ナナカマド
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任務で里を出て数十分後────。
雲行きはだんだんと怪しくなり、辺りには濃い霧が立ち込め始めていた。皆それに異変を感じ、立ち止まる。
「……誰かいる」
「あぁ、そうみたいだってばよ」
「しかも囲まれてるみたい」
違和感の正体。それは不自然に動く霧とその向こうに見える微かな人影だった。
3人で背中合わせになり、素早くクナイを人影へと投げる。しかし人影は霧と一緒にゆらり、と消え、声だけが響いてきた。
「ククク……奇遇ですねェ。こんなところにしかけた罠に、九尾の人柱力がかかるなんて」
「この声は……! あん時の!」
「お久しぶりです」
そう言って霧の中から現れたのは、漆黒に赤い雲が映える装束を身に纏い、片手には大きな刀のようなものを背負った青い顔の男だった。
一目でわかる、相手の力量。
────こいつ……やばい。
それに見たところナルトにーちゃんとは顔見知りらしい。
今までに感じたことのない張り詰めた空気が当たりを支配し、嫌でも全身が震える。
「以前は取り逃してしまいましたからねェ。この機会に九尾を頂戴させていただきますよ」
男がそう言った直後、霧が渦になり、周りに厚い壁を作った。吹き飛ばされそうな強風が渦巻いて目を開けられなくなる。
「余分なのも混じっていますが……まぁそちらは殺しても構わないでしょう」
その声が風にのって聞こえてきたかと思えば、目の前にいたサク姉が悲鳴とともに吹き飛ばされた。
「サク姉!!」
思わず駆け寄り様子を確認するとその脇腹からは鮮血が滴り落ちていた。どうやら吹き飛ばされた勢いで木の枝が貫通してしまったらしい。
サク姉は「大丈夫」と苦しそうな顔で言いながら自分で治癒し始める。
「くっそ……!」
ナルトにーちゃんが男めがけてクナイや手裏剣を放ち、分身をしかけたりするも、全て相手の持つ大きな刀と強風に弾かれてしまう。
────ナルトにーちゃん……!
助けに行こうとするものの、男は間髪入れずにナルトにーちゃんへと突っ込みその肩を削り取った。
「ゔぁ!」
許せなかった。見ているだけの自分が。
悔しかった。なにもできない自分が。
怖かった。大切な人を失うのが。
震えて言うことを聞かない体に持っていたクナイを突き刺す。
「っ……! 口、寄せ……
そしてそこから湧き出た血液で使い獣の
しかしそれはばしゃんっという水音とともに弾け散る。すぐに本体を探し出そうと振り向こうとした時、首元に刀を突きつけられた。
「甘い。実にわかりやすい攻撃です」
────くそ…っ!
その思いで
しかし直後、姿を消し男に近づいたはずの
そして落ち着いた様子で男は語る。
「もう少し、戦略は練った方がいい」
半ば諦め、唇を噛み締めた時。ナルトにーちゃんの叫び声が聞こえた。
「俺に用があんだろ! こいつらは関係ねぇ!!」
「ほう……逃がしてくれ、とでも言いたそうですが……それはできません」
ナルトにーちゃんが螺旋丸を片手に突っ込むも、それは大きな水弾の中に閉じ込められ意味を無さなくなってしまう。
「応援でも呼ばれると厄介ですからねェ」
刀が振り下ろされる気配を感じ咄嗟に避ける。着地後、少しふらついてしまったがどうにか持ち直し、ナルトにーちゃんとサク姉と集まった時、時間差で首元に痛みを感じた。
「かはっ……!」
同時に吐き気がし、それを全て吐き出すと地面と手が鮮血で染まった。
────なんで……あいつはわたしに触れてないはずなのに……!
「アサギ!! 待ってて、今治すから」
サク姉が首元に手を当てるも、目の前が霞んでいく。男はそんなわたし達に追い打ちをかけるように、たくさんの水弾を放った。
────この、ままじゃ……サク姉達が……。
目を閉じればまだ微かに
────それなら。
「口寄せ……
血溜まりにチャクラを流し込み、
時を渡るように姿を消しながら男に近づき、雷を放つ。その勢いで周りにあった風の壁が剥がれた。
けれどわたしは止まらない。
「これはこれは……少し、間を置いた方がよさそうだ」
そう言って卑怯にも奴は霧となって消えていく。煙とともに
「アサギ!!!」
サク姉とナルトにーちゃんが急いで走って来るのがわかったけど、そこから先は覚えていない。
あとはただ白い世界が広がってるだけだった。
どこかわからない、だけどとても高い場所。そう感じた。
そしてもうひとつはっきりとしてるのは、サク姉やナルトにーちゃんにはもう二度と会えないってこと。
ナルトにーちゃんとは中忍試験で手合わせしたかったな。
サク姉は……サク姉は、本当のお姉ちゃんみたいに思ってた。家族なんて知らないけど、サク姉のことは本当に本当に大切に思ってたから。
2人とも大切だから、亡くしたくなかった。失いたくなかった。
もっと素直に生きてれば、サク姉にも、ナルトにーちゃんにも、日頃から感謝の言葉が言えてたのかな。大好きだよって。いつも、ありがとうって────。
ー完ー
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