朱い縁
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────疲れた。
何に疲れたのかなんてわからない。別に嫌なことがあったわけでも、疲れるようなことをしたわけでもないのに、ただひたすら倦怠感が全身を呑み込んでいく。
────なんでこんなにだるいのかなぁ。
思うように動かない体をベッドに沈ませたまま目を閉じる。
倦怠感と合わせ、日中の眠気も酷かった。朝はまともに起きられず、昼間も突然に睡魔が押し寄せる。それもここ数日ずっとだ。
この異常な眠気と倦怠感がくる前は早寝早起きが当たり前、昼間も任務に忙しくしてたのに。
そんな日常だったのが、いつからか体が思うように動かなくなってしまっていた。
────やだよ~……やりたいこと、やらなきゃいけないこといっぱいあるのに……。
このままではどちらもやりようがない。独り心細くなりながら、音のしない静かな部屋に小さく呟いた。
「会いたい……」
本当にこんな時こそあの人が傍にいてくれたら、そう何度も思う。だって以前まではこんな気分の時必ず傍にいて、お互い朝まで話明かしたもの。
でもあの事件が起きてから……──彼は全く、姿を現さなくなってしまった。
────私、今でも覚えてるんだよ……最後に言ってくれた言葉。
ふと落ち込んだ気分の中、再びあの人の言葉がこだまする。
『すまない。俺が消えてしまっても……どうか、笑っていてくれ。それだけできっと、俺も頑張れる』
最後の日、泣きじゃくって目が腫れてしまった私の頭を優しく撫でながら彼はそう言った。
私が笑うだけで……笑顔になるだけで彼にも花が咲くのなら、もちろん頑張れる。今までもそれを心の支えとして必死に生きてきた。だけど……──。
────だけど、やっぱりもう無理だよ。
もう、我慢なんてできない。会いたくて会いたくて、胸が引き裂かれるような痛みを覚える。
きっと……きっと私は気を張っていた糸が切れたように、会いたくて仕方なくなったんだろう。何もやる気が起きないのは愛しいあの人に会えないから……会える距離に、いないから。
今まで当たり前だと思っていた、あの距離感。それを失ってしまった私は知らず知らずのうちに、闇の底へと足を踏み外してしまっていたのかもしれない。
今更そんな自分に気がついて自嘲の笑みを零すしかなかった。
────私ってば……ほんと、馬鹿みたい。
あの時、彼のために頑張ると決めたのに。頑張れると思ったのに。彼が笑ってくれるなら、つらくても笑ってこれたのに。
だんだんと溢れる涙をおさえられず、声を押し殺して泣いた。
────ごめん……ごめんなさい。もう、笑ってられないよ……。
何度も何度も、心の中で彼に謝る。
最後の約束を守れなくてごめんなさい。
あなたの糧になれなくてごめんなさい。
今もどこかで戦っているあなたを裏切ってごめんなさい、と────。