なものだとすぐに分かった。その子に返そうとすると
その子は首を横に振り、持っていて…の一点張りだった。
お守りと言っていた。
強い気持ちを感じ、私はその勾玉を大事に胸にしまうと
その子は笑った。
その顔は凄く…綺麗だった。
「気を付けてね、無理は本当にダメよ」
「うん、分かりました」
「私もいるから、大丈夫よ」
「そうね、お願いしてもいいかしら」
「うん」
「姉さん…」
「ああ、ごめんなさいね義勇。今行くわ」
娘は*をそっと抱きしめた。
「あなたは一人ではないわ。大丈夫よ」
目線を合わせると娘が笑う。つられて、*も笑った。
義勇side
姉さんはお人良しだ。だから、どんな人も姉さんに好意を抱く。男なら特に。
でも、姉さんには許嫁がいる。その人とも、近く祝言を上げる予定だ。
姉さんには幸せにになって欲しい。
俺がもう少し大きければ…っと何度も思うことがあった。
幼い俺では姉さんを支える事が出来ない。
そういえば、姉さんはあの子から何かもらったようだった。
義「姉さん、何をもらったんだ?」
「ん?ああ、これよ」
懐から大事そうに出してきたのは深紅の勾玉だった。
義「綺麗だね」
「ええ、とても高価に見えたんだけど、御礼だって。お守りだって言っていたから」
義「なら、大事にしないとだね」
「ええ、大事にしないと、あの子に悪いものね」
狭霧山
あれから、真菰に手を引かれてやって来たのは、狭霧山と言われる山の麓にある小屋だった。
「ちょっと待っててね」
そういって真菰は小屋の中に入っていった。
中から少し楽し気な会話が聞こえる。
ぼんやりとしていると、くんっと手を引かれ、誘われるまま小屋の中に入っていた。
「この子が珀だよ。御礼がしたくて、今日泊まってもらおうかなって思うんだけど、ダメかな…」
「俺に聞くな。鱗滝さんに聞いてみたらどうだ」
「うん。錆兎は反対しないんだね」
「反対も何も、こんな時間に追い返すことも出来んからな」
「どうかしたのか?」
「鱗滝さん、あのね…」
真菰が鱗滝という人に話しかけているが、錆兎だったかな?綺麗なオレンジ色の髪を持った少年は私の事を疑いの目で見ている。
それも、仕方が無い事だって分かっているけど…あの目は…ちょっと…何かすれば、すぐに切りかかる…そんな意志の強い目だった。
少し、すごんでしまった私を、真菰がやんわりと話しかけてきてくれた。
「珀、家の中じゃ羽織はいらないからとるよ?」
「っ!」
びくりと身体を震わせた。
「取るの…嫌なの?」
「嫌じゃないけど…気持ち悪がられる…から…」
「珀が?私達と何が違うの?」
「色…髪の色とか…」
「私は気にしないよ?だって、錆兎の髪の色は獅子色だし、鱗滝さんは灰色っぽいでしょう?私は黒で、皆それぞれ色は持っているから、気にしなくて大丈夫よ」
「家の中で羽織は邪魔になる。誰もお主を咎めたりしない…」
ぽんぽんと少しごつごつとした手が*の頭を撫でる。と同時にするりと羽織が取り払われた。
「わぁ~」
「っ!」
「白銀とは珍しい。それに左右瞳の色が違うが、それも異端ではない。青空のように、新緑の森の様で美しいではないか」
「気持ち悪くないの…?」
「ああ、儂は美しいと思うぞ」
「珀、とっても綺麗ね。隠すなんて勿体ないよ。錆兎もそう思うでしょう?」
「…別に」
「照れなくてもいいのに。素直じゃないんだから」
「羽織はここに畳んでおくぞ」
「あっ、すみません…」
「今日は泊っていきなさい。日が落ちてから外に出るのは危険だ」
「やった!ありがとう鱗滝さん。私、ご飯の手伝いをするね」
「川魚が沢山獲れたから、串に刺してもらってもいいか?」
「うん」
「私も何か…手伝い…ますか…」
「あんたは客人だ。座ってろ」
くんっと着物の裾を引っ張られ、再び床に座り込む。
「でも、悪い…です…し」
「ここにいろ…。俺は布団を敷きに行ってくる」
そのまま錆兎は後ろの戸を開けて中に入ってしまった。
何もする事が無くなった(人1)はぼんやりと真菰と鱗滝のやり取りを見ていた。
二人はきっと親しい関係なんだと思う。錆兎も鱗滝さんには信頼を置いているのが分かった。でも、三人は親子でないのだとも…。親の事を”さん”づけにはしない。でも、とても温かい。
エアリスも、疲れて帰ってきた時は笑って出迎えてくれた。お疲れ様って言ってくれたっけ。クラウドは錆兎みたいにぶっきらぼうに言っていたけど、嫌な感じじゃないのは分かった。
クラウドと錆兎はよく似ている。幼い頃の彼はきっとこんな感じだったんだろうか…。
ふわふわする…これが【家族】のぬくもりなんでしょうか…。…フーゲン様。