涙拭うと、少し身じろぎをする。一瞬ドキリとし、身構えるが、珀はすうすうと寝息を立てて眠っている。

「お前は…何かを抱えているんだな…」

俺もお前も同じなんだな…。

境遇が似ているとは…思わないが皆何かしろ抱えて生きている。
口に出来ない事も…。

「お前も…大変だったんだな…」

さらりと優しく頭を撫でると、すりりと頭を寄せる珀。

人の温もりを俺はここで知った。なら、お前もここで学べば良い。

「先生や真菰はお前を受け入れてくれる」

「錆兎は？」

「……」

「錆兎も珀を受け入れてくれるんでしょう？」

「…ああ」

目を擦りながら真菰は珀の傍へ寄る。

「珀は不思議な感じがするんだね…何か大きなものを隠しているって感じがるけど…」

「人に言えない事は誰もが持つものだからな…」

「話してくれると…いいね」

「話してくれる時を待てばいい」

「錆兎…」

「なんだ…」

「なんかぁ～珀の事そんな風に思っていたの？」

ニマニマと笑いながら真菰は錆兎に話かける。

「！ば、ば…」

「ああ、いいよ。大丈夫。錆兎が珀の事気になっているって事が分かったから。男の子だねぇ～」

「うるさい！」

言葉を荒げながら、部屋にひ入り、布団をボスボスと片付ける錆兎の姿をこっそりみながら笑いをこらえている真菰の姿があった。

「珀…、私待っているからね。話してくれるのを…」

さらりとする髪を撫でた。




















「ただいま」

「おかえりなさい、鱗滝さん。ごはん出来てますよ」

「ああ、有難う」

「おかえりなさい、先生」

「ああ」

「走りこみは終わりした。あと…これを預かっています」

錆兎が差し出したのは一通の手紙だった。

「これは？」

「珀から先生にだそうです」

「鱗滝さんが帰ってくる１時間前まで居たんだけど、長いする訳にはいかないって言って」

「そうか…あの子は行ってしまったか…。錆兎、手紙を」

「はい」

きっちりおられた紙を広げると、たどたどしくもしっかりと書き込まれた文面が並んでいた。










『皆さまへ』

見ず知らぬ私を温かく、受け入れてくれた事を感謝しております

私一人だったら…決して味わうことのできない時間を

共に過ごせてとて…嬉しかったです

本当に有難う…御座いました

袖を濡らしてしまい、すみませんでした

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　珀















「あの子らしい文面だな…」

「そう、ですね」

「私は珀にもっとここにいて欲しかったなぁ」

「また会えるだろう」

「そうだね…」

「儂も、珀と話したい事がある…。縁は繋がれている」

きっとまた会える…。

確証は持てないのが、会える気がしてならなかった。