4-14 周囲から見れば、友達を労わるサムズアップ。

  • 篠原 円香

    あ、僕も一緒に行きます。

  • 篠原 円香

    僕のせいで、瀬名くんに怪我をさせてしまいましたから。

  • 瀬名 眞白

    大丈夫だって、円香。気にするな。

  • 篠原 円香

    でも…、

  • 鷹野 光星

    心配だよな。篠原もおいで。

  • 円香に向き直った鷹野も、やっぱりいつもの『副担の鷹野』で。

  • 瀬名 眞白

    (さっきの鷹野…、)

  • 瀬名 眞白

    (マジでなんか、いつも違った感じだったよな…)

  • 俺だけに垣間見せたあの表情には、優しくもどこか本能的な『肩書を外した鷹野』がリンクしているように思えた。

  • 武藤 勝生

    …あ、鷹野先生!

  • ふと、前方から、俺たちの元まで勝生が軽い足取りで駆け寄ってくる。

  • 救護テントで借りたのか、手にしたガーゼの束を鷹野に差し出した。

  • 武藤 勝生

    手当てする前に傷口を洗った方がいいと思うから。

  • 武藤 勝生

    先生、眞白を手洗い場まで連れて行ってもらえます?

  • 武藤 勝生

    僕、救護班長だけど、次に出なきゃならない種目があって付き添えないので。

  • 瀬名 眞白

    え、勝生、他に出る競技あったっけ?

  • 武藤 勝生

    今から最強のムカデになる。

  • 瀬名 眞白

    ……あ。

  • 瀬名 眞白

    ムカデ競争か。

  • 武藤 勝生

    うん、そう。

  • 瀬名 眞白

    (…ん?)

  • 瀬名 眞白

    (いや、こいつ…、ムカデの一員になる必要あったか?)

  • 確か、勝生はすでに二種目の出場を終えていて、それ以降は放送部の仕事をこなしていたはず。

  • 武藤 勝生

    ちょうど欠員が出たんだよ。

  • 瀬名 眞白

    欠員って誰よ?

  • 武藤 勝生

    ……

  • 投げかけた質問をしれっとスルーした勝生は、俺の隣で佇む円香に視軸を合わせた。

  • 武藤 勝生

    円香は一足先に救護テントに行って、眞白の手当の準備をしておいてくれる?

  • 武藤 勝生

    救護テント、わりと混んでるから、眞白が手当てするスペースを先に確保しておきたいんだ。

  • 篠原 円香

    はいっ、分かりました。

  • 武藤 勝生

    …ってことで、先生、お願いします。

  • 鷹野 光星

    確かに武藤の言うように、まずは傷口の洗浄だな。

  • 鷹野 光星

    瀬名、先に傷口を洗いに行こう。

  • 瀬名 眞白

    …あ、ああ。

  • 瀬名 眞白

    つーか、洗いに行くくらい、俺一人で行けるけど?

  • 武藤 勝生

    だーめ。一人だと適当にしか洗わないっしょ?

  • 武藤 勝生

    鷹野先生に見張っててもらわないと。

  • 篠原 円香

    瀬名くん、傷口をしっかり洗って来てくださいね?

  • 瀬名 眞白

    おう……りょーかい。

  • 円香の言いつけにひとまず素直に頷いてから勝生に視線を移すと、親指を上に向けた策士な笑顔と目が合う。

  • 武藤 勝生

    …、

  • 口角を少し上に引き上げた、やり手な顔。

  • 瀬名 眞白

    (あのしてやったりな顔つき…、)

  • 瀬名 眞白

    (ムカデ競争、もしかして誰かと代わってもらったのか?)

  • 武藤 勝生

    まーしろっ。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 武藤 勝生

    余計なこと考えずに、傷口洗浄いってらー。

  • 周囲から見れば、友達を労わるサムズアップ。

  • でも、それにはもう一匙のスパイスが効いていた。

  • 瀬名 眞白

    (夏休みのときみたいに、また鷹野との時間を作ってくれたってわけか…)

  • 知謀家の親友はなかなか侮れない。

  • 嬉しさと気恥ずかしさが入り混じったような微笑みを、勝生への返事に置き換えた。

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