召喚魔法
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「身を寄せる所はあるのか…?」
「近いうちにある方と祝言を上げる事になっています」
「そうか…」
「大丈夫です。家も無事ですし、義勇と暮らしていくには十分ですから」
「怖い思いをさせたな…」
「いえ、助けて下さり有難う御座います」
【我らはマスターの元に戻る。あとは人同士で話すといい】
「あ、あの…」
蔦子はイフリートに話かける。
【なんだ…】
「本当に有難う御座います。約束は死ぬまで守り通しますので、安心して下さい」
【……】
「?何か…」
【お前は疑いを知らんか…】
「蔦子姉さんはそうだよ」
【人は欲の塊だ。多少は疑うことを覚えた方が良い…。勾玉を出せ】
「は、はい」
赤い勾玉は少し色を失ってはいるが、淡い輝きは健在であった。
俺が出た事で力の効力を失っている…か。しかし、マスターも人が良い。回復魔法・リジェネがかけられているとはな…。俺も、随分と丸くなったものだ…。
【お前は…炎との相性が良いみてぇだな…】
「炎ですか?」
【ああ、この守りは決して手放すな。それはお前の命を守ってくれる。死ぬまでな…。これも俺の気まぐれだが…な…】
赤い勾玉にカツンと爪で軽く叩くと鮮やかな赤い色に輝きだす。
【……人の命は瞬きの様に儚く、短いからな…。ましてやマスターが望んだ命だ…無駄にするな…】
【珍しい事もあるのだな…】
【ただの気まぐれだ…】
【マスターが知ればきっと喜ばれるだろう…】
【ふん】
すうっと姿を消すイフリート。
【あやつも、想う気持ちを持つ様になったか…】
イフリートが気にかけた娘に近づく。
【あやつが言っていた通り、それはそなたを守ってくれるだろう。そなたの血を分けた子にも恩恵を与える。無くさぬように】
「はい」
【さて、我も戻る。ここは主に任せても良いか】
「ああ」
【話す事もあろう、それから決めれば良い。主らの想いや行動は我らの考えに及ばぬ所。それ故に、愛おしくもある…】
さぁっと優しく雨が降り注ぐ。
うっすらと空が白みだし、朝日が雨を照らし空に
「後は大丈夫か?」
「はい。幾分か片付けることも出来ましたし、手伝ってくださり有難う御座います」
「ありがとう…」
「ああ。では…」
「どうすれば…強くなれる…」
「義勇?」
「俺は、何もできなかった。蔦子姉さんに守ってもらってばかりで、何も守れていない…。だから、強くなりたい…」
「お前は強さを求めて何を得る?何故、力を求める?」
「俺は弱い自分を軽蔑した…。何もできず、泣くだけは…もう嫌だ」
「義勇…」
「そうか…・修行は甘いものじゃないぞ。力を得れば、もちろん【死】との距離も近くなる。それでもお前は力を求めるにのか…」
こくりと義勇は頷いて見せた。
「祝言はいつ上げるのだ?」
「3日後です」
「3日後、またここに来る。再度意志の確認を行う。迷いがあった場合は
お前を連れて行く訳にはゆかん。しっかり考えろ」
鱗滝が去った後、義勇は部屋で考えていた。3日の猶予がある。でも、心代わりををすれば、自分が求める【強さ】は手にできない。それでも、何もできず、泣く事しか出来なかった自分を切り捨てるにはそれしかないのだと…。
「強くなりたい…」
大切な今ではたった一人の家族を…。俺は…守りたい…。
朝の冷たい空気が肌にひんやりと感じられ、ゆるゆると覚醒していく。
ぼやける視界が次第にはっきりしていく。
部屋を見渡せば、真菰の姿しかない。
どこに…いった?
布団を触れば、ひんやりと冷たく、長い時間戻っていないことを示していた。
音を立てないようにそっと立ち上がり、戸を開ける。
囲炉裏の傍に寝転がり、寝息をたてている珀がいた。
囲炉裏の火は赤々と燃えているが、薪は無いのにも関わらず、その光は力強い。
顔を見れば、目じりに涙の跡があった。
「あんたは…何も言わないんだな…」
敵意を向けたのに、関わりを持たないようにしたのに、なんで…、
「声を上げて泣く事さえも出来ない所にいたのか…」