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武藤 勝生…―――あ、目を覚ましそう…、
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武藤 勝生眞白?聞こえる?
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鷹野 光星瀬名?俺の声が分かるか?
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瀬名 眞白
……、

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優しく響く二つの音を辿るようにして、うっすらと目を開く。
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瀬名 眞白
…っ、

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鷹野 光星大丈夫か、瀬名。
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瀬名 眞白
…ん…。
俺…、
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鷹野 光星どうやら、熱中症になってしまったみたいだな。
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瀬名 眞白
熱中症…。

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武藤 勝生気分はどう?マシになった?
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瀬名 眞白
…ああ、たぶん、へーき…。

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その音が鷹野と勝生の声だということを悟って、二人に向けてゆっくりと交互に視線を巡らせた。
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武藤 勝生良かったぁ…。
どうなることかと思ったよ…。 -
安心したように微笑んだ勝生は、床上にペタリとへたり込む。
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どうやら俺はベッドに寝かされていて、まっすぐ前を見るとこの部屋の白い天井が視界を埋めた。
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まだほんの少しぼんやりする頭の中で、朧気な記憶を引っ張り出す。
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瀬名 眞白
…えっと、鷹野の家に着いたんだっけ…?

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武藤 勝生うんそう、鷹野先生の家だよ。
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瀬名 眞白
そっか…。

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瀬名 眞白
……

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瀬名 眞白
(……え、…ってことは、今、俺…、)

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瀬名 眞白
(鷹野のベッドで寝てる…?!)

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思わず飛び起きてしまいそうになる俺の両肩を、勝生が柔らかに押さえ付けた。
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武藤 勝生こらこら。
急に起き上がったら、まだ眩暈とかするかもだぞ? -
瀬名 眞白
い、いや、でも…、

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鷹野 光星もうしばらく、ゆっくり寝てなさい。
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瀬名 眞白
でもここ、鷹野のベッド…、

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鷹野 光星嫌か?
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鷹野 光星ちゃんと毎日シーツや枕カバーを変えてるから、衛生面は悪くないと思うけど。
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瀬名 眞白
ち、違う、嫌とかじゃねーよ、

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瀬名 眞白
汗まみれの俺が寝っ転がってて悪いなって…。

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この超絶だるい暑さの中、駅からの道のりを汗だくで歩いてたから、俺の体は決して綺麗じゃないのに。
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鷹野 光星そんなこと気にしなくていい。
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鷹野 光星大丈夫だから。
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瀬名 眞白
……ぅ、ありがと…。

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マジで、申し訳ない。
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武藤 勝生そうそう、先生の応急処置が神業でさ。
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瀬名 眞白
…「神業」?

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武藤 勝生眞白が完全に意識を失う前に、手際よく水分補給させてさ。
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瀬名 眞白
……そういえば、途中でなんか飲んだ気がする…。

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武藤 勝生だろ?
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武藤 勝生その後すぐに眞白を抱きかかえてベッドまで運んで、頭や体を冷やしてさ。
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瀬名 眞白
えっ――…「抱きかかえて」?!

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瀬名 眞白
(汗だくの俺を、鷹野が?!)

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それはもう、神としか言いようがない。
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武藤 勝生まるでこう…王子様みたいにさ、軽々と。
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瀬名 眞白
…マジか…。

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瀬名 眞白
(意識なかったのがマジで残念すぎる)

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瀬名 眞白
(王子様みたいな鷹野、見たかった…)

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鷹野 光星武藤、「王子様」は言い過ぎだろう。瀬名が驚いてる。
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瀬名 眞白
いや、別に俺は…。

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悪い意味で驚いたわけじゃないんだが。
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武藤 勝生でも、めっちゃイケてたし。
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瀬名 眞白
(そうそう、それだよ…。かっこよすぎる鷹野を間近で見たかったなって思っただけで)

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武藤 勝生先生ってスリムなのに、見た目と違って力あるよなー。
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鷹野 光星ははっ、ここぞってときにはパワーが出るんだよ。
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瀬名 眞白
…鷹野は、生徒のことになると一生懸命だから。

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武藤 勝生っていうか、
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武藤 勝生『眞白想い』なんだよな、先生は。
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瀬名 眞白
そ…そんなことねーよ。なっ、鷹野っ。

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さらりと悪びれずに言い放った勝生に、ちょっぴりドギマギしてしまう。
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『眞白想い』は俺にとってはお気に入りのフレーズだけど、やっぱり、鷹野にしてみれば心外だと思うから。
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この間の喧嘩トラブルの際にも勝生から聞いたこのフレーズを、あのときのようにストレートに嬉しいと思う前に、今回は遠慮に比重が傾いた。
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