カメレオンの記憶 第3部
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だんだんと覚める意識の中、金属を触るような音が不気味に響く。体は完全に脱力して思うように動かず、それでもなんとか首だけを使って辺りを見回した。
温かみのあるランプの色に照らされているのは、見たことのない薬品や、不気味な液体の中に浮く得体のしれないモノ、それに鋭利な手術道具。
その棚のそばで何かの準備をしている人の後ろ姿が視界に入り、突発的に拒否感を覚えた。
────嫌だ。
ぼんやりと霧がかっていた意識が一瞬で晴れたようにそう思い飛び起きようとしたけれど、体は拘束具でしっかりとベッドに縛り付けられていて思うように動くことができない。
「あまり暴れないでくれよ」
どうにか抜け出そうともがいていると背を向けていた人物が振り返り、宥めるようにそう言った。
「カブト……!」
「まさか、またこうやって戻って来てくれるなんてね」
眼鏡を押し上げながらそう言い放つカブトに既視感を覚える。
────さっきから……なんなの!?
大蛇丸も同じようなことを言っていた。
帰って来ただの、戻って来ただの、意味がわからない。
どちらかと言えばわたしはこの世界にも、暁にも、今ここにも、引きずり込まれた側だ。それを当たり前のように帰って来たと言い出すこいつらにだんだんと怒りを覚え、吠えるように言葉を投げつけた。
「わたしはあんたらのモノじゃない!!」
するとカブトはこんなわたしを前にしてもなお、落ち着いた素振りで鮮やかな赤色の液体が入った注射器を手に歩み寄る。
「これから全部思い出すよ」
「なにそれ……! やめて! やめろ来るな!!」
とても普通とは思えない言動に恐怖が全身を駆け巡る。
この世界のためを思えばこいつらに捕まった方がマシかもしれない。でも過ごすとなれば暁にいた頃の方が断然マシだ。あの頃の方が人として扱ってもらえた。
でもこいつらときたらどうだ。まるで人のことを実験用の小動物としてしか見ていないみたいじゃないか。
それになぜかこの状況は初めてではないと強く思った。
〝また〟同じ目に遭うと。
けれど過去にこいつらと何かあったとは思えないし、あったところで思い出せない。変な感覚に陥りながらも今この瞬間、絶対に逃げなければならないことだけは確かだった。
「安心していい。これは君のものだ。血はその者の記憶を司る」
────いったい、どういうこと……? それはわたしの血だとでも言うの? いや、仮にそうだったとして、なんでカブトがそれを持ってるの? 血が記憶を司るって────。
嫌な予感が押し寄せ、わたしは暴れるのをやめた。
大蛇丸の言葉とカブトの言葉。そして自分の血を持っているカブト。
サスケから聞いた話がふと脳裏に浮かぶ。
わたしが幼い頃、一緒に過ごしたということ。それなのに急にわたしが消えてしまったこと。
あの話を聞いた時はわたしもここへ来た目的を覚えていなかったから勘違いではないか、と思ったけれど、今はちゃんと任務で来たことを思い出した。
思い出した上でも、あの発言には疑問が残る。
わたしの知らない記憶がまだ眠っているとしたら?
この血液を再び取り込むことで〝本当に全て〟を思い出せるとしたら?
そうすれば全部が綺麗に繋がっていくような気がした。
左腕に一瞬だけ鋭い痛みを感じ、ゆっくりと血が巡るような感覚に陥る。同時にいろんな感情が流れてくるような気がして頬に涙が伝った。
────これ、が……本当のわたし……?