異なる世界
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ゆっくりとした足取りで珀は清のいる家に向かっていた。
鱗滝の家から町を目指し、そこから思い出しながら足を動かしていた。
肩に止まった白い鳩が道を教えてくれる。
町から大分歩くと、見慣れた風景が目に入ってくる。
あっ、この感じ…。
何かに導かれる様に迷うことなく歩みを進める。
森の中を進んでいると、ホワンと柔らかい何かに包まれるような感覚がした。
あれ?今のって…。
視界が一度ぼやけ、霧が濃くなる。
ざぁっと一陣の風が吹くと、小さな小屋が見えた。
そっと戸に手を掛けて右へ流すと、軽々と動き
《おかえり*》
「ただいま、清」
《中に入りなよ。話を聞かせて欲しいな》
「うん。聞いてくれる?」
《もちろんだよ》
そっと伸ばされた手を*はとり、中へと入った。
鱗滝の所で感じた事や、体験した事を話した。
清は相槌を打ちながら、時には話をはさみながら…。穏やかな時間がゆっくりと流されていった。
《*、眠いの?》
「う…」
《帰ってきて、長い時間話し込んでしまったね。さぁ、休もうか…》
ひょいと*を抱きかかえると、奥の部屋を目指す。
虚ろ、虚ろと瞼が上がったり下がったりを繰り返している。
《*はいつも無理をするからね…。まぁ、それも僕のせいだともいえるけど…》
肩を抱く手に力を少し込める。
《ごめんね…》
ゆらゆらと微かに揺れる清の腕の中は心地よく、*はいつの間にか意識を深淵深くに落としていった。
布団に寝かすも、起きる気配が全く見られなかった。
《よほど、気を張り詰めていたんだね》
気を失ったかのように深く眠りについている*。
《*、少しずつ慣れていけばいいんだよ。人が苦手なのは、前も今も変わらないんだね…。ここには*を知る人は僕しかいないから》
もう少し、気を緩めても誰も怒ったり、
《*……愛している…》
頭を撫で、そっと戸を閉めた。
ゆっくりと瞼が上がり、柔らかな光が辺りを包み込む。
あ、そっか…。私、ここに戻ってきたんだ…。
枕元に畳まれている
囲炉裏の傍でうたたねしている清の姿があった。
「清…」
ゆさゆさと体を揺するも、反応が無い。
「ここで寝ると風邪ひくよ…。休むなら、横になった方が良いよ」
《むっ…》
「ご飯は…なんとかするから…」
《でも…》
「今は休む事。ね?」
《…わかった…》
こしこしと目を擦りながら、ふらつく足取りで床が用意されている部屋へと入っていった。
部屋に入った事を確認すると、*は竈がある所へと足を進めた。傍にあった薪をくべ、小枝を入れる。その上に乾燥したスギやヒノキの葉を乗せる。
「火は…」
真菰がやっていたのは火打ち石と言われるもので、火打ち金をぶつけて火花を起こして火をつける…だったかな…。
試しにカチカチと叩いてみるもうまくいかず、火花は出るも、葉につく事はなく。
しょうがないから…。
右手を竈下にかざし、ファイアと念じるとボッと火が付き、葉や小枝、薪を燃やしていく。
洗い場ですぐに米を研ぎ、水を張る。これも
暫くしたのち、炊けたご飯はやや硬く底の方は焦げていた。
「む…難しい…」
真菰は凄く手際が良かったなぁ…。
《初めてにしては上手くいった方じゃないかな?》
「清…」
《少しずつやって、覚えていこう》
「うん、教えてね」
《ああ、一緒にやっていこう》
くすりと笑い合う二人。
【マスター…】
【また見ているのですか…】
【ミリアか…】
【ここはあちらを映す水鏡だから。最近、庵にいなかったから、モグに聞いたらここだって】
【モグに隠し事は出来んな…】
クスクス…。
【そうね…。彼にかかれば、こちらの世界の事は筒抜けだもの】
【確かに】
【マスターはまだ不安定なの?】
【ああ、魔力もまだ安定したとは言えない…が】
【ん?】
【マスターは何をするにしても、可愛らしいなと思ってな】
【そうね…マスターは一生懸命だから。それにしても、貴女は本当にマスターが大好きなのですね】
【ああ、好ましいな…】
共に戦ってきた。呼ばれる度に体に傷を作っていたマスターが痛々しく、自分は呼ばれるまで何も出来ない無力さを感じたこともあった。しかし
「シヴァにはいつも助けてもらっているから。そんなに自分を責めないでね」
声を、言葉をかけてもらっただけで嬉しかった。その時からだ…この者に…この方に…仕えようと…思い始めたのは…。
【どんな形であれ、マスターを想う気持ちは皆等しく同じですもの】
【ああ、そうだな…】
マスター、貴女がこちらに来られる事を願っています。
もし来られるのでしたら…お早いお越しをお待ちしております。
最愛のマスター…。