カメレオンの記憶 第3部
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「…アサギ……」
懐かしい声がする。
「……アサギ」
「アサギ、大丈夫?」
そっと開いた瞼の向こうには、両親の顔があった。
紛れもない、〝本当の家族〟。
「ママ、パパ。おはよう」
「アサギ、うなされてたみたいだけど……大丈夫かい?」
「大丈夫だよ、パパ。ちょっと……やな夢みた気がするけど」
「かわいそうに……ほら、おいで」
ぎゅっと抱き締めてもらった感覚はとても懐かしいものだった。
忘れたくない。忘れちゃいけない。
でもずっと忘れてた。
大好きな両親の顔がそこにある。
声が聞こえる。体に触れる。
伝えたいことがたくさんあるはずなのに、わたしは思うように体を動かすこともできなければ、声を発することもできず、ただ自分の内側からゆったりと流れゆく光景を傍観することしかできなかった。その中で衝撃を感じながらもああ、そうだった、と懐かしさを含んだ記憶が流れていく。
わたしが本当に生まれ育ったのは
一人娘だったわたしはママやパパにとても愛されていたけれど────。
「よし、行って来る」
「パパ……?」
「アサギ。もし……もし、私達が帰らなくても強く生きるのよ。火の意思を継ぐ者として」
「ママ……?」
ある日、2人は長期任務へ出ることになった。
家に大人がいなくなってしまうから、と一時的に里の孤児院へと預けられたわたしに涙目でそう言った2人の顔が脳裏から離れない。
これが、最後の会話になってしまった。
当時のわたしはまだ幼かったけれど、それでも何かを察したのか、行って欲しくない一心で泣きながら後を追う。それを周りの大人達が必死になって止め、涙で視界がぼやけたのを最後にここまでの記憶はプツン、と途切れてしまった。