名前変換無しの夢小説
カラン、扉に付けた来客を知らせるベルが鳴りマニュアル通りの挨拶をする。
「いらっしゃいま…………せ…………」
扉に目を向ければ、余りにも目を疑うモノを見てしまい挨拶が上手く出来なかった。アルバイトの同僚である梓さんを横目で見れば、こっちとあっちを視線が行き来してる。分かる、自分もそっち側だったら同じ事をしていただろう。
毛利先生や蘭さんを待つ為に来店しているコナン君の視線も何回も往復している。段々と視線が驚愕から疑惑へと変わり、探るようなものに変わっていく。分かる、さっきも思ったが自分がそっち側だったら同じ事をしていた。
でも残念ながら全く心当たりが無いし、見覚えも無いんだ。いや、ちょっと前にバーボンの方でちょっとしたお仕事で仲良くした女性から心当たり有るような相談をされたが、身に覚えがほんのちょっぴり有る程度で確証は一切無いものだったし…………。それが事実だったら目の前に有る景色は犯罪になる訳で…………。
「ご注文はお決まりでしょうか?」
取り敢えずアルバイト店員らしく俺に似た幼児を抱いた客の接客をするとしようか。情報収集は基本だからな! 本当に何時の子だ、この子!!!
□□□□□
は? 意味がわからない。
何だって?
めっちゃ かわいいさにわさんと なかよくなったから しかも こどもできた だから わかれる?????
これ何語かな?
しかも連絡取ろうにも、その可愛いらしい審神者さんと審神者さんの男士が守ってるのか一切出来ないし霊力が追えない。
は????
子供出来たってお前それ浮気してたんだろ! ふっざけんなよ!!
私の中にも、もうすぐ2ヶ月の、子供、いるんです、けど????
なんか後ろから「段階踏んで筆が折れ曲がってくのこわっ」てどこぞの男士が言ってるが無視だ。怒り単語の区切りで私に力を与えてくれただけのこと。
しかし、あの浮気野郎とか本当にどうしてやろうかと思っても接触が出来なければどうしようもない。なんであんな奴に捕まったのか分からない。
「そんなん、主が優しい台詞にコロッといっただけでしょ」
「あああああ!!! 私の初期刀が正論をぶっぱしてくるっ!!! ツラッ!!!」
机を挟んで正面に座りながら新色の爪紅を塗るかしゅーが厳しい。私に優しくない。別に愚痴に同調して欲しい訳じゃ無いけど、こう、何かあるでしょ。慰めるとかさぁ!
「まあ、俺達も仲良くしてる主達見て安心してたのも悪いよね。ごめんね、主…………」
「うちの子は悪くないのおおお!!! 私が、私があんなよくある優しい台詞に落ちたのが悪いんだからあああ!!!」
チョロッて、かしゅーが言ってるけど違う。本当に悪いのは私だって知ってるんだ。だからかしゅーが私の心情を察して謝ってくれたと分かってるし、チョロい訳ではない。
仕方なかったんだよ、だって原因不明の病で本丸の維持すら不安定になってた時に代理審神者として来たあの野郎が、普通に励ましてくれたんだよ。同じ人間としての立場で、立ち位置で、不安を言い当ててくれて…………落ちても仕方ないじゃないか。
うん? よく考えたらこれ結婚詐欺の手段じゃないか。別にお金払った訳じゃ無いけど。でも同期で私より戦績が良い友達紹介したな…………え、これ戦績が良い審神者ちゃん探しに使われた結婚詐欺なんじゃ…………。
つまり私のお腹の中には、その詐欺師の子が???
「ああああああああ!!! 鬱だ!!!!」
「何処がですか」
机に突っ伏して叫べば、頭をパシり叩かれた。気分的には鬱なんだよ!!!
頭を動かして叩いた刃物を見れば、浮気されるどころか浮気させる側にしか見えない未亡人臭がするそーざだった。顔の横にコトリと湯呑みを置いて私の横に座ってさっきまで私が書いてた札の確認をしている。
これはあのクソ野郎と出会った時みたいに本丸が不安定にならないように、本丸と私の霊力循環とか色々を補強するための補助をする札。めっちゃ難しい役割もあるらしいけど、難し過ぎてわかんなかった。どんだけ理解出来てなかったかは、説明役の御神刀達が首を横に振ってたと言えば分かるだろう。
あんな事態を避けるために、家の子達が色々と案を出してくれたんだよね。めっちゃ心配かけたらしい。家の子達がこんなにも可愛いし優しい!!!
「…………あー、産まれてくる子がアレ似てたらどうしよ」
家の子達の優しさを感じれば感じるほどに、不安が大きくなる。思わずポツリと出てしまい、ヤベッとも思ったけど言い終わってたからどうしようもなかった。
アレに似てたから育てないとか、別にそんなつもりは無いけど。でも未確定な未来だからこそ分からない事が恐怖でもあり、不安。
「ばっかだよね、主って」
また机にある木目をドアップで見ようかと頭を動かそうとしたら、かしゅーの呆れた声が聞こえた。頭を上げれば、爪紅は乾いたらしく頬杖をついて私を見ている。おい、私は主だよ。ばかってなんだ、ばかって。事実でも言われたら傷付くんだからな!
「今更でしょう、コレが馬鹿なのは」
「おいこら、我主ぞ??? 主なんだよ、ね???」
コレってなんだ、コレって。しかも今更とかひどない???
「僕達が主の憂いをそのままにしてると思ってるんですか?」
「え?」
「本丸が不安定になった事に恐怖と不安を感じ、自分の力量不足とまで憂いていたからの、コレですよ」
私が書いた札を机で、トン、と揃えながら言うそーざ。
そうだ、私が珍しく泣いたんだ、ごめんって言いながらみんなの前で土下座して、力量不足な主でごめんって謝った。それから数日して、皆が探してくれた。私の為に。
つまり、これってその時と同じ状況なんだろうか。違うくない?
「主が傷ついてるから俺達にとっては同じことだよ」
「これでもあなたの為の僕達ですからね」
「そーざのデレが過剰過ぎない?」
照れ隠しに本音を言ったらさっき束ねたばっかの札で叩かれた。今のは主が悪いって? 知ってる。
「でもさ、どうしようも無くない? 堕胎はしたくないし…………」
「むしろ俺達がさせないからなっ!」
「うわあああっ!?」
バターンと良い音をたてて襖が開いて思わずビックリしてしまった。そっちを見れば、扉を開けたらしい両手を広げた鶴と、沢山の家の子達…………え、ざっと見たけど皆居るんじゃないかな、これ。
「第58回本丸会議の結果だが」
「待って! 主そんな会議知らない!!!」
「主抜きの会議だから当たり前だ、それで結果なんだが」
おい、 主の扱い雑すぎない???
「改変はさすがに不味いのは俺達も分かってるからな、議論が紛糾した」
「私、審神者、改変、駄目!!!」
めっちゃ怖い案出たってことやん!!! 分かってる分かってるって鬱陶しそうに手を振ってるけど、大丈夫だったら勝手にやってただろ、これ。
「それでだな、加護を付けることにした」
「え、それ前から付ける言ってたよね」
ボケた? と言う目で見たら、今度は鶴に頭を叩かれた。仕方ないじゃん、加護付けるって前から言ってたのに結果が加護付けるって言われたら。
「それは善意の優しい加護だな。忘れたのかい? 俺達はこの戦いの為に神格まで高められたんだ」
「知ってる、けど」
「付けるのは、神の独善的な加護さ」
口角を上げ、軽薄そうな笑みを浮かべた鶴は容姿も合間って背筋がゾクリとするほどのものだった。
私は、いったい何をされるんだろうか…………。
なーんて、めっちゃ不安になったんだけど意味無かった。
「まずは、髪だがどうする?」
「主さんは「まんばちゃんの髪の毛が日に当たってキラキラしてるの好き」って言ってたよ」
「そいつは金髪が好きってことか?」
「なら乱でも良いんじゃないか?」
「僕の髪は濃いんだよね、だから日に当たってもキラキラとまではいかない」
「よくよく考えると金髪ってありがちなのに少ないな」
「獅子王はキラキラじゃねぇのかよ」
「サラサラ感が足りんじゃろ」
「じゃあ、髪の加護は決定だな」
「次はどうする?」
「瞳はどうだ」
「偽物くんが加護を与えて! 俺が与えないのは間違ってる!!!!」
「「「…………」」」
「…………じゃあ、瞳は(めんどくさいんで)山姥切さんで」
「今面倒臭そうと思っただろ!」
「はい、次は!」
「髪と目が決まりゃいいんじゃねぇか?」
「あ、僕から案があるよ」
「それじゃあ、燭台切」
「実は、伽羅ちゃんの褐色肌っていいなあって思うんだよね」
「…………おい」
「でも濃すぎじゃねぇか?」
「だがアレとはかけ離れるのは確かだな」
「じゃあ、肌の色は大倶利伽羅(薄め)で」
「そんなら骨格は? 確実にかけ離れるばい」
「鶴ではないか? アレはどちらかと言えば太刀と変わらぬ体格であった」
「おい、俺も太刀なんだが」
「それなら父でもよかろう?」
「江雪兄さまもいけるのでは?」
「柔らかな顔立ちが余計な苦労も少なかろう」
「つるまるいがいはかおだちはやさしくありませんから」
「じゃあ、鶴丸が枠組みね」
「他は普通の加護で」
「「「意義なーし!」」」
うん、確かに加護で外見を変えるのは独善的な加護だね。私としては有難いけど。確かに出来るよね、加護と言うか目印としても外見変えたりするの。
あと、からくんが怒ってるよ。薄めとかめっちゃ怒ってるけど大丈夫?? あ、みっちゃん殴られたから大丈夫じゃないね。
ほんばちゃんはまんばちゃんに対抗しすぎ。これはぜったい「偽物くんの色があるのに俺の色が無いなんてふざけている」って奴だよね。まあ、ほんばちゃんの瞳は綺麗だし構わないけど。
「それじゃあ、担当決まったから今から加護付けするから」
「あ、はい」
黒髪で私と同じでアレと同じ、さらに瞳は赤で人間の子としては珍しい色合いになるため加護不参加だったかしゅーの台詞に思わず返事したけど、金髪碧眼に褐色(薄め)で外見鶴丸って、外国人じゃん。めっちゃ日本人の血なのに外国人になっちゃうじゃん。審神者業界なら大丈夫だろうけど、現世だと生き辛そうだなあ。
その後、一年経たずに産まれた我が子は加護の結果通りになりました。肌の色は本当にちょっと肌色が濃いかなって感じ。からくんよりは薄いのは確実。赤ん坊ながら将来が約束されたような可愛さだし、やべぇな。
皆の加護が有るからか、不浄な物も近寄れない感じだし、ものよしくんが幸運を願ったからか転ぶ箇所も危なくない場所。
いやあ、愛されてるなあ。私じゃなくて我が子だけど。いや、私も愛されてるはず。私の為の加護だったしね。
しかし腹を痛めて産んだ子だからか、アレに似ても似つかないからか、両方なのかも知れないけど可愛いな。あの時の不安が嘘のように愛しさしか無い。
今度の現世休暇はこの子連れて散歩しよう。現世にも触れさせないと体が丈夫にならないらしいし。免疫関係とか色々あるらしい。難しいことはわからん!
で、その現世休暇に来たんだけど。なんだ、この状況?
「すみません、もしかしてその子…………僕の子じゃありませんか?」
入った喫茶店の店員に小さな声で聞かれた。え、この子があなたの子????
「100%他人ですけど!?」
あり得ないから叫んでしまった。アレは店員さんみたいにイケメンじゃなかったぞ!!!
「「「えっ!?」」」
え、何で聞いてきた店員さんと女性店員さんと眼鏡の少年に驚かれるんだ。むしろよく聞こえてたな女性店員さんと少年。
「だって、ほら…………」
「違いますけど」
しつこい店員さんに否定の言葉しか返せないぞ!
「…………やっぱり、あれから聞いた通り誘拐か」
おい、店員さんから不穏な言葉聞こえたんだけど。誘拐じゃねぇし、私が産んだ子だよ!!!
お前の子じゃねぇんだよ! 勘違い甚だしいなっ!!!
▼捨てられ審神者さん
彼氏に二股かけられ捨てられた。子供もいた。感覚で行動する審神者なので頭をあまり使わない。でも家の子達を信頼してるので家の子達が言ったことはやる。意味は理解してない場合がある。
ちなみに原因不明の病の原因は未だに不明。
感覚で行動するから店員さんが我が子に似てるのに気付いてない。
▼捨てられ審神者さんの刀剣男士達
いつも明るく騒がしい審神者が凹むのが苦手。馬鹿やってるのが楽しい。
主はちゃんと主と思ってるが日常は割りと扱いが雑。あの野郎を追えなくて内心苛立ってる。
主へは親愛しかない。恋愛は無い。末の妹とか娘とか思ってる。
▼店員さん(29歳)
トリプルフェイス。バボさんで関係あった人からあなたとの子が誘拐されたとか言われた。避妊はちゃんとしてるから嘘乙とか思ってた。
あれ、めっちゃそっくりな赤ちゃん来たんだけど。しかもこの女否定するぞ、誘拐まじだったか! となってる。似てるだけで赤の他人である。
▼女性店員さん
え、子供!? まさか元カノで安室さんに認知させに来たの!??
えっ! 他人!? そんなにそっくりで!!??
混乱しかない。
▼迷宮なしの名探偵
めっちゃ安室さんにそっくりな赤ちゃん連れてるんだけど、他人? 無理があるだろ…………誘拐!!? まさか、安室さんの所属がバレて人質に…………オレが助けてやらなきゃ…………。安心してください、勘違いです。
▼あの野郎
詐欺師。めっちゃ優良物件審神者を探し歩いてた。原因不明の病はこの野郎が本丸と審神者の霊力の繋がりに干渉した為。
子供出来たと知っているが、将来何かあった時の為に何も言わなかった。
▼バボさんとこ来た女
嘘八百並べたら本当に丁度の子供が安室さんの所に来た。子供は誘拐されてないし、何より産んですらいない。
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