やるべき事
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シヴァside
マスターを抱えながら、私は山を駆ける。
気を失ってしまったが、ちゃんと呼吸していることに安堵しながらも、足を速めていく。
【マスター、もう暫くの辛抱に御座います】
山を下りると、小さな小屋が目に入った。そこからは微かに懐かしい気配が感じられた。
もしや…
戸を開けると、そこには小さな幼子がこちらを見て笑った。
《やぁ、久しぶりだね…氷の女王・シヴァ》
懐かしい声の響きに、
【お主…ライフストリームか?】
《ああ、この姿で会うのは初めてだね。そうだよ。僕はあのライフストリーム。ここでは清(はる)と呼んでくれないか*が付けてくれた名前なんだ》
【そうか…マスターが付けて下さったのだな…良かったな…】
《うん。こんなにも嬉しい事なんだと感じたよ。》
【お主にも嬉しいと感じられる感情が生まれた事を…祝福しよう。誠、めでたい。…話が長くなってしまったな…マスターを頼めるか?】
《何があったのか、教えてくれるかい?》
【ああ、構わない…】
《そうか…そんな事があったんだね。有難うシヴァ、*を助けてくれて》
【マスターを守るのは当然の事をしたまでよ。我らの主は…マスター唯お一人なのだから。今回、私が呼応し、召喚されたが、他の者もマスターとの謁見を望んでいる。しかし、この魔力量では…皆を呼ぶには難しい…】
《そうなんだよ。それも訓練して、魔力量を上げる必要があるんだ。今はまだそれが足りていないんだ。これからそれも訓練していこうと思っているんだ。他の者には、もう少し待っていてくれと…伝えてくれるかな?後、そちらにも行くことも》
【承知した。では…】
《ああ、もうあちらへ戻るんだね》
【出来たら、マスターが目を覚ますまで居たいのだが…】
《魔力が足りないからね…》
【さよう…マスター。いつまでもお傍におります。勝手に戻る事をどうか…お許し下さい…】
眠る*の額にそっとキスを落とすと、霧の様に姿を消した。
《*、やる事が増えたね…。少し急いだ方が良いのかもしれないね…。》
*を抱え、布団へと運ぶ。
さらりと、頭をなでそっと右手を掴み、手の甲にキスを落とした。
《おやすみ、明日からもう少し難易度を上げていこうか…。*なら、大丈夫だよ。少し時間が無いから…急がないと》
目が覚めると、みなれた天井が目に飛び込んできた。
あれ、私…どうやってここに?
のそりと起き上がり、簡単な身支度をすませ、戸を開けると清がご飯の支度をしていた。
「清…」
《ああ、おはよう*。よく眠れたかい?》
「わたしどうやってここまで?確か…山にいたはずなんだけど…」
《そうだね。まずはそこから説明しないといけないね。座って…》
温かなお茶を差し出すと、*と清は向かい合うようして座った。
《*、きみはどこまで覚えているか教えてくれるかい?》
「えっと…山を登っていたら血の様に赤い色を見つけて、動きが動物と違っていて…ハチマキを切り裂かれたら、そいつは私の事を【稀血の餓鬼】って言ったの。怖くて…動けなかった。あいつに喰われてしまうんだって思ったら、辺りが冷たくなって…そしたら………シヴァが私を抱きしめてくれていたの…。そこからはあまりよく覚えていない…。」
《そっかぁ。まず、鬼が言っていた【稀血】だけどね》
「うん」
《君は転生してこの世界に来たけれど、君は僕の能力を色濃く継承しているんだ。魔法や召喚術が使えるのはそのせいだよ。*の血は人に対しては傷を治す特効薬だが、鬼に対しては劇薬なんだ。耐性がついていない者が君の血を口にしただけで、一瞬にして灰と化してしまう。血の匂いは甘く、誘うものがあるようだけれど…それを【稀血】と勘違いしたようだね》
「私は【稀血】じゃないの?」
《稀血は稀血だけど、この世界の【稀血】はその血肉を食らうだけで、50人、100人喰っただけの力を得る。故にその血だけを好み喰らう鬼もいる》
「私の血は…武器なるの?」
《そうだね。でもそれは、使ってはいけないよ》
「どうして?」
《そんな事をすれば君は…*は己を顧みずに使ってしまう。命が短くなってしまう。僕は嫌だよ……*にはそこまでして自分を傷つけて欲しくない。こんな世界だけど、*には自由でいて欲しいから…お願い…》
清はうなだれ少し肩も震えていた。
ああ、清は本当に私の事を真剣に思ってくれている…。ここまで思ってくれている人を…私は悲しませているんだね…。
「分かった…他の人に見られないようにする。なるべく血を流さないようにする。自分を傷つけたりしない…約束する」
《うん…》
「でも、どうしても助けないといけない時は…その時は血を使うから…そこは許してくれる?」
《人助けのみに使うなら…許すよ…》
「ありがとう…」
《*、魔法は使える?》
「えっ?」
《召喚は君の命の危機だったから、無意識に呼んでしまったけど。魔法はどうかな?》
「分からない…まだ、出してもいないよ」
《今ここで出せるかい?》
「やってみる」
両手を胸の前に。そっと何かを包み込むように。
胸の辺りが薄緑色に煌めく。
[ファイア]
呼応して見せたのが、ろうそくの灯くらいの炎だった。
目を開けると、チロチロともえるその炎を見つめた。
「あっ、できた…」
《やっぱり、その体ではそのくらいが限界かな…。でも、*は人よりも年をとるのが遅いのも関係しているのかな…》
「分からない…念じたら出来たよ」
《*、ちょっとこっちに来てくれるかい?》
「うん」
清の傍へと移動する。すっと清は*の手を取る。
《*、両手を僕に重ねて》
向かい合い、両手を重ねる。
少し、強制的かもしれないけど、魔力をあげるにはこれしか方法が無い。時は無情にも過ぎてしまう。この世界を生き抜くにはある程度の魔力は必要になる。
《*、少し痛むかもしれないけど頑張れるかい?》
「頑張れるよ。大丈夫。だって………私には清がいてくれる。何かあっても、清が………助けてくれるんでしょう?」
にこりと笑うと、清はあっけにとられるも、笑い返した。
《もちろんだよ。君を……*を助けるよ》
すぅっと息を吸い込むと、清の周りに薄緑の光があふれ出す。
光を見つめていると懐かしさを感じ、胸が苦しくなる。
《*、僕の後に詠唱して》
《惑星の巡りを受け継ぐ者…》
惑星の巡りを受け継ぎ、継承する者
《祝福によりかの者に》
福音を汝に響く様に
《「器に我が力を、鎖の如く固き絆を…」》
薄緑の光が*と清を包む。
ドクリ…ドクリと心臓の鼓動全身を駆け巡る。
吐き出す息されも、重圧に押しつぶされそうになる。
うっすらと目を開けると、光は鎖の形に変わり、二人の周りをくるくると動いている。
《惑星の名の元に…結べ》
ガチャン!!
何かが*の中で結ばれた。固く強く。
結ばれた途端、ぐらりと身体が傾き倒れた。
床につく前に清が*を支え、衝突は免れる。
《お疲れ様…*》
ぎゅっと清は*を抱きしめ、そっと己の唇を*の額に口づける。
こんな僕を…どうか…許して…
力によって縛りつけてしまうことを…。
ごめんね……*……。
少し寒さを感じて身をよじると、何かの温もりを感じた。
その温もりが心地よくて、すりりとそれに身を寄せた。
ほのかに花の匂いが花をかすめた。
良い匂い…。どこから…。
うっすらと目を開けると、少し肌けた着物が目に入った。
誰…。
次第に覚醒していくと、誰かに抱きしめられている事に気が付いた。
清…。
よく見ると、清が*を抱きしめていた。
「清…」
《すぅすぅ…》
誰かにこうして抱きしめてもらうのって…フーゲン様に慰めてもらった時くらいかな…。落ち着くなぁ…。
温もりに再び眠りについた。
*が眠った後、清は目を覚ました。
*が起きる前から実は起きていたのだが、*の反応が気になり寝たふりをしていたのだ。
《もう少しお眠り…*》
次に*が目が覚めた時は昼を少し回ったところだった。
《今日は何もしなくていいよ。たまには休まないとね》
《ここから少し下ったところに町があるから見に行っておいで》
「町があるの?」
《うん。賑やかな町みたいだから。この子と一緒に行っといで。これがお金だよ。》
清が一緒にいっておいでと言われた子は白い鳩だった。清から*へ肩に移るとすりりと頬に頭を摺り寄せた。
《あと、はい、これを》
羽織を受け取ると、清はそっと羽織をかけてくれた。
《*の髪は目立つからね。これで隠して。日が暮れるまでには戻っておいで》
「うん…。行ってくるね」
《うん、行ってらっしゃい》
ー町にてー
清が言っていた通り、人で賑わっていた。
行きかう人々には活気があり、笑顔が溢れていた。
「賑やかだね…」
肩に乗っている鳩に話しかけるとクルルと鳴いて返してくれた。
暫く店沿いに歩いていると、
「どうしよう…やっぱり足りない…。でも…」
店の前で紋々と唸っている少女がいた。手元のお金とにらみ合っている。
「足りない…でも、他を抜く事は出来ないし…」
「嬢ちゃん、どうするんだい?」
「えっと…」
「あの…」
「えっ…」
「よかったら、これ、使ってください」
?side
私に話しかけてきたのは、目深く羽織を被った、私よりも少し小さな女の子。
差し出されたのはお金で。
女の子と交互に見るも、その子はお金を差し出したままで。
「良いの。貴女が使って」
ちゃりちゃりと小銭が私の手のひらに乗せられていく。
「ごめんね、ちょぅとだけ貸してね」
私がそう言うと、その子はにこっと笑ったような気がした
マスターを抱えながら、私は山を駆ける。
気を失ってしまったが、ちゃんと呼吸していることに安堵しながらも、足を速めていく。
【マスター、もう暫くの辛抱に御座います】
山を下りると、小さな小屋が目に入った。そこからは微かに懐かしい気配が感じられた。
もしや…
戸を開けると、そこには小さな幼子がこちらを見て笑った。
《やぁ、久しぶりだね…氷の女王・シヴァ》
懐かしい声の響きに、
【お主…ライフストリームか?】
《ああ、この姿で会うのは初めてだね。そうだよ。僕はあのライフストリーム。ここでは清(はる)と呼んでくれないか*が付けてくれた名前なんだ》
【そうか…マスターが付けて下さったのだな…良かったな…】
《うん。こんなにも嬉しい事なんだと感じたよ。》
【お主にも嬉しいと感じられる感情が生まれた事を…祝福しよう。誠、めでたい。…話が長くなってしまったな…マスターを頼めるか?】
《何があったのか、教えてくれるかい?》
【ああ、構わない…】
《そうか…そんな事があったんだね。有難うシヴァ、*を助けてくれて》
【マスターを守るのは当然の事をしたまでよ。我らの主は…マスター唯お一人なのだから。今回、私が呼応し、召喚されたが、他の者もマスターとの謁見を望んでいる。しかし、この魔力量では…皆を呼ぶには難しい…】
《そうなんだよ。それも訓練して、魔力量を上げる必要があるんだ。今はまだそれが足りていないんだ。これからそれも訓練していこうと思っているんだ。他の者には、もう少し待っていてくれと…伝えてくれるかな?後、そちらにも行くことも》
【承知した。では…】
《ああ、もうあちらへ戻るんだね》
【出来たら、マスターが目を覚ますまで居たいのだが…】
《魔力が足りないからね…》
【さよう…マスター。いつまでもお傍におります。勝手に戻る事をどうか…お許し下さい…】
眠る*の額にそっとキスを落とすと、霧の様に姿を消した。
《*、やる事が増えたね…。少し急いだ方が良いのかもしれないね…。》
*を抱え、布団へと運ぶ。
さらりと、頭をなでそっと右手を掴み、手の甲にキスを落とした。
《おやすみ、明日からもう少し難易度を上げていこうか…。*なら、大丈夫だよ。少し時間が無いから…急がないと》
目が覚めると、みなれた天井が目に飛び込んできた。
あれ、私…どうやってここに?
のそりと起き上がり、簡単な身支度をすませ、戸を開けると清がご飯の支度をしていた。
「清…」
《ああ、おはよう*。よく眠れたかい?》
「わたしどうやってここまで?確か…山にいたはずなんだけど…」
《そうだね。まずはそこから説明しないといけないね。座って…》
温かなお茶を差し出すと、*と清は向かい合うようして座った。
《*、きみはどこまで覚えているか教えてくれるかい?》
「えっと…山を登っていたら血の様に赤い色を見つけて、動きが動物と違っていて…ハチマキを切り裂かれたら、そいつは私の事を【稀血の餓鬼】って言ったの。怖くて…動けなかった。あいつに喰われてしまうんだって思ったら、辺りが冷たくなって…そしたら………シヴァが私を抱きしめてくれていたの…。そこからはあまりよく覚えていない…。」
《そっかぁ。まず、鬼が言っていた【稀血】だけどね》
「うん」
《君は転生してこの世界に来たけれど、君は僕の能力を色濃く継承しているんだ。魔法や召喚術が使えるのはそのせいだよ。*の血は人に対しては傷を治す特効薬だが、鬼に対しては劇薬なんだ。耐性がついていない者が君の血を口にしただけで、一瞬にして灰と化してしまう。血の匂いは甘く、誘うものがあるようだけれど…それを【稀血】と勘違いしたようだね》
「私は【稀血】じゃないの?」
《稀血は稀血だけど、この世界の【稀血】はその血肉を食らうだけで、50人、100人喰っただけの力を得る。故にその血だけを好み喰らう鬼もいる》
「私の血は…武器なるの?」
《そうだね。でもそれは、使ってはいけないよ》
「どうして?」
《そんな事をすれば君は…*は己を顧みずに使ってしまう。命が短くなってしまう。僕は嫌だよ……*にはそこまでして自分を傷つけて欲しくない。こんな世界だけど、*には自由でいて欲しいから…お願い…》
清はうなだれ少し肩も震えていた。
ああ、清は本当に私の事を真剣に思ってくれている…。ここまで思ってくれている人を…私は悲しませているんだね…。
「分かった…他の人に見られないようにする。なるべく血を流さないようにする。自分を傷つけたりしない…約束する」
《うん…》
「でも、どうしても助けないといけない時は…その時は血を使うから…そこは許してくれる?」
《人助けのみに使うなら…許すよ…》
「ありがとう…」
《*、魔法は使える?》
「えっ?」
《召喚は君の命の危機だったから、無意識に呼んでしまったけど。魔法はどうかな?》
「分からない…まだ、出してもいないよ」
《今ここで出せるかい?》
「やってみる」
両手を胸の前に。そっと何かを包み込むように。
胸の辺りが薄緑色に煌めく。
[ファイア]
呼応して見せたのが、ろうそくの灯くらいの炎だった。
目を開けると、チロチロともえるその炎を見つめた。
「あっ、できた…」
《やっぱり、その体ではそのくらいが限界かな…。でも、*は人よりも年をとるのが遅いのも関係しているのかな…》
「分からない…念じたら出来たよ」
《*、ちょっとこっちに来てくれるかい?》
「うん」
清の傍へと移動する。すっと清は*の手を取る。
《*、両手を僕に重ねて》
向かい合い、両手を重ねる。
少し、強制的かもしれないけど、魔力をあげるにはこれしか方法が無い。時は無情にも過ぎてしまう。この世界を生き抜くにはある程度の魔力は必要になる。
《*、少し痛むかもしれないけど頑張れるかい?》
「頑張れるよ。大丈夫。だって………私には清がいてくれる。何かあっても、清が………助けてくれるんでしょう?」
にこりと笑うと、清はあっけにとられるも、笑い返した。
《もちろんだよ。君を……*を助けるよ》
すぅっと息を吸い込むと、清の周りに薄緑の光があふれ出す。
光を見つめていると懐かしさを感じ、胸が苦しくなる。
《*、僕の後に詠唱して》
《惑星の巡りを受け継ぐ者…》
惑星の巡りを受け継ぎ、継承する者
《祝福によりかの者に》
福音を汝に響く様に
《「器に我が力を、鎖の如く固き絆を…」》
薄緑の光が*と清を包む。
ドクリ…ドクリと心臓の鼓動全身を駆け巡る。
吐き出す息されも、重圧に押しつぶされそうになる。
うっすらと目を開けると、光は鎖の形に変わり、二人の周りをくるくると動いている。
《惑星の名の元に…結べ》
ガチャン!!
何かが*の中で結ばれた。固く強く。
結ばれた途端、ぐらりと身体が傾き倒れた。
床につく前に清が*を支え、衝突は免れる。
《お疲れ様…*》
ぎゅっと清は*を抱きしめ、そっと己の唇を*の額に口づける。
こんな僕を…どうか…許して…
力によって縛りつけてしまうことを…。
ごめんね……*……。
少し寒さを感じて身をよじると、何かの温もりを感じた。
その温もりが心地よくて、すりりとそれに身を寄せた。
ほのかに花の匂いが花をかすめた。
良い匂い…。どこから…。
うっすらと目を開けると、少し肌けた着物が目に入った。
誰…。
次第に覚醒していくと、誰かに抱きしめられている事に気が付いた。
清…。
よく見ると、清が*を抱きしめていた。
「清…」
《すぅすぅ…》
誰かにこうして抱きしめてもらうのって…フーゲン様に慰めてもらった時くらいかな…。落ち着くなぁ…。
温もりに再び眠りについた。
*が眠った後、清は目を覚ました。
*が起きる前から実は起きていたのだが、*の反応が気になり寝たふりをしていたのだ。
《もう少しお眠り…*》
次に*が目が覚めた時は昼を少し回ったところだった。
《今日は何もしなくていいよ。たまには休まないとね》
《ここから少し下ったところに町があるから見に行っておいで》
「町があるの?」
《うん。賑やかな町みたいだから。この子と一緒に行っといで。これがお金だよ。》
清が一緒にいっておいでと言われた子は白い鳩だった。清から*へ肩に移るとすりりと頬に頭を摺り寄せた。
《あと、はい、これを》
羽織を受け取ると、清はそっと羽織をかけてくれた。
《*の髪は目立つからね。これで隠して。日が暮れるまでには戻っておいで》
「うん…。行ってくるね」
《うん、行ってらっしゃい》
ー町にてー
清が言っていた通り、人で賑わっていた。
行きかう人々には活気があり、笑顔が溢れていた。
「賑やかだね…」
肩に乗っている鳩に話しかけるとクルルと鳴いて返してくれた。
暫く店沿いに歩いていると、
「どうしよう…やっぱり足りない…。でも…」
店の前で紋々と唸っている少女がいた。手元のお金とにらみ合っている。
「足りない…でも、他を抜く事は出来ないし…」
「嬢ちゃん、どうするんだい?」
「えっと…」
「あの…」
「えっ…」
「よかったら、これ、使ってください」
?side
私に話しかけてきたのは、目深く羽織を被った、私よりも少し小さな女の子。
差し出されたのはお金で。
女の子と交互に見るも、その子はお金を差し出したままで。
「良いの。貴女が使って」
ちゃりちゃりと小銭が私の手のひらに乗せられていく。
「ごめんね、ちょぅとだけ貸してね」
私がそう言うと、その子はにこっと笑ったような気がした