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︙
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鷹野 光星…よし、これで100点。
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鷹野 光星相変わらず、さすがだな、瀬名は。
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瀬名 眞白
どーも。

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瀬名 眞白
(とかって、クールに返す俺…、)

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瀬名 眞白
(鷹野に褒められて超嬉しいんだけどっ)

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放課後の国語科資料室。
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内心ではニッコニコで、横から答案用紙を覗き込む。
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採点ミスの小テストは、鷹野の赤ペンによって『98』から『100』の数字に上書きされていた。
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瀬名 眞白
(……ん?)

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返却された小テストを鞄に入れて、ふと我に返る。
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瀬名 眞白
(この状況…)

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今、他の教員は不在のこの資料室で、俺と鷹野は二人きり。
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そうなったらラッキーだとは思っていたけど、
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なったらなったで、これまた普段感じたことのない緊張感が高まってくる。
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瀬名 眞白
(ヤバイ、気にしたら余計…)

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瀬名 眞白
(思ってたよりも心臓が)

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瀬名 眞白
(落ち着け、俺…)

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一喝入れるように、胸の心臓の辺りを握り拳でゴツンと叩いた。
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鷹野 光星……どうした?
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瀬名 眞白
っ、別に。

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瀬名 眞白
し…しゃっくりが出そうになったから。

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鷹野 光星へえ、そんな方法で止まるなんて知らなかったな。
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鷹野 光星今度、俺もやってみよう。
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瀬名 眞白
いや、これは今思い付いてやっただけだから。

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瀬名 眞白
アテになんないから、やらねーほうがいい。

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鷹野 光星そうなのか?
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瀬名 眞白
ああ。

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瀬名 眞白
(鷹野と二人でいるとドキドキするから…だなんて、口が裂けても言えねー)

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鷹野 光星…ところで、
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鷹野 光星瀬名は理系が得意らしいけど、大学はそっちの方面に進むのか?
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瀬名 眞白
…へ?

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いきなりの質問に、変なトーンの声を返してしまった。
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ゴホンと軽い咳払いで誤魔化してから鷹野を見遣る。
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瀬名 眞白
進路のことか?

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鷹野 光星ああ。進路について、ちゃんと考えたりしてるか?
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瀬名 眞白
いや、まだ何も。2年になったばっかだし。

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鷹野 光星一年なんてあっという間に過ぎるぞ?
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鷹野 光星今からある程度目標を立てて、頑張っていくのがおすすめだけどな?
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瀬名 眞白
んー……まあ、そのうちな。

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鷹野 光星瀬名はどの科目も成績はトップクラスだし、
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鷹野 光星この調子で卒業まで頑張れよ?
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瀬名 眞白
おう。

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鷹野 光星数学なんて、難しい応用問題が出題されても、いつも90点以上取ってるだろう?
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鷹野 光星小テストに限ってはほとんどが100点だって、数学の[#ruby=日和_ひより#]先生も褒めてた。
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鷹野 光星俺は数学が苦手だったから、瀬名のその脳みそに憧れるよ。
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瀬名 眞白
教師が、たかが高校生の脳みそに憧れてどうする。

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鷹野 光星自分にできないことをやってのける人のことは、年齢や性別関係なく尊敬に値するから。
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瀬名 眞白
ふーん…。

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瀬名 眞白
(鷹野の、そんな考え方も好きだな…)

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自分だって国語ができるから、教師っていう難しい仕事に就いてるのに。
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どんな立場であっても、いろんな角度から人を尊敬することができる鷹野は、やっぱりすごく素敵だ。
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瀬名 眞白
…じゃ、俺はそんな鷹野に尊敬されてるってことか。

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鷹野 光星…「そんな」?
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瀬名 眞白
あ、いや、別になんでもねー。

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鷹野 光星……、おまえはすごいよ。
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瀬名 眞白
…え?

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鷹野 光星とにかく、すごいヤツだよ。
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瀬名 眞白
なにがすごいのか分かんねーけど。

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ちょっぴりぶっきら棒に切り返しならも、謎めいた言葉を並べて見つめてくる鷹野の精悍な瞳にドギマギする。
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瀬名 眞白
(気を抜いたら、またドキドキしてきた…マズイ)

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鷹野 光星どうかしたか?瀬名?
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瀬名 眞白
な、なんでもねーよ。

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瀬名 眞白
…まあ、数学はさ、

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瀬名 眞白
ある意味、単純構造だから慣れればそんな難しくねーよ。

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瀬名 眞白
どっちかっつーと、国語の方がムズイ。

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鷹野 光星でも瀬名は、いつも国語も高い点数取ってるけどな?
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瀬名 眞白
それは……、

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瀬名 眞白
……

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鷹野 光星…?
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瀬名 眞白
それなりに、集中して勉強してるからだよ。

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鷹野に、できるヤツだって思われたい一心で。
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俺が良い点数を取ると、とても嬉しそうな笑顔を浮かべてくれるから。
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その笑顔が見たいから、いつだって頑張れる。
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鷹野 光星…そうか。
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鷹野 光星偉いな、瀬名。
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唐突に伸びた鷹野の広い手が、突然俺の頭を優しくポンポンと撫でた。
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瀬名 眞白
うお…っ、と?!

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鷹野 光星っ、すまない。
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鷹野 光星いつも頑張ってて可愛いなと思って…つい。
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瀬名 眞白
か、「可愛い」…?!

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鷹野 光星気を悪くしたなら謝る。
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鷹野 光星褒め言葉なんだが…、つい言ってしまった。
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瀬名 眞白
べ、別に…、

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瀬名 眞白
鷹野は大人だし、ガキの俺に対してそんな風に思うこともあるだろうし、

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瀬名 眞白
誉め言葉ならどんな言葉でも嬉しいけど…。

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特に、鷹野からの言葉なら全部。
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鷹野 光星そのわりには、眉間に皺が寄ったままだけど?
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瀬名 眞白
こ…これは違う、気にすんな。

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頭ポンポン付きでの誉め言葉に心臓が跳ね上がったから、その鼓動を抑えようと苦戦したのが顔に出てしまった。
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瀬名 眞白
い、いちいち気にしてんなよ?

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瀬名 眞白
マジで嫌とかねーから。

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鷹野 光星…うん。
そう思ってもらえるならよかった。 -
瀬名 眞白
(…その笑顔…、)

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瀬名 眞白
(鷹野のそのマシュマロみたいに柔らかな笑顔が好きすぎる…)

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俺はその笑顔見たさに、雨の日も風の日も、寝込むほどの体調不良以外は文句ひとつ言わずに学校に通うのだ。
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瀬名 眞白
(ほんと俺、鷹野のおかげで…高校に入ってからは、言ってみれば優等生だわ)

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中学の頃の俺は、今とは違って不登校気味でヤンチャだったから。
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