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篠原 円香ほんとに、ありがとうございます。
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瀬名 眞白
練習中もおまえがこけないように、死守すっから。

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篠原 円香……、瀬名くん。
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瀬名 眞白
…ん?

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篠原 円香とってもずるいです。
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瀬名 眞白
「ずるい」?なにが?

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篠原 円香かっこよすぎます。
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瀬名 眞白
…ふーん?

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篠原 円香あの…、瀬名くんのことですよ?
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瀬名 眞白
え、俺?

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篠原 円香この話の流れで、瀬名くん以外、他に誰がいるんですか。
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瀬名 眞白
…ん?
ああ…それもそうか。
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篠原 円香勉強もできて運動もできて…おまけに性格も見た目も良くて。
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篠原 円香たくさんの人が、瀬名くんに憧れていると思います。
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瀬名 眞白
ヤンチャだったし口も悪いし、愛想よくねーし、超絶寝起き悪いし、

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瀬名 眞白
喧嘩は強いけど、虫には最弱だし…

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瀬名 眞白
憧れられるようなヤツじゃねーけど?

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篠原 円香そんなのなんてことないです、いつもかっこいいです。
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瀬名 眞白
…だいぶフィルターかかってね?

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篠原 円香かかってません。
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瀬名 眞白
俺は、ひたむきに頑張る円香のほうが、ずっとかっこいいと思うけど?

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篠原 円香そ…そんなことないです…。
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照れたようにも拗ねたようにも見える表情で少しばかり唇を尖らせた円香は前に向き直ると、
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体育座りをした膝を抱え直すようにしてそこに顔をうずめた。
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瀬名 眞白
…さてと。

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瀬名 眞白
あともう少しだけ練習するか?

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そんな円香の背中をあやすようにポンポンとやって、何気に前方に視線を馳せる。
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グラウンドではサッカー部の練習風景が広がっていて、その向こう側には校門へと続く中庭が見えた。
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瀬名 眞白
(…あ、)

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偶然、中庭の緑の中に鷹野の姿を見つける。
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途端に胸がときめいて、無意識にその場から立ち上がった。
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姿勢よく歩く鷹野の背中にはいつものショルダーバッグが掛かっているから、これから家に帰るのかもしれない。
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瀬名 眞白
……

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腕時計を見ると、17時過ぎ。
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帰宅するには、いつもより少し早い気もする。
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瀬名 眞白
(…ん?)

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校門を目指してまっすぐ歩く鷹野の元に、前から一人の女性が手を振りながら近づいた。
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遠くからだが、晴蘭の職員じゃないことは分かる。
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パッと見た感じ担任の黒木に似た雰囲気はあるが、アースカラーのゆるふわなワンピースを着ている時点で黒木ではない。
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瀬名 眞白
(…誰だ?)

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にこやかに笑い合う二人は、親し気で隔たりがないようにも見える。
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鷹野に似ているわけでもないし、姉や妹だとは考えにくい。
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瀬名 眞白
(…まさか、鷹野の彼女、とか…)

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…まさか、な?
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つい凝視してしまいながら眉根をひそめた。
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篠原 円香――…くん、
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瀬名 眞白
……

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篠原 円香…――くん、
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瀬名 眞白
……

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篠原 円香瀬名くんっ。
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瀬名 眞白
えっ――…ああ、悪い、

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篠原 円香大丈夫ですか?どうかしましたか?
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瀬名 眞白
…大丈夫、なんでもねー。

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円香の呼び声を何度かスルーしてしまっていた自分を苦笑交じりで誤魔化しながら、再び鷹野の居た辺りに視線を飛ばす。
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そのときに俺の視界が捉えたのは、二人仲良く並んだ背中。
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なんだか楽し気な様子で、校門の外へと消えて行った。
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瀬名 眞白
(…なんだよ、マジで…)

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それは、恋してる俺の脆弱性。
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不安と不快な気持ちが胸の中に広がって、小さな子どもみたいにふくれっ面を晒してしまった。
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