1-8 …もう言うな、背中がムズムズする。

  • こういうとき、このまま黙って静かに話を聞くのが普通なのかもしれない。

  • 鷹野にとって辛い経験だったってことなら尚更、俺はもちろん鷹野のどんなことでも全力で受け止めるつもりだ。

  • でも、

  • 瀬名 眞白

    …ちょっと待て。

  • 鷹野 光星

    …え?

  • 瀬名 眞白

    火傷の痕だとかそんなこと、ここで話しても大丈夫なのかよ?

  • アームカバーの下には、黒木からすれば見られたくないものを隠しているはずで。

  • 自分の知らないところで自分以外の誰かに、ある種の『秘密』を暴露されるのは、黒木にとって嫌なことではないのか…

  • そう考えると自然と眉間に皺が寄った。

  • 鷹野 光星

    …瀬名、怖い顔してる。

  • 瀬名 眞白

    悪い。俺、なんつーか…、

  • 瀬名 眞白

    こういうのってさ、本人から直接聞くならいいけど、

  • 瀬名 眞白

    本人のいないところで話すのって、良くねー気がしてさ。

  • 瀬名 眞白

    それに…、

  • 鷹野 光星

    …「それに」?

  • 瀬名 眞白

    ……、

  • もう一つ、大事なこと。

  • 瀬名 眞白

    …鷹野にも。

  • 鷹野 光星

    …俺?

  • 瀬名 眞白

    鷹野にも、『勝手に暴露した嫌ヤツ』にはなってほしくねーから。

  • 鷹野 光星

    ―――…

  • 瀬名 眞白

    万が一にも鷹野が他で話したことを黒木が知ったとして、

  • 瀬名 眞白

    黒木が鷹野のことを悪く思わないとも限らねーじゃん。

  • 瀬名 眞白

    そうなったら鷹野、またしんどい思いが増える。

  • 鷹野 光星

    瀬名…。

  • 瀬名 眞白

    嫌だからさ、俺。

  • 鷹野 光星

    え?

  • 瀬名 眞白

    鷹野がしんどくなるの、嫌だから。

  • 鷹野 光星

    …、瀬名、おまえ…。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • …マズイ。

  • なんとなく神妙になってしまったこの空気を変えないと。

  • これ以上、俺の奥底の本音を剥き出しにしてしまうと鷹野が混乱する。

  • 一旦、リセットしなければ。

  • ひとまず、ニッコリしろ、俺。

  • 瀬名 眞白

    なんつーか、心配じゃん?

  • 瀬名 眞白

    仲良く仕事してもらわねーと、二人は俺のクラスの担任と副担だし?

  • 鷹野 光星

    …、

  • 瀬名 眞白

    な?

  • 鷹野 光星

    ……ほんとに、おまえは…、

  • 鷹野 光星

    まっすぐで優しいヤツだな。

  • 瀬名 眞白

    そ、そんなことねーよ、

  • 瀬名 眞白

    優しいとか、そんなんじゃねーから。

  • 鷹野 光星

    いーや、優しい。

  • 鷹野 光星

    黒木先生や俺のことまで考えてくれて、とっても優しいと思うぞ。

  • 瀬名 眞白

    もう言うな、背中がムズムズする。

  • めっちゃ照れる。

  • 鷹野に褒められるのはすごく嬉しいけど、照れ隠しに素っ気なくそっぽを向いた。

  • 鷹野 光星

    さっきの話だけど、大丈夫だから。

  • 鷹野 光星

    黒木先生には、前から許可をもらってる。

  • 瀬名 眞白

    …そうなのか?

  • 確認するように鷹野に視線を戻した。

  • 鷹野 光星

    俺が話したいって思ったら、気にせずいつでも話していいと言われてる。

  • 鷹野 光星

    だから…このままさっきの話の続きを聞いてくれるか?

  • 瀬名 眞白

    …ん、

  • 瀬名 眞白

    分かった。いいぜ。

  • どこか縋るような鷹野の眼差しに、深く頷いて見せた。

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