朱い縁
夢主設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ん……」
あのあと、私はどうやら泣き疲れてそのまま眠ってしまったらしい。差し込む朝日に顔をしかめると瞼がいつもより重く感じ、泣きすぎてしまったことに半ば後悔する。
────あーあ……今日、任務あるのになぁ。
しかし今更落ち込んだところでもう遅い。重たい体を引きずり起こして準備をしようと立ち上がった時……──。
ドレッサーの上に見知らぬ箱が置いてあるのに気がついた。
────こんなの、あったっけ。
その箱は手のひらに乗るくらいの小さな箱で、鮮やかな青色に白が縁取られている。買った覚えはないし、と気になりながら箱を手に取り蓋を開けた。
「嘘……──!」
その中身を見て息を呑む。中に入っていたのは小さな指輪で、その傍らには折りたたまれた小さな手紙が入っていた。この箱を置いていった人物に心当たりがあった私はすぐさま手紙を抜き取り、内容を確認する。
〝アサギへ
こんな形で渡すことになって、本当に申し訳ないと思っている。
そして昨晩、俺のせいで泣かせてしまったことも謝らせてほしい。
すまなかった。
俺は必ず生きて帰る。
そしてその時はプロポーズをさせてほしい。
今はまだ難しいが……この指輪をつけている間は俺の許嫁として、未来の妻として。2人は繋がっていると約束しよう。
どうか、その時まで待っていてほしい。
愛している。
イタチより〟
手紙を読むなり目頭が熱くなって、枯れたはずの涙が再び溢れ出す。
まさか、イタチが昨晩私の元を訪れていたなんて。
信じられない気持ちが強かったものの、眠気眼の中ぼんやりと感じた人の温もりを思い出す。
────あの時の……イタチ、だったの? てっきり夢か何かだと思っていたけれど……。
この手紙や指輪を見る限り、あの人が来たんだろう。多忙で里へ忍び入るのも困難なはずなのに。
胸がきゅっと苦しくなり嬉しさに泣きながら目を細めた。
────ありがとう……私、頑張るね。きっと……。
もう、折れない。
心の底からそう誓い、彼が戻ってきた時に笑顔でいられるようにと指輪を右手の薬指につけ、手紙も箱に戻して大切にしまった。
「ん~っ! よし、頑張るぞ!」
その場で軽く伸びをしてから洗面所へと向かい、腫れ上がった目を少しでも元に戻すように顔を洗う。
これから私はきっと、この指輪を見る度に元気をもらうだろう。そしてあの人を思い出し、また頑張ろうと思える。
いつまでも心は繋がっているのだと、そう確信できたから。
私はあの人の為に、あの人は私の為に。どれだけ離れていても会える距離にいなくても。どこかで繋がっていればそれだけで、困難さえも乗り越えられる。
それほどにあなたの存在は大きいのだと、気が付いた。
「……私も愛してるよ、イタチ」
届かないと知っていながらも、届いてほしい一心でそう呟く。またきっと、2人で暮らせる未来を願って……──。
ー完ー
3/3ページ