カメレオンの記憶 第2部
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────あの日から、どれくらい経ったんだろう。
一度体験したことのある、あの体調不良。それはオビトの前で涙を流した日から始まった。
きっとこの間説明されたように、わたしの
サソリは当たり前のように、そんなわたしの世話をしに来てくれる。おかげでまたこうして元気を取り戻したわけだけれど、今回は体感的にこの間よりもずっと長いこと寝込んでいた気がする。
────これも力の代償……なのかな。
とはいっても前回は視力が良くなったり、記憶力が上がったり明らかな変化を感じたけれど、今回はこれと言って何も異変がない。
また部屋から出るのも禁じられ、退屈な日々を過ごすことになるのかと思うと気が滅入った。
「アサギ」
ベッドに身を投げ出して窓から見える空を眺めていると、ノック音とともに小南さんの呼ぶ声が聞こえた。起き上がりながら返事をするとすぐに扉が開かれる。
────あれ? 珍しい。
てっきり1人で来たのかと思っていた彼女の後ろにはペインも控えていた。
ペインと顔を合わせるのは最初、洞窟で出会った時以来だ。
小南さんのことは信頼…ていうか、暁の中では話しやすい方だなって思ってるからいいけど、ペインとは気まずいまま。
あの日わたしが倒れた彼を置き去りにして逃げ出そうとしたのも理由のひとつだけど、元死体が纏う、生気のない雰囲気がなんだかどうしても受け入れがたかった。
────慣れてない……っていうのもあると思う。死体と話すのに。こんなこと思っちゃっていいのかわかんないけど……。
「急にごめんなさいね」
「いえ……どうかされましたか?」
彼もきっと、わたしが小南さんとの方が話しやすいのを知っていて口を挟まないんだろう。
わたしが聞き返して初めてペインが口を開いた。
「お前に初任務を命じる」
「…………へっ?」
思わず間抜けな声が出る。
────にん、む? わたしが?
確かにこの間、オビトと話した時に『これからはお前にも任務を与えることがあるだろう』とは言われた。けどまさかこんなに早くこの時がくるなんて思うはずない。
てっきりもっと先のことだと思っていた。
それに今のわたしには戦闘力と言うものが全く備わっていない。
────普通……はわかんないけど、修行とかをつけてから送り出すんじゃないの? せめて忍具の使い方を教えるとか……。
今はこうして鳥籠の中の小鳥のように餌をもらい、飼い主に守ってもらっているから生きているけれど、それが急に死が付きまとう外へ出ろなんて。
「もちろん単独任務や、危険なものではないわ。ツーマンセルを組んで情報調査に出てほしいの」
わたしがよからぬ想像をし始めたと勘づいたのか、小南さんがそう付け足してくれる。
話を聞けば、ツーマンセルの相手と共に木ノ葉の里へ赴き、里の地形を全て記憶、そして同時にできるだけ尾獣に関する情報も得て欲しいとのことだった。
────木ノ葉か。初めて里へ行けるのは楽しみ。それに里へ行くことでこの世界の時間軸を知ることができる。
わたしがこの任務に抜擢された理由については単純。この
ゼツでも同じようなことが可能だが、精度があまり良くないと聞かされた。それに彼自身自由気ままなところがあり、あまり顔を出してくれないんだとか。
────確かに、本編でも大事なとこ以外では登場してない気がする。存在を忘れてることもあるし……なんかごめん、ゼツ。
そう心の中で謝りながらも、彼がどうしてそんなふうに動くのかを知っているため複雑な気持ちになった。
「ところでツーマンセルの相手…って?」
ツーマンセルということは移動中、その人物と2人きりということ。相手によっては地獄のような時間を過ごすことになりかねない。どちらかと言えばそうなってしまう可能性の方が高いと思ったから、今からでも心の準備をしておきたかった。
「うちはイタチよ」
その名前を聞いて心臓が締めつけられるように痛む。
────イタチかぁ……うーん、気まずい……。
彼のことも背景を知っているからもちろん悪い人だとは思ってないけれど、暁に入っている以上、絶対に刺々しい態度なはず。
そう考えると一緒にいる時の空気が重たくなっていくのが簡単に想像できた。
「任務は1週間後。私が迎えに来るわ」
なんでもイタチは今鬼鮫と共に別の長期任務に出ているため、ここまでは来られないらしい。待ち合わせ場所を決め、そこまでは小南さんと同行することになると言われた。
まぁわたしはこの通り非力だし、オビトが言っていたようにひと時でも危険が降り注がないようにしてくれているんだと思う。
……悪く言えばずっと見張りがいるわけだけど。
わたしがこの部屋にいる間でさえ、気配を消した誰かが近くに潜んでいるのかもしれないと思えた。でなければあの時、真っ先にオビトが駆けつけることができただろうか。
「それじゃあ、任務の日まで体調にはくれぐれも気をつけて」
小南さんとペインは任務の話が終わるとそう別れの言葉を残し、出て行ってしまった。
暁として初めての任務。
────〝暁の一員〟、か。