4-5 でも、じゃあどう聞けばいいのか。

  • その日の夜。

  • 瀬名 眞白

    …、

  • 風呂上りの濡れた髪を首に巻いたバスタオルでガシガシやりながら、スマホをタップする。

  • テレビを見ていた従姉妹が何か話したそうにリビングのソファーから笑いかけてきたが、

  • 『今、ちょっと取り込み中なんで』…の雰囲気を醸し出しながら、短い笑みだけを返してそのまま自室へと向かった。

  • 悪いけど、今の俺の心には、たわいのない話を受け入れる余裕がない。

  • 武藤 勝生

    【で、二人はどこかへ行った、と】

  • 瀬名 眞白

    【そう】

  • 瀬名 眞白

    【マジでめっちゃ気になる】

  • 恋バナを遠慮なく話せる勝生に、今日感じたモヤモヤを一気に吐き出していた。

  • …ああ、やっぱ俺、意外と繊細。

  • 武藤 勝生

    【あのさ、眞白】

  • 武藤 勝生

    【おまえの気持ちは分かるけど、】

  • 武藤 勝生

    【別に二人でラブホ街に消えたわけじゃないんだからさ】

  • 武藤 勝生

    【そんなことくらいで不安になってどうする】

  • 瀬名 眞白

    【そーだけど!】

  • 瀬名 眞白

    【鷹野もその人も、仲がよさそうだったから】

  • 互いの連投がLIN〇の画面上でポンポンと弾ける。

  • 武藤 勝生

    【ただの友達でも仲いいよ】

  • 瀬名 眞白

    【なんか、友達って感じでもねーような気がするんだよな】

  • 武藤 勝生

    【鷹野先生、今付き合ってる人はいないって、この間言ってたじゃん】

  • 瀬名 眞白

    【あれは夏休みの時点での情報だろ】

  • 瀬名 眞白

    【もしかしたら、あの日から今日までの間に彼女ができたのかもしれん】

  • 瀬名 眞白

    【遠くからしか見てねーけど、綺麗な感じの人だったし】

  • 瀬名 眞白

    【あ、もしかしたら】

  • 瀬名 眞白

    【鷹野が高校時代に好きだった弓道部の先輩とか】

  • 武藤 勝生

    【落ち着け、眞白】

  • 武藤 勝生

    【弓道部の先輩とか違うだろ】

  • 武藤 勝生

    【なんで今更】

  • 瀬名 眞白

    【なんだっけ、】

  • 瀬名 眞白

    【『焼け木杭に火が付いた』とかって言うじゃん】

  • 武藤 勝生

    【その言葉って、】

  • 武藤 勝生

    【過去に付き合ってた人たちに例えるものじゃなかった?】

  • 武藤 勝生

    【鷹野先生はその先輩に片想いだったんだから、関係ない】

  • 瀬名 眞白

    【そうかな】

  • 武藤 勝生

    【そうだよ】

  • 武藤 勝生

    【そんなに気になるなら、】

  • 武藤 勝生

    【明日にでも先生に聞いてみたらいいじゃん】

  • 瀬名 眞白

    ……

  • 返信を打ち込むためにせわしなく動かしていた指を止める。

  • 真意が分からないままモヤモヤし続けるのは、確かにしんどい。

  • でも、じゃあどう聞けばいいのか。

  • 瀬名 眞白

    【分かんねーし】

  • 武藤 勝生

    【なにが?】

  • 瀬名 眞白

    【なんて聞いたらいいのか、分かんねー】

  • 武藤 勝生

    【なーに?カワイイ眞白くんになっちゃって】

  • 瀬名 眞白

    【おだまりなさい】

  • 武藤 勝生

    【軽く聞けばいいんだよ】

  • 武藤 勝生

    【「昨日の帰りに一緒にいた女の人って、もしかして付き合ってる人?」】

  • 武藤 勝生

    【みたいな感じでサラッと】

  • 瀬名 眞白

    (「そうなんだよ、今付き合ってる人なんだ」って、)

  • 瀬名 眞白

    (鷹野がすんなりそう答えたらどーすんだよ…)

  • 瀬名 眞白

    ハァ…。

  • 昨夜の勝生とのLIN○を思い出して、らしくなく盛大な溜め息をつく。

  • 瀬名 眞白

    (そもそも、『サラッと』ってなんだよ。サラッと聞けたら苦労しねーって…)

  • 瀬名 眞白

    (だいたい勝生は、片想いしてるヤツの気持ちなんて分かんねーんだ)

  • 昨日さんざん話を聞いてもらった親友に対して酷い言い様だ。

  • でも、それほどまでに俺の心はざわついていた。

  • …放課後。

  • 今日は、円香がピアノの発表会の打ち合わせで外せない用事があるらしく、二人三脚の練習は明日に繰り越すことにした。

  • 俺にとっては、鷹野に真実を聞くために生まれた絶好のタイミング。

  • 瀬名 眞白

    (うー…、)

  • 瀬名 眞白

    (告白するわけでもねーのに、緊張する…)

  • 鷹野が顧問を引き受けている弓道部の道場周辺で、出てくるのをこっそり待ち伏せる。

  • 理想は、偶然鉢合わせるといったシチュエーションだ。

  • 瀬名 眞白

    (『こんなところで、なにしてるんだ?瀬名』)

  • 瀬名 眞白

    (『お、鷹野じゃん。偶然だな』)

  • …いや、偶然ってなんだよ。

  • 普段は近寄ることがないこの周辺を俺がうろついてること自体、不自然すぎる。

  • 脳内で鷹野に会ったときのシミュレーションをしてみたが、とんでもなく無理があることに今になって気づいた。

  • 瀬名 眞白

    …ハァ…、
    バカすぎるわ、俺…。

  • だが、ここまで来たらもう背に腹は代えられない。

  • 小さく深呼吸をしてなんとか気持ちを切り替えた。

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