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たとえ、どんなに頑張って結果を残したとしても、子どもの出来を当たり前だとしか思わない人。
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情愛の欠片もないような父親の思い通りに生きることがしんどかったから。
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作り込まれた枠内で、敷かれたレールを走ることに嫌気がさしたから。
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…父親の冷たい人間性に、強い憤りと嫌悪を抱いたから。
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だから、中学生になってすぐにようやく殻をぶち破って、荒れることしか思いつかなかった。
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父親に、息子としての俺を諦めてもらうために。
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まさかの非行に走った息子というのは、父親にとっては大きな誤算だったと思う。
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そんな俺に向けて、父親は『裏切り者』だと吐き捨てたうえに、そのレッテルを貼った。
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瀬名 眞白
俺が荒れた理由なんか一つも聞かずに、「おまえは裏切り者だ」って一刀両断されたよ。

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瀬名 眞白
ま、予想通りの反応だったけど。

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鷹野 光星「裏切り者」って、そんな…。
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瀬名 眞白
自分の子どものことを裏切り者扱いする親なんて、そういねーよな。

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瀬名 眞白
でも、養ってる親の言うことを聞いて思い通りに生きようとしない俺は、裏切者らしいから。

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鷹野 光星…、
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瀬名 眞白
とにかく利己主義なんだよ、父親は。

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瀬名 眞白
ゾッとするくらい、凍てついた人。

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瀬名 眞白
だから、鷹野が言ってくれた『俺の正義』なんて、あの人に分かるわけがねー。

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鷹野 光星…―――
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瀬名 眞白
…それでも結局は、学費とかは何も言わずに負担してくれてるわけだし、

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瀬名 眞白
めっちゃ悔しいけど、『感謝』の二文字は頭の隅っこにある…、

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瀬名 眞白
――とか言う俺、えらい?

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前向きな考えを付け足したら、次第に暗色に染まった鷹野の表情が少しでも和らぐと思ったのに。
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鷹野はどこか無理するように微笑みながら頷くだけで、小さく唇を噛んでいた。
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瀬名 眞白
俺、とにかくあの家を出たくてさ。

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瀬名 眞白
俺には兄貴がいるから、悪いけど全部丸投げしようって決めたんだ。兄貴は俺よりもずっと父親に従順だから。

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鷹野 光星……
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瀬名 眞白
晴蘭は、俺の素性を知ってる勝生が「一緒に受験しよう」って誘ってくれてさ。

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瀬名 眞白
俺の家から晴蘭は結構離れてるから、家を出る口実にもなるんじゃねーかって。

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瀬名 眞白
レベルの高い学校だし、父親も文句は言えねーだろうって。

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鷹野 光星…そうか…。
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瀬名 眞白
晴蘭に受かってすぐ、今は従姉妹の家で住まわせてもらってるけど、超快適。

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瀬名 眞白
普通の家っつーか、
特に、普通は父親の基準ってこうなんだなって思ったよ。
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瀬名 眞白
もうできるだけ実家には戻りたくねーわ。
少なくとも、父親がいる間は。
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こんな風に毒吐きながらも、俺は今、別に病んでるわけじゃない。
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たまたま父親が高飛車で傲慢だという境遇に生まれただけ。
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俺は俺だし、考え方や生き方を変えるつもりはない。
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だから、これまでのいきさつをほんの少し、割り切って話しただけだったけど。
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鷹野 光星……
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鷹野はやっぱり切ない顔をしたままで、静かに視線を伏せた。
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瀬名 眞白
(なんか…、話してマズかったかな…?)

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鷹野 光星俺はほとんど何も…、
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鷹野 光星瀬名のことを知らなかったんだな…。
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瀬名 眞白
いや、そんなの話してねーんだから当たり前じゃん。

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鷹野 光星……
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瀬名 眞白
どうしたんだよ?暗い顔して。

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鷹野 光星…やっぱり、おまえはすごい。
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鷹野 光星どうやったら、そんなに強く…優しく生きられるんだ?
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瀬名 眞白
な、なに言ってんだよ、そんなことねーって。

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鷹野 光星……
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瀬名 眞白
…鷹野?

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鷹野 光星……『瀬名 眞白』という人間がこの世に誕生して、生き続けてくれて…、
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鷹野 光星心から、本当に嬉しく思うよ。
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瀬名 眞白
…―――

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視線を戻した鷹野の目元がいつになく精悍に引き締まっていて、ドキッとする。
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その表情がかっこよすぎて、意識が全部、絡め取られた感じで。
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一瞬、どう反応すればいいのか分からなくなった。
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