-
篠原 円香あ、僕も一緒に行きます。
-
篠原 円香僕のせいで、瀬名くんに怪我をさせてしまいましたから。
-
瀬名 眞白
大丈夫だって、円香。気にするな。

-
篠原 円香でも…、
-
鷹野 光星心配だよな。篠原もおいで。
-
円香に向き直った鷹野も、やっぱりいつもの『副担の鷹野』で。
-
瀬名 眞白
(さっきの鷹野…、)

-
瀬名 眞白
(マジでなんか、いつも違った感じだったよな…)

-
俺だけに垣間見せたあの表情には、優しくもどこか本能的な『肩書を外した鷹野』がリンクしているように思えた。
-
武藤 勝生…あ、鷹野先生!
-
ふと、前方から、俺たちの元まで勝生が軽い足取りで駆け寄ってくる。
-
救護テントで借りたのか、手にしたガーゼの束を鷹野に差し出した。
-
武藤 勝生手当てする前に傷口を洗った方がいいと思うから。
-
武藤 勝生先生、眞白を手洗い場まで連れて行ってもらえます?
-
武藤 勝生僕、救護班長だけど、次に出なきゃならない種目があって付き添えないので。
-
瀬名 眞白
え、勝生、他に出る競技あったっけ?

-
武藤 勝生今から最強のムカデになる。
-
瀬名 眞白
……あ。

-
瀬名 眞白
ムカデ競争か。

-
武藤 勝生うん、そう。
-
瀬名 眞白
(…ん?)

-
瀬名 眞白
(いや、こいつ…、ムカデの一員になる必要あったか?)

-
確か、勝生はすでに二種目の出場を終えていて、それ以降は放送部の仕事をこなしていたはず。
-
武藤 勝生ちょうど欠員が出たんだよ。
-
瀬名 眞白
欠員って誰よ?

-
武藤 勝生……
-
投げかけた質問をしれっとスルーした勝生は、俺の隣で佇む円香に視軸を合わせた。
-
武藤 勝生円香は一足先に救護テントに行って、眞白の手当の準備をしておいてくれる?
-
武藤 勝生救護テント、わりと混んでるから、眞白が手当てするスペースを先に確保しておきたいんだ。
-
篠原 円香はいっ、分かりました。
-
武藤 勝生…ってことで、先生、お願いします。
-
鷹野 光星確かに武藤の言うように、まずは傷口の洗浄だな。
-
鷹野 光星瀬名、先に傷口を洗いに行こう。
-
瀬名 眞白
…あ、ああ。

-
瀬名 眞白
つーか、洗いに行くくらい、俺一人で行けるけど?

-
武藤 勝生だーめ。一人だと適当にしか洗わないっしょ?
-
武藤 勝生鷹野先生に見張っててもらわないと。
-
篠原 円香瀬名くん、傷口をしっかり洗って来てくださいね?
-
瀬名 眞白
おう……りょーかい。

-
円香の言いつけにひとまず素直に頷いてから勝生に視線を移すと、親指を上に向けた策士な笑顔と目が合う。
-
武藤 勝生…、
-
口角を少し上に引き上げた、やり手な顔。
-
瀬名 眞白
(あのしてやったりな顔つき…、)

-
瀬名 眞白
(ムカデ競争、もしかして誰かと代わってもらったのか?)

-
武藤 勝生まーしろっ。
-
瀬名 眞白
…、

-
武藤 勝生余計なこと考えずに、傷口洗浄いってらー。
-
周囲から見れば、友達を労わるサムズアップ。
-
でも、それにはもう一匙のスパイスが効いていた。
-
瀬名 眞白
(夏休みのときみたいに、また鷹野との時間を作ってくれたってわけか…)

-
知謀家の親友はなかなか侮れない。
-
嬉しさと気恥ずかしさが入り混じったような微笑みを、勝生への返事に置き換えた。
-
︙
-
NEXT
タップで続きを読む