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瀬名 眞白
…ありがとう。

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今まで、『ありがとう』を何人くらいに言ったかな…。
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ぼんやりと、そんなことを思う。
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その『ありがとう』の後、
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瀬名 眞白
でも、気持ちには応えられない。

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向けられた想いを毅然と振り切ることが残酷に思えて、毎回複雑な気持ちだ。
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もしもこの子が目の前で泣いたとしたら、もっと別の気の利いた言葉を吐き出せたりするか…?
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瀬名 眞白
(……、いや、)

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そんな中途半端な優しさ、普通いらねーか…。
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*……分かりました…
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*…瀬名先輩はやっぱり…好きな人とかって、いるんですか…?
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瀬名 眞白
……、

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*瀬名先輩…?
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瀬名 眞白
うん、いる。

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*…ですよね。
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*あの、私…片想いでもいいから、
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*これからも先輩のこと、ずっと好きでいてもいいですか…?
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瀬名 眞白
……

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実らない恋。
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片想いのままずっと好きでいるなんて……絶対にしんどい。
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瀬名 眞白
(俺と同じだな…)

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*ダメ、ですか…?
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それでもたぶん、この子もきっと、ずっと好きでいようって思うんだろう。
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可能性ゼロで、目の前の世界が灰色のままだったとしても。
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瀬名 眞白
あんたが辛くねーなら。

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*辛くないです、
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*ありがとうございます…!
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瀬名 眞白
(失恋したのに「ありがとう」とか…健気でいい子だな)

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瀬名 眞白
(でも、いい子だけど…)

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俺の『好き』は、この子にはあげられない。
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瀬名 眞白
…それじゃ、俺、行くな。

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*…あっ、
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*先輩、あのっ!
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瀬名 眞白
ん?どうした?

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*瀬名先輩って、やっぱり…
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*「ごめん」って言わないんですね。
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瀬名 眞白
…え?

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*先輩のことを好きだっていう気持ちを、「ありがとう」って…
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*振られて「ごめん」って言われるより、ずっと救われた気持ちになりました。
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そう言い残して、その子は俺に背を向けて小走りに駆けて行く。
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その小さな背を見送るように、ポニーテールの毛先が揺れるのをぼんやりと眺めながら、静かに溜め息をついた。
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瀬名 眞白
(…だって、「ごめん」はおかしいだろ)

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自分のことを想ってくれる気持ちには応えられなくても、『好き』の想いは嬉しいから。
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ヘイトなんかよりずっとあったかいから。
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…それに。
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瀬名 眞白
俺も…、

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瀬名 眞白
振られたとしても、なんつーか…「ごめん」って言葉、言われたくねーし…。

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ひとりごちて、青い空を見上げる。
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でも、言われたくないけど、俺の恋は一筋縄ではいかないから、
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『ごめん』の言葉はきっと免れない。
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瀬名 眞白
(うお、刺さるわ…)

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瀬名 眞白
(想像しただけでエグい)

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俺の『好き』が伝わって、『二人の時間』を刻むことができれば…。
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瀬名 眞白
あー…

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瀬名 眞白
どんなテスト問題よりも難関だわ…。

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可能性は極めて低い。
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きっとそんな未来は、パラレルワールドにしか存在しない。
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