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鷹野は今、実家から離れて一人暮らしをしているらしく、
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そのマンションまでは、晴蘭学園の最寄り駅から電車で30分ほど揺られた後、着駅から徒歩10分程度。
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瀬名 眞白
(思ってたよりも遠い…)

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ぼんやりとそんなことを思いながら、地図アプリを頼りに進む勝生にトコトコとついて行く。
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武藤 勝生――…でさ、めっちゃ笑ってさ。
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瀬名 眞白
そういうの、確かにウケるわ。

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たわいのない話に軽く相槌を打ちながら、周りの風景を見渡した。
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それにしても、今は夏真っ只中。
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建物がところどころ蜃気楼で揺れている。
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瀬名 眞白
(夏だから仕方ねーけど…、マジで暑いの嫌い)

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瀬名 眞白
あっついな……マジで。

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うだるような暑さに愚痴をこぼしてしまいながら腕時計に目を遣ると、13時過ぎ。
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昼間のこの時間帯は、ほとんどバイトでコンビニの涼しい店内にいるから、真夏のこの灼熱のような暑さをすっかり忘れていた。
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瀬名 眞白
勝生おまえ…この暑さ、大丈夫か?

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武藤 勝生僕は意外と平気。
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武藤 勝生おばあちゃんの駄菓子屋の手伝いで、徐々に体が暑さに慣れてってるから。
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瀬名 眞白
あー…駄菓子屋って、エアコンもガンガン入ってるわけじゃねーもんな。

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瀬名 眞白
開放的に入口も開けてあるし。

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武藤 勝生うん。
…眞白は大丈夫? -
武藤 勝生暑いの超苦手だから、ヤバイんじゃない?
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瀬名 眞白
まあ…。

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瀬名 眞白
おまえみたいに「平気」なんて言葉は、口が裂けても言えねーわ。

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苦笑交じりに肩をすくめた。
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鷹野の家に行くとかじゃなかったら、絶対にこの時間帯に外には出ないだろうと思う。
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武藤 勝生暑がりなのもあるけど、眞白は普段、涼しいところにいることが多いから余計だよね。
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瀬名 眞白
…だな。
今はバイトも詰まってるし、休みの日はほとんど家で寝てるからな。
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今回、鷹野の家に行くことになった理由は、勝生のオタク熱が炸裂した結果で。
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『風〇谷のナ〇シカ』が大好きな勝生は、原作漫画を持っている鷹野とその話で相当盛り上がったそうで、それを読みたがった勝生に貸してくれることになったらしい。
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『ナ〇シカ』はずいぶん前の作品で、俺も勝生から勧められて一緒にDVDを観たことがあるし好きな作品だが、
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勝生とその話になるとすごく長くなるから、いつもはできるだけ『ナ〇シカ』に関しての話題を振らないようにしている…というのは内緒の話。
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でも、たまたま部活の用事で職員室に寄った勝生のおかげで、長い夏休みの間に自然な成り行きで鷹野に会えることになったから、
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今回ばかりはマジで感謝しかない。
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瀬名 眞白
(…それにしても、)

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瀬名 眞白
暑い…。暑すぎる。

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武藤 勝生あそこのコンビニ寄って、なんか買って行こう。
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瀬名 眞白
…だな。

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瀬名 眞白
今飲む飲み物もいるわ。このままだとひからびる。

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コンビニの自動ドアが、砂漠の中のオアシスのように見えた。
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︙
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鷹野 光星よく来たな、二人とも。
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鷹野 光星暑かっただろう…、
さ、上がって。 -
武藤 勝生おじゃましまーす!
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瀬名 眞白
…、

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ようやく鷹野の家に辿り着き、大好きな鷹野を目の前にした瞬間、脳内の思考が停止する。
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久しぶりに会えて嬉しすぎてバグったのか、『おじゃまします』と言いたいのにうまく口が動かない。
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鷹野 光星…瀬名?
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瀬名 眞白
――あ…えっと…、

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瀬名 眞白
おじゃま、します…

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瀬名 眞白
(あれ…なんだ、これ…)

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なんだか、妙にクラクラする。
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重力が体を圧し潰してくるように、すごく怠い。
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鷹野 光星…大丈夫か?
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瀬名 眞白
…、

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瀬名 眞白
(鷹野……会えてめっちゃ嬉しいけど…、)

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鷹野 光星瀬名?
なんだか様子がおかしくないか? -
瀬名 眞白
…っ、……、

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瀬名 眞白
(声が…、うまく出ねー…)

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瀬名 眞白
(…やっぱ俺、ちょっと変かも…)

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武藤 勝生眞白?大丈夫?
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瀬名 眞白
…、ッ…―――

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いきなり視界が真っ白になったかと思うと、立っていることにも耐えきれなくなって膝から崩れ落ちた。
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鷹野 光星瀬名っ?!
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武藤 勝生眞白!!
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瀬名 眞白
(せっかく…鷹野に会えたのに…)

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なんだよ、俺……
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こんなの、めっちゃかっこ悪いじゃん…。
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瀬名 眞白
―――

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鷹野と勝生が呼びかけてくる声を遠くの方で聞き取りながらも、俺はあっけなくシャットダウンしてしまった。
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︙
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