カメレオンの記憶 第3部
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「……なるほどな」
「まだ全部を解読できたわけじゃなさそうだけど」
『少ナクトモ、アノ双子ヲ最初ニ警戒シテイタノハ当タリダッタナ』
サソリが解読を進めていた大蛇丸の書物……──。その一部がまた明らかとなった。どうやら、隣に住む双子が奴の手下ということで間違いないらしい。
俺の感は正しかったということだ。
「アサギは今夜にでも連れ出そう」
「わかった」
『オレ達モ脱出ノ手筈ヲ整エヨウ』
アサギはもう立派な忍となった。俺が守ってやらなくても、ある程度は生きていけるだろう。
それについ先日────ようやく最後の瞳術を取り込んでくれたのだ。俺はこの瞬間を、今か今かと待ちわびていた。
もうこの里にいる意味はない。
鬱蒼と茂る森の中、アサギの元へ戻ろうと一歩踏み出した時、何かがプツン、と切れるような感覚に陥った。
「おっと……オビト、やばいんじゃない?」
『ガキガ目ヲ覚マシタナ』
────術が解かれたか……。
しかしまだそう遠くへは行っていないだろう。
目を閉じ、写輪眼を開眼させた俺はすぐにアサギの元へ飛んだ。時空を歪めて院内の外に茂る木々のそばに着地し、そこから見えるアサギの病室へと目を向けた。
「……やはり…」
1つだけ窓と網戸が開け放たれ、カーテンが風に煽られている部屋が目に入る。
大方、俺の瞳術が解けてこれまでの目的を思い出したアイツは自身がやろうとしていることに罪悪感を覚え、俺から……──俺達暁から逃げるつもりなんだろう。
が、俺とて馬鹿ではない。あらかじめ角都の糸が切られた瞬間から探知が始まるよう、術式をかけてあった。
────普通の糸では細すぎて術式が上手くかからなかったが……
あの探知術からは逃れられまい。
とはいえ、アイツのことだ。逃げることを優先しているのならば、いろいろ手立てを考えているだろう。
────ああ見えて頭の切れるガキだからな……油断ならん。
まだ近くにアサギの気配を感じ、その付近まで移動する。しかし近づいた途端、急に気配が消え、代わりに驚いたような声が響き渡った。
「おっ、おいアサギ!?」
「どうなってんだ……?」
「どこ行ったんだよ!?」
────シカマルにサスケか。なぜアイツらがアサギを……?
木陰に隠れ、その姿を見守っていると2人は慌てた素振りでアサギを探し回り始めた。あの様子を見るに、病院を抜け出したアサギを見つけて問い詰めたか何かだろう。
そのすぐ後、また別の場所で突然現れたかのようにアサギの気配を感じ、違和感を覚えた。
次は里の門付近。走って移動するにしても、なかなかの距離だ。
────足を負傷しているはずのアイツが、どうやって……?
この距離を一瞬で移動し、なぜその間に探知が効かなくなってしまったのか考えた時……ある答えが脳裏に浮かんだ。
────まさか眼の力だというのか。
アイツはサスケやシカマルに見つかり、一か八か自身の眼の力に頼ったのかもしれない。もしそうだとすれば、気づかれないように後を追った方がよさそうだ。
────既にあの力を使いこなされていては厄介だからな……。
今度は慎重に、徒歩での追跡を試みる。
すぐに追いつくかと思っていたところでアサギの軌道が逸れ、そしてどんどんと俺を引き離すように里から遠ざかって行った。
────いったいどういうことだ。怪我人が出せるような速度ではない。
それでも一定の距離を保ちつつ後を追い、辿り着いたのは見晴らしの良い大きな川だった。
川辺には一筋の光も宿さぬような闇を塗った洞窟が存在している。そしてその中からは確かにアサギの気配が漏れ出ていた。
すぐに足を踏み入れるも、入口の大きさとは裏腹に中はただ岩壁で覆われているだけ。
────なるほど。アジトにするには持って来いの場所だ。
俺は迷わず岩壁に触れ、封を解く。岩に擬態していた石扉はなんなく開き、壁にかかった蛇型の蝋燭が火を灯し始めた。
こんな悪趣味なアジトを作り、アサギと共に消えて行く奴はただ1人しかいない。
────大蛇丸。
今の今までアサギは脱走していたと思っていたが……奴が絡んできているとなれば話は別だ。
疑いが脱走から誘拐へと変わり、俺は中へと踏み込む。
きっと奴らには俺が侵入したことなど、とうに知れ渡っているだろう。
だがそんなことはどうでもいい。俺ものに……──俺達のものに手を出したらどうなるか。身をもって知らしめるとしよう。
入り組んだ広いアジトの中を迷いなく進み、いよいよアサギの気配が間近まで迫った時────。
「すとーっぷ」
もう一歩のところで背後から聞こえた声が俺を引き留めた。
「 これ以上は行かせないよ」
振り返るとそこにはやはりあの双子────[#ruby=漸几_ざんき#]と[#ruby=芽紅羅_めぐら#]の姿があった。
面倒な、そう思った俺は時空を歪め逃走を計る。しかし思うようにチャクラは練れず、どういうわけか体の力が抜けていくような気さえした。
「無駄だよ、〝お父さん〟。ここでは[#ruby=芽紅羅_めぐら#]が優位だ」
────そうか……この小僧……。
大蛇丸め、また厄介な部下を仕込んだものだ。
開けた大きな川が横たわる、こんなにわかりやすいアジトを選んだのには疑問を抱いていたが、まさかこういうことだとはな。
[#ruby=芽紅羅_めぐら#]はきっと水辺で力を発揮し、なおかつ印のいらない忍術を得意としているのだろう。
それにこれは……まずい。
だんだんと乱されていくチャクラ。異変を感じる思考。血液の逆流すら感じ始め、次第に頭がぼんやりと霞んでいく。
「大蛇丸様から言われてる。部外者は排除しろって」