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やるべき事

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次の日、私は朝早くから、清に起こされ、今は山を登っている。

朝霧で、視界は悪くそれにやけに寒く感じていた。

、ここから、麓の小山で走って降りてきて》

「歩…いちゃ…ダメ…な…の…?」

《うん。走って。そうでないと夕方になってしまうから。なるべく早く降りてきてね》

清はそう言い残し、すっと姿を消した。

辺りはうっそうと木々が生い茂り、生き物の気配さえも希薄に感じられた。
ここまでただ着いて来ただけと後悔した。もっと周りを見るべきだった…と。

「考えていても始まらない…行動を起こせ、足を動かせ」

今の私にはそれしか出来ないのだから。

ゆっくり歩く速度から少しづつスピードを上げていく。上げていくことで呼吸も苦しくなり、息が上がっていく。
ヒューヒューと乾いた音しか出ないが、大きく息をすればする程さらに苦しくなる。気が遠くなりそうになった。

あの場所と…同じ…かな。でも、あの場所よりもさらに空気が薄い…。そういえば…あの時はどうやってクリアしたんだっけ…。
次第に瞼が落ちていく。膝が付き、はその場に倒れこんだ。
懐かしい風景が蘇っていく……。









【大きく息をするから、余計に苦しくなるんだ。もっと考えろ。お前の頭は飾りか?】

『んな訳ないでしょう!馬鹿にしないでよ』

【でも、実際出来てなし…覚え悪いんじゃないの?】

、考えろ、観察しろ…今、俺達はどんな息の仕方をしてる?】

『えっ…』

【何事にも仕組みはある。それをいち早く観察し自分のものにしろ。そうすれば、お前はもっと強くなれる。誰にも馬鹿にされない力を身に付けられる…頑張れ…】

『皆の息の仕方……』









ビクッと身体が震え、じわじわと力が指先まで伝わる。

懐かしい…あれは…いつだったっけ…。そうあれは、訓練の為にニルブヘルムへ向かって、山を登っていた時だった。私だけ皆よりも歩きが遅くなって、それで言われたんだっけ…。

【俺達はどんな息の仕方をしているのか】って。

確かあの時、皆の息の仕方は…、長く、細く…。深呼吸をしているような感じで…。時に短く吐く。

スゥーーーッ。

前を見据え、足を動かす。勢いをつけて駆け出す。小枝に引っ掛かり、傷を作ろうとも足を止めず前へ前と。









ガラッ……。

「はぁはぁ…っはぁ……た、ただい…ま…清…」

《お帰り、

清の声を聴いた途端、はズルズルと戸にもたれるようにして気を失った。
帰ってきた翌日から、再び山下りが始まった。登りはまだできない。何故か清が登らせてくれないのだ。まずは下りで体力を作る事と言われた。そして何度か山下りをしていると

、これを付けて降りてきて》

渡されたのは目隠し様のハチマキだった。

あっ、ユフィと似たようなやつだなってぼんやりと思ってしまった。

「これをつけて降りるの?」

《そうだよ。だいぶ早く降りれる様になってきたからね。目を隠すのは、もし目を怪我した時、視覚に頼っていては歩く事も出来ないからね。視覚に頼らず、気配だけで降りておいで》

清はそれだけ伝えると、すぐにいなくなってしまう。

キュッとハチマキを付ける。目が見えなくなるけど、逆に音がよく聞こえた。

ああ、目では見えないモノが耳で感じられる。

自分で覚えていた道を進むも、すぐに木にぶつかったり、根に足をとられ派手に転んだり、立ち上がって歩くと、枝に服が絡まりまた転ぶを繰り返す。

いかに目に頼ってきたのかが、嫌でも分かった。視覚に囚われ過ぎたのだと。ヒリヒリと痛む肌に気をとられると、新たな傷が増えていく。

感覚だけで歩こうとするから木にぶつかる。ここは森だから木があって当たり前だ。気配を鋭くしないと…。

「ここも惑星なのだから…。全ての生きとし生けるモノには流れがあると…清が言っていた。なら……」

生きているモノとそうでないモノを感じ分けろ…。集中して。私なら……出来るよ………。

すうっ…。深呼吸し………………】気配を感じ取れ…。

風が頬を撫でる。少し湿った匂いも鼻につく。木々が揺れる音、葉の擦れ……。

暗闇なのに、うっすらと緑の帯が見え始める。それはいくつも連なっていて、どんどん増えていく。そう、木々の形になっていった。

生きている証は薄緑、そうでないモノは墨染めのような漆黒。
そうでないモノは酷くぼやけた感じに感じられた。そのぼやけの中に、やけに赤い…血のような赤色が感じられた。

「あれ…」

『こいつは良い!俺はついてるぜ!久方ぶりの人肉が、稀血の餓鬼とはなぁ!』

赤い奴はそういうと、こちらに向かってきた。それも、人の出す速度では無い速度で。

『おらぁ!!』

ヒュンっと空を切り、ハチマキが切り裂かれる。

パラリと視界が開け、目の前には赤い奴。ギザギザの歯に手は鋭い長い爪があった。

これが…清が言っていた……【鬼】…。

『かっかっか…泣き叫べ…命乞いをしろ…恐怖をみせろぉぉ…ヒャッヒャッヒャァァァ!!!』

足がその場に縫い付けられたように動かない。膝がガクガクする。これが、恐怖なんだ…。動け、動かないと…私!

『ほぉらぁ…どこから喰ってやろうかぁ……』

ジュルリとよだれを流しながら鬼はとの間合いを詰めてくる。

動きたくても、足が動かない…。

殺される…喰われる!

ギュッと目を瞑った…と…

【マスター…】

ひんやりとする何かに包まれる感覚で目を開けると、そこには…

「シヴァ…」

氷の女王・シヴァがを抱きしめていた。

「シヴァなの…?本当…に?」

【ええ、我がマスター。お久しぶりでございます。っと、その前にあの下賤なものを始末致しますので少々お傍を離れます】

ふわりと一歩前に出ると、鬼と対峙する。

『なんだぁてめぇは!』

【死に逝くモノに名乗る名等、ありはしない…。我がマスターを傷つけた事を後悔するがいい…】

周囲の空気が凍り付いていく。吐く息さえも白くなり、肺が凍りそうなくらいになる。

手中に集めた氷の塊を鬼へと…。

【氷漬けになるがいい……】

氷の塊に呼応するように、鬼の周囲の空気が瞬時に凍り付き、鬼を氷漬けにする。そして、横一文字に腕を払うと、鬼の首をはねた。

ブスブスとくすぶる様な音と共に、鬼は消滅した。

これが、鬼の最後…。なんて…虚しい…。

【マスター、大丈夫ですか?どこか痛む所でもありますか?】

「シヴァなんだ…よね…」

【はい、我がマスター。貴女と共に旅をし、共に戦ったシヴァで御座います】

「まだ、実感が…沸かなくて…。夢を見ているんじゃないかって…思って…」

【夢では御座いません。ほら、こうしてお触り出来ますでしょう?】

にこりと笑って、シヴァはの手を取り己の頬に当てた。

ああ、感触がある…微かに冷たいが、温もりも感じられる。

「シヴァ…」

【はい、我がマスター】

「助けてくれて…あり…が…とう……」

あれ、なんか…眠いなぁ…なんで…話したい事がまだ…あるのに…。

【マスター?いかがなさいましたか?!マスター!】

ぐらりと傾くの身体を支える。

「ご…め……」

【マスター!】

眠いなぁ…。どうして………。

の意識はそこでぷつりと途切れた。



















清side




何か変な感じがぞくりと感じた。

ああ、この感じは【鬼】だ。

でも、心配はいらない。だって彼女には彼等がついている。最悪はこの場所までを連れてきてくれるだろう。

彼等にとって彼女はは大切な【マスター】なのだから。ほら、やっぱり来たね…。

《やぁ、久しぶりだね…氷の女王・シヴァ》
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