1-10 そういうの、考えたことある?

  • 瀬名 眞白

    自分を責め続けるのは、やっぱり違う。

  • 瀬名 眞白

    いい加減それ、もう止めようぜ?

  • 鷹野 光星

    …――えっ、

  • 瀬名 眞白

    いつまでも『自分のせいだ』って思われる側の気持ち、そろそろ考えてみてもいいんじゃねーか?

  • 鷹野 光星

    …、

  • 瀬名 眞白

    悪いけど、俺だったら嫌だわ。

  • 瀬名 眞白

    気にするなって言われてんのにさ、いつまでもしつこいんじゃねーの?

  • 鷹野 光星

    …それは、確かに、そうかもしれないが…、

  • 瀬名 眞白

    「そうかもしれないが…」じゃなくて、『そうなんだ』よ。

  • 瀬名 眞白

    優男もここまでくると、さすがに鬱陶しいな。

  • 鷹野 光星

    ―――

  • 少し意地悪く吐き捨てるように言ったからか、鷹野の顔色が鈍く変わって、わずかでもショックを受けているように見えた。

  • 言いすぎて傷つけたかもしれないと、一瞬後悔しそうになるけど、

  • 普段から『優しい』だとか『いい人』だとか言われてる人に対しては特に、時には荒療治が必要なんだ。

  • そういうヤツは、大抵、いろんなことを余分に背負い込もうとするから。

  • 瀬名 眞白

    黒木だって、鷹野がいつまでも気遣ってくれてるのが『重い』かもしれねーんだぞ?

  • 瀬名 眞白

    そういうの、考えたことある?

  • 鷹野のことが好きだからこそ、なんとかしてやりたい。

  • 瀬名 眞白

    俺から見た黒木はあっさりしてて、執念深いような人じゃねーと思う。

  • 瀬名 眞白

    アームカバーをずっと着けてる理由は、

  • 瀬名 眞白

    誰かに火傷のことを聞かれたときに、いちいち理由を説明するのが煩わしいからじゃねーのかな。

  • 鷹野 光星

    …「説明するのが煩わしい」…?

  • 瀬名 眞白

    『後輩が転んだときに、それを庇ったせいでの火傷』だなんて、言いたくねーかなって。

  • 鷹野 光星

    …、

  • 瀬名 眞白

    まるで、『自分が良いことをしたが故の負傷』みたいなさ。

  • 瀬名 眞白

    黒木の性格から考えて、そういうのが嫌だから隠してるような気がするよ、俺は。

  • 鷹野 光星

    …―――

  • 瀬名 眞白

    昔も今も、鷹野にとってはずっと良い先輩なんだろ?

  • 瀬名 眞白

    黒木が根っからの嫌な女だったら、もうとっくに鷹野の心身を蝕んで再起不能にしてるよ。

  • 瀬名 眞白

    それこそ、【国語科の鷹野先生】なんて、今ここに存在してないんじゃねーの?

  • 鷹野 光星

    …、

  • 瀬名 眞白

    今、俺のクラスの担任と副担で、二人でいいコンビじゃん?

  • 瀬名 眞白

    黒木の中に少しでも遺恨があったら、そうはなってねーだろ?

  • そう告げた後、厳しく引き締めていた表情から一転、俺は鷹野に向けてニッと笑いかけた。

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