09.無力な小鳥
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青々と茂る草木は天を仰ぎ、照りつける太陽とは対照的に肌を撫でる風は冷たい。
漆黒の装束に身を包んだアサギと小南は森の小道を歩いて行く。
初めて与えられた任務に緊張しているのか、装束から半分だけ覗くアサギの表情は見てわかるほどに強張っていた。
この装束も、左手の小指にはめるはずが大きすぎて親指にはめることになった〝時〟の指輪も、触れたことのない忍具が入っているポーチの重さも、全てがアサギを新鮮な気持ちにしてくれる。
長距離移動に慣れていないアサギの体調も考慮し、こまめに休憩を取りつつ辿り着いたのは大きな崖の
2人が着いたのを見計らってか、木陰から1人の男性が姿を現す。
「その子が例の眼を持つ者か」
陽の光を浴びて姿が露わになった彼────うちはイタチを前に、アサギは一歩下がり怯えるように小南の背後へと隠れてしまう。
そんな彼女を横目に小南は淡々と説明を口にした。
「ええ。大方話してある通り、この子には特別な眼がある。今回の任務ではその眼の力を試し、報告してほしい。もちろん、決して無理はさせず危険と判断すれば即刻帰還すること」
言い終わると小南は背後にいたアサギへ視線を移し、イタチの元へ行くよう促した。その視線を受けたアサギは渋々といった様子で離れて行く。
彼女がイタチの元へ行くのを見届けてから、小南は紙の蝶となり青空へと散っていった。
「え…と……よ、よろしくお願いします」
初めて顔上げ、深くかぶった笠から遠慮がちに目を覗かせてそう呟くアサギを見たイタチの表情が、ほんの一瞬だけ変わる。
驚いたような、懐かしさを含むような、戸惑っているような……──。普段、ほとんど感情を表に出さない彼が見せた表情は、まるで一度に押し寄せた心情の波を必死に押し留めているようにも見えた。
しかしそれも束の間、彼は一言も話すことなく踵を返し歩き始める。
アサギはそんな態度の彼を慌てて追った。
何を考えているのかわかりにくいイタチとは対照的に、今の一言で彼の機嫌を損ねてしまったかもしれない、といった感情が手に取るようにわかるアサギはあからさまに不安そうな顔をする。
こうして気まずい雰囲気を維持したまま、2人は微妙な距離感と共に木ノ葉を目指すのだった。