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名前変換無しの夢小説




!主人公とオリキャラに名前あり
!話の内容的に主人公に対して優しくない場面があります
!主人公が負け犬思考なので考えてることが少し暗いです



 

「いらっしゃいませ」

 カランと来店を知らせるベルが鳴ると、それに気付いた店員さんが挨拶をしてくれる。街角にある小さな喫茶店だったけれど、今の挨拶をしてくれた店員さんにより商売繁盛をしているらしく、店内には沢山の女性がいる。
 その店内さんは優しいと言うよりは明るい笑顔で、声も明るく言葉選びも仕草もとても女性受けが良くて、だからこそ女性に好かれてこの現状なのだろう。アルバイトとは言っていたけれど、会える日よりは会えない日が多い。それがまた、会えたと言う特別感も有って女性人気に拍車をかけてるように思うんですよ。
 別に誰かを特別扱いする訳でもなし、ただ平等に優しい。でもその優しさが日常では滅多に無いように優しいから女性は彼に会いたくなるのだ。
 早い話が恋である。
 無謀だな。と、他人事のように彼女達を思いながら盛大なブーメランが私の心にスマッシュヒット。キャッチなんて出来なかった。本当に無謀なのはガチ恋している私である。きっと彼には認識すらされてないような人間なのに。

「また来ちゃいましたよ~、安室さんいつもの2つね!」
「今日も一愛(ひとえ)さんは元気ですね。注文承りましたから空いてる席へどうぞ」
「ふーたーばー、こっちこっち。早く座んなさいよー」

 認識されないと言うのは、私の幼なじみであり友達の一愛がいるから。
 一愛は明るく元気で優しくて、常に誰かの為に行動が出来る二次元ヒロインのような子で誰かに好かれる子。だからか彼、安室さんにも名前を覚えて貰えるんだろう。私には無理だ。
 さっさと席を取って笑顔でこっちと呼ぶ一愛が騒がしくしてしまったので謝罪も込め会釈し一愛の元へ向かう。

「ごゆっくりどうぞ」

 誰にでも言っている言葉と笑顔だけれど、私に向けられたと言うだけで舞い上がり、自分の安さと滑稽さに笑ってしまいそうだ。
 何より自分から行動するつもりが無いのに、安室さんと会話をする一愛が羨ましくて憎くて、嫉妬しまう自分の醜さが一番汚くて安室さんに会いに来たと言うのに会いたくなかったと思う矛盾が気持ち悪くて仕方ない。

「安室さん居て良かったよねー、ハムサンド本当に美味しいもん。安室さんが居るときは絶対ハムサンドは外せない!」
「私は榎本さんが作る軽食も好きだよ」
「あずちゃんのはあずちゃんの良さがあるもんね!」

 キャラキャラと明るく、それでも周りが不快にならないような声量に自然となるのは天然愛されの一愛ならではだとは思う。普通なら段々大きくなってしまうのに今まででそんな事は無かった。
 本当は天然愛されなんかじゃなくて一愛の人柄や性格とか様々な要因で愛されてるのは知っている。ただそこに居るだけとか、一目みただけで愛される訳じゃ無いのも知っている。ただの僻みだ。
 私はそんな気持ちを抱く自分が一愛の側にいるのは駄目なんじゃないかと思いながら幼なじみで友達の側を離れる勇気も無い。つまり私は一愛に比べて意気地無しなんだ。
 自分に対しての吐き気を我慢しながらとりとめの無い話をする一愛へ笑顔を向けながら相槌するだけの仕事をこなす。

「お待たせしました。ご注文のハムサンド2つにアイスコーヒーです」
「わぁ、待ってました!今日も美味しそうですね」
「そう言って頂けると作りがいが有りますね」
「じゃあこれからも美味しいハムサンドの為に言います」

 ただの世間話をしている私達に届けられたのはハムサンドにコーヒー。これがいつもの。一愛の言った通りに美味しそう。
 目の前に置かれたそれに小さく美味しそうと、安室さんに届かないぐらいの声量で言うだけで精一杯で、すぐに発言した一愛の声にかき消されるのもいつものこと。

「お二人はいつも一緒ですがどんなご関係ですか?」
「もー、安室さん探偵の知りたがりが出てるぞ」
「すいません」
「謝ることじゃないし、隠すことでも無いからいいよ。私達はねぇ、幼なじみで親友なんだ!ちっさい頃からいつも一緒で好みも一緒で双子みたいだねって良く言われるの」
「ホー、そうなんですか。仲良しなんですね」
「いいでしょー」

 二人してニコニコと会話をするのにお腹が熱を持ったように熱くなる。さらには肺の辺りが苦しい。ゆっくりと呼吸を乱さないようにすれば、二つの異変はゆるゆると去っていく。こんなことには慣れた。
 確かに一愛の言った通り、双子のようだとよく言われた。それは本当に初期の頃で一愛は活発で私は陰気。それが顕著になりだしてから言われなくなった。好みだってコーヒーは確かに好きだけど、私が飲めるのはアメリカンコーヒーで一愛がいつもので頼むコーヒーはシロップにミルク、砂糖を入れても苦いと思ってしまうぐらい本当は甘党。
 でも、そうだね。好みが一緒なのはあるね。
 だって、一愛も安室さんが好きだものね。


 ズキリ


 当然の事を思えばさっきとは比較になら無い程に肺の辺りが痛む。でも一回だけで、昔から一愛が好いた人に自分が好かれた事が無い事を思い出せば体の内が冷えるような重みを伴ったが痛みが穏やかになる。
 そう、一愛は昔からそうだった。
 何でも手にしていた。誰からも好かれていた。私がいくら頑張っても皆一愛へと行ってしまった。私に寄ってきた人と仲良くしようと頑張っても始めから一愛が目当てか、最終的には一愛へと向かうか。私はぽつりと居るだけで、一愛が居るからみんな私に声をかけてくれるだけ。
 二葉にある漢字のように、私はいつでも二番手だった。
 一番は一愛。二番は二葉。これは小さな頃に大人も子供も私に隠れて言っていた。
 それで頑張って頑張って一愛みたいになろうとした純粋な私は疲れてしまって、二番手にしかなれない私は無理をせずに自分らしく、ただ嫌われはしないように笑顔でいるだけの負け犬になったのだ。

「二葉もやっぱり全入れだよね」
「ブラックも美味しいけど、パンには甘い方が好きだから」
「私も私も。やっぱり好み一緒だね!」

 嘘、ブラックなんて飲めないし本当ならカフェオレやココアが好き。ジュースでも良い。無邪気に笑う一愛は双子と言う肩書きがお気に入りらしく、一緒の事をすれば喜ぶからこうしてるだけ。
 どう足掻いても負け犬な私は、一人になるのが嫌で一愛とは自分から離れられないキングオブルーザーとは私の事だ。惨めだなぁ。変われない自分が本当に惨め。努力なんて小さな頃に無駄だと教えられた私は10年以上の負け犬なのだ。

「…………美味しい」

 ぱくりと食べたハムサンドはやっぱり美味しくて、一愛と安室さんが付き合ったりしたらきっとこのハムサンドを食べに私は一人で来れないだろうし、一愛と一緒にいて幸せそうにする安室さんを見たら泣いてしまうだろう。でも一愛に誘われたら自分から傷付きに行ってしまうんだろう。外で笑って内では泣いて。物語なら綺麗なものでも負け犬な私ではただの惨めな寒々しいもの。
 でも本当にハムサンド美味しい。ぱくり。

「ありがとうございます。本当に気に入って下さってるんですね」

 美味しい美味しいと言いながら食べている一愛に嬉しそうな安室さんの声。
 笑顔で「勿論!」と返す一愛に対して安室さんがどんな表情をしてるのか見たくなくて食事に集中することにした。
 あれ、可笑しいな。さっきまであんなに美味しかったハムサンドの味が薄くなったような気がする。




 あれから食事も終わり少し休憩してから迷惑にならないように帰路へとついた。ついさっきまで隣に居た一愛の気配を感じなくなった、それだけで肺の隅々まで空気が行き渡ったような、重荷を全て取り払ったような身軽さが自分を支配する。
 離れるのが怖いくせに一緒に居るのが苦痛。矛盾しか無い。
 少しだけ凝った肩を解すように首を左右に傾げれば伸ばした髪も左右に揺れる。その髪の毛にさっきまで軽かった体が無理矢理に足を地に付けられたように重くなる。
 私は一愛のようになれない。それは小さな頃から知っていた。
 だから私は少しだけ毛先に癖が出る一愛と違いストレートな髪を伸ばした。私と一愛は違うと言うように。
 でもそれは大人になった一愛がヘアアイロンでストレートにすれば、ただのそっくりになったし、伸ばしてようが私が一愛に勝つこともなくいつでも付属だった。いまだに長いのはお兄ちゃんが似合ってると言ってくれた。それだけの理由。
 髪の毛は私が一愛とは違う、双子じゃないと言う叫びだったのに、誰も気付かなかった。お兄ちゃんは一愛を知らないからきっと一愛を見たら変わるだらうと思って会わせたことはない。
 そう言えば私が髪の毛を伸ばしだしてからか、一愛が双子を気にし出したの。ヘアアイロンをかけてストレートにしたのもそうだったけど、私はインドアで外出しても本屋や図書館、水族館などの静かな場所が好きなのを知っていながら外出させようとしたり、一緒にショッピングしたり、私があまり得意な場所には行かなかったし、行く度にお揃いを買っていた。
 きっと私の陰気を気にしてだろう。一愛の善意が私には苦しかった。
 きっと一人っ子の一愛は兄弟に憧れていたんだろう。だから双子と言われた私に良くしてくれた。
 その善意に対して私が一愛に対する思いは暗くて黒くてあまりにも惨めで、罪悪感からか化粧をする歳になってからは、私は一愛が喜ぶように一愛と似てない垂れ目を少しだけ上がって見えるような化粧にしてみたり、一愛が好きそうな髪形にしてみたり。自分から劣化一愛へと変身していた。
 負け犬根性極まっている。
 さらに重くなった体を動かそうとするとスマホからたまにしか鳴らない個人設定の着信音。確認すればメールで、内容は久々に家に帰れてるし時間があると言うもので、さっきまで重かった足取りは軽くなり急いで残りの道を駆け足で進んでいく私はなんてチョロい女だろうか。







「お兄ちゃんお帰りなさいっ!」
「そんなに急がなくても俺は逃げやしないぞ」

 鍵を使い玄関を開ければ呆れたように言われた。仕方ないじゃないか、私にとってはお兄ちゃんは特別で私を私として認識してくれる数少ないどころか唯一と言って良い存在なんだから。
 しかもお兄ちゃんは仕事がいそがしくてめったに会えなくなってしまった。仕方ないとは思っているんだから、久しぶり会えたらめっちゃ喜んでしまうぐらいは許容して下さい。

「ご飯はどうする?それともお風呂の準備しようか?洗濯物とか出してる?あ、明日も仕事ならお弁当作ろうか?」
「頼むから落ち着いてくれ」
「はーい」

 嬉しくて矢継ぎ早に尋ねてしまった。反省。
 お兄ちゃんは私が毎回こうして矢継ぎ早に訪ねるから私の質問にきちんと答えてくれる。ご飯はいらない、着替えを取りに来ただけらしい。残念。

「あ、隈が酷いけどコンシーラーでも塗って隠す?」
「ああ、頼む」

 着替えを取りに帰っただけと言ってるけど少しだけゆっくり出来るらしくコンシーラーの許可を取れた。
 お兄ちゃんは忙しいエリートさんらしく家に帰れる日は少なくて、帰ったとしても深夜だったりして私と顔を会わせれる帰宅は少ない。遅くに帰って来て早くに出るのがデフォルトだ。
 そんな頑張ってるお兄ちゃんの目にはしっかりとした隈があり、それは弱味にもなるし侮られるらしくいつも隠している。優しいお兄ちゃんは時間が少しでも有れば私と少しでも触れ合えるようにってコンシーラーを私に塗らせてくれる。
 私はそんなにお兄ちゃんの優しさに甘えて椅子に座っているお兄ちゃんの前に立ちコンシーラーを肌の色に合うように調整しながら丁寧に塗っていく。

「あのね、お兄ちゃん。私ね」
「うん」
「また好きな人が出来たんだ」
「…………そうか」
「一愛も同じ人が好きでね」

 隈なんて塗る範囲なんて限られている。既に塗り終わっているのにお兄ちゃんは私の話が終わるまでは付き合ってくれる。そんな風に優しいから私は甘えてゆっくりとお兄ちゃんの弱味を隠すために購入した化粧品をゆっくりとしまう。それを分かってるのに怒らないお兄ちゃんは優しすぎる。
 昔から話していたから一愛の名前を出せば眉間に皺が刻まれる。私はお兄ちゃんが一愛に会ったことが無いのに一愛の印象が悪いのは私のせいで、一愛より私を心配してくれるお兄ちゃんに安心する自分に嫌気がさす。
 そんな醜い私をお兄ちゃんに知られたくなくて化粧品を直ぐに片付けてしまった。

「最近よく行く喫茶店の店員さんで」
「ああ」
「外国の血が入ってるのかな、褐色で碧眼の人で」
「うん?」
「安室さんって言う人なの」
「ゲホッ、ゴホゴホッ」
「え、お兄ちゃん大丈夫?!」

 口を押さえて顔を反らしたお兄ちゃんは咳き込みながら大丈夫と言う。
 いや、大丈夫じゃないよね。凄く咳き込んだよね?
 そんな私の心配をよそにもう出かけるから帰りなさいって言われてしまい、お兄ちゃんの邪魔をするつもりは無い私は心配だけれども玄関を開けて一愛とは違う幼なじみの歳の離れたお兄ちゃんの家から出るしか無かった。
 玄関から出れば少しだけ汚れた表札が気になり鞄から出したティッシュで擦れば風見の字が綺麗に見える。それに満足したので私は隣の自宅へと帰るのだ。
















「今からお見合いをすることになった」
「お兄ちゃんが?」

 珍しくお兄ちゃんが休日らしく一日一緒にのんびり過ごすように風見家で読書をしていたら少しだけ深刻そうだけど、それよりも嬉しそうにしているお兄ちゃんの言葉に驚いた。
 お見合い……お兄ちゃんがお見合いしたらこんな風にのんびりと一緒に過ごすことが出来なくなるんだろうな。

「いや、俺ではなくお前のだ」
「ん?」
「俺の上司だが俺より年下だから安心すると良い」
「ちょっと待って!私この間好きな人が居るって言ったよ!?」

 あまりにも酷い裏切りを見た。お兄ちゃんが私を裏切った!

「だが、お前は諦めていただろう。それなら見合いでも良い、お前が幸せになれる道を歩んで欲しいんだ」
「うっ…………」

 私の怒りを理解しているけど私の諦めをもっと理解していたのはお兄ちゃんだった。多分お兄ちゃんは今まで諦めていた私に苛立ちだって感じていただらう。
 それでも私を突き放さなかったのはお兄ちゃんの優しさでしかない。
 もう良いのかな。レールに乗っかって。私を見てくれる人を探さなくて。一愛より私を見て欲しいって夢を諦めて妥協したっていいよね。

「それで、お見合いってどこでするの?」
「お相手があまり目立てない人だからここでする」
「…………それってお見合いなのかな?」
「一般的な物ではないが、相手と顔を会わせるのがお見合いだから良いんじゃないか?」
「そっか」





「はじめまして、降谷零と言います」
「は、はじめまして…………」

 お兄ちゃん、どう言うことか説明して下さい。確かに好きな人がいて、お見合いだから恋心を諦めたのにどう言うことだろう。それにお兄ちゃんの上司って事は私なんかより良い縁談だって望めるはずだし。
 ああ、そうか。私とお見合いしてそのまま婚約するとなれば一愛とも会える可能性が消えないし、会ってたとしても可笑しくないからか。つまり私とのお見合いは一愛に会えると言うメリットが有る。これは他の縁談では用意出来ない。
 なんだ、結局はそうなのか。

「二葉、唯一(ゆい)と言います」

 私を見てほしくて、自分が一番らしく見える格好をした。髪は結ぶのが苦手で下ろしてる方が本当は楽。格好だって一愛は嫌いって言ってた清楚系と呼ばれるような白いブラウスに青のロングスカート。化粧だって無理していた一愛メイクじゃなくて垂れ目を隠していないものにした。
 でも結局は一愛。一愛にまた私は負けたのだ。
 一番じゃなくて誰かの唯一となれますようにって名前を付けられた私は、一番誰かに愛されますようにと名付けられた人には勝てないんだ。









(風見サイド)



 いまだに咳き込む公安警察官風見裕也には歳の離れた妹がいる。
 妹と言っても血縁関係は無く、幼馴染みの延長上で世話を焼いた風見になついたことから始まった擬似兄妹に過ぎない。
 それでも幼い妹は、気難しく歳が離れて話すら合わない風見ににこにこと引っ付き勉強していれば大人しく本を読んでいるだけで、休憩している時に分からない漢字を教えて欲しがるだけで全くと言って良い程に手のかからない。さらに子供の我が儘でさえも一緒にお菓子を食べたいなど、風見の休憩になる程度の感覚でそんなちっさな事を言う程度だった。
 それを無理しているのかと心配して見てみれば、何て事はない。ただ、誰かと一緒にいるだけで幸せを感じているからこその行動で、誰かの邪魔をするよりは誰かの役にたちたいと考える、一種の自己肯定が形となった子供だったのだ。

 そんな邪魔にならずになつく小さな子供なんて、甘やかすしかない。
 それは風見も変わらなかった。そして今のような関係へと落ち着いたのだ。

 勿論風見は二葉の言う一愛がどんな人間で今まで二葉とどんな関係だったかそれとなく調べて見れば、なんて事はない。風見より先に二葉と出会い短時間で二葉に自己肯定を刷り込んだ末恐ろしい子供だった。
 小さな子供が子供としての限度はあるが礼儀正しく元気であれば可愛がる。そしてそんな子供が連れてる友達が大人しければ面倒を見てあげてると誉め、その大人しい子が少しでも元気になれば、あの子のおかげ。大人しい子の必死な自己主張は誰にも気付かれずに潰され、残るのは元気で礼儀正しい友達想いな子。
 それは今でもずっと続いている。

「早く、離れさせるべきだったな」

 成長するにつれて二葉は自己主張を再びしようとしてみた。しかしそれを一愛は無邪気に潰す。双子だから、と双子を免罪符にして。
 何が双子だ、そんなのただ利用しやすいからだろう、そう何度も一愛に向かって叫びたがったが二葉は風見が一愛を知らないと思っているから行動は出来なかった。その事に対して風見は少なからず後悔をしている。叫んでいればきっと今と違っていただろう。
 あの無理している格好も、無理な化粧も、恋すら諦めてしまう自己評価の低さも。
 外出の準備を整えながら二葉の好きな人を思い浮かべる。まさかあの人とは、と思いはするものの妹の見る目が確かな事に満足したように頷く。

(降谷さんに惚れるとはさすが唯一だ)

 公安警察降谷担ではなく降谷の部下は上司の能力に絶対の自信を持っている。そして妹である二葉の事も血は繋がらないながらも大事にしている。

(それにしても唯一の自己評価の低さはどうにかならないのか)

 確かに周りは一愛と言う存在を優先するような行動が多々見受けられる。そしてそれが長年続いた事で自己評価を低くしたのだろう。
 しかし、普通はそんな事が起きる訳が無い。どこかで誰かが二葉と言う個性を潰さない限りは。

(あいつの事だから一愛が頑張ってるから愛されてるとか言うんだろうし、嫉妬とかして自分は醜いとか考えているんだろう)

 長い付き合いの風見は二葉の事を良く知っている。何よりも風見は二葉が素で接している数少ない存在だからこそ二葉の良さを知っていた。
 二葉の良さは誰かに嫉妬したとしてもそれは自分が劣っていたと相手を悪く考えないようにすること。確かにどうしても相性が悪く、嫌いだと思ってもそれを誰かに悪し様に言わない。悪く言ったとしても「少し先走りやすい」や「元気が良すぎる」なんて可愛いもので悪口にはなりえない。
 つまり二葉は相手を尊重することに長けていた。

(長けていたからこその今がある訳だが)

 二葉の個性とも言えるそれを、まるで食い物にして大きくなっていく一愛と言う存在が弱者を食い物にする犯罪者に似ていて風見は憎悪すら抱くようにいつしかなっていた。それを二葉に感じさせるつもりはなく、知らせるつもりもない。

(だが、小さな意趣返しぐらいは構わないだろう)

 二葉の言葉では一愛も安室さんとやらが好きなようだから、と潜入捜査から帰れば沢山の縁談が舞い込むだろう上司の姿を思い浮かべて、ポーカーフェイスを心掛けている口許が僅かに上がる。
 ただ風見は知り合いの優良である女性を上司にプレゼンするだけだ。それが褐色で碧眼、外国人の血が入っているかもしれない喫茶店の店員に似ていて、偶然にも二葉と一愛が好いた相手に似ていただけだ。
 それからどうなるかは風見は知らないが、上司に対して気を引く報告なんて風見には簡単な事だ。





「降谷さん、少しよろしいですか?」











※※※※※※※※※※※※※※※
▼自己評価低い負け犬
 色々あって負け犬根性が染み付いてしまった。
 自分の名前に希望を持ちながらも諦めている矛盾だらけ。
 根が良い子過ぎて内心どう思っても最後は自己嫌悪になるし、考えることも他人に比べたら優しい部類。


▼あむさんど製造者
 存在が罪。


▼天然愛され(?)
 本当に天然愛されなのかな?
 安室さんが好き。私と負け犬ちゃんは双子だよね!(ぐしゃ)


▼お兄ちゃん@頑張る
 妹には幸せになって欲しい。あるのは兄妹愛。
 プレゼン力に全てがかかってるが、大丈夫だ妹の良い所は全て知っている!


▼そっくりさん
 プレゼン力にやられた(?)
 風見家にお見合いにきたよ




 
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