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名前変換無しの夢小説




 突然だが、私の彼氏は自他共に認めるぐらいハイスペックだ。ハイスペックと言うよりは廃スペックだ。それは自身の持つ能力もあったんだろうが努力を怠らなかったからだろう。
 能力だけじゃない、顔もいい。取り敢えず顔がいい。童顔なのもあって女子高生にキャーキャー言われる程度に顔が良い三十路前だ。顔だけじゃなくて体も鍛えてるから見ただけじゃ分からないけどガッシリしている。車のフロントガラスを殴り割ったと聞いてちょっと引いたのは内緒だ。
 そんな彼氏は自称探偵だけど事件に遭遇して捜査一課から捜査協力依頼や話題に出ない時点で自称でしかない。あと本業が忙しいって言うけど今テレビでめっちゃ有名になってる毛利探偵より忙しいとか無いよね。あとネットで軽く調べてもイケメン探偵とか噂すらヒットしないとか、お前本当に探偵かよ、と言いたい。
絶対本業は探偵じゃない。もうちょい探偵のバックボーン頑張って。
 あと料理が得意。めっちゃ旨い。盛り付けも綺麗とか、こいつ何を目指してるの?と思うけど何も言わない。
 お前何が出来ないんだよ、完璧超人じゃん。老け専には受け入れられないだろうけどほぼ万人受けだろ。
 そう思ってた。全くもってダメな所と言うか弱点みたいな物は無いと思っていた。

「よし、援助交際プレイをしよう」
「は?」

 頭が可笑しかった。分かるだろう、上記の発言で頭が可笑しいと分かるだろ。何だよ援交プレイって。誰とするんだよ。

「これ着てくれますよね」
「着ないよ?」

 さっきの疑問符着いてなかった。着てくれますよね、じゃなくて、着ろ、って言ってた。副音声めっちゃ短く端的に言ってた。そして渡されたのは私の出身中学の制服。あれ、私は君に出身中学を教えた覚えは無いぞ?

「調べました」

 私はまだ何も聞いてない。

「顔に出てますよ」
「そうですか。それにしても私はあなたと同い年です」
「そうですね」
「援助交際にはならないのでは?」

 そう、私と彼氏は同い年である。出会いは喫茶店でなんやかんやあってお付き合いしているが付き合いだしてから年齢を知ったんだけど年下彼氏とちょっと気を使ってたからビックリした。
 そんな彼氏が援助交際をしたいからと私にセーラー服を渡してきた。
 確実に頭が可笑しい。

「大丈夫です。今時大人びた中学生なんて沢山居ます」
「援助交際そんなにしたいの?」
「援助交際プレイがしたいんです」

 警察に通報した方がいいかな?いや、でも彼氏の外見は下手したら高校生でも通じるから弱いかな。でも29歳自称探偵って言うと犯罪臭が格段に漂ってくる。本当に外見って大事だな。

「流れるようにスマホを操作しないで下さい、誤解ですから」
「援助交際のどこに誤解が?」

 彼氏は流れるようにスマホを奪っていったぞ。手慣れてるな、こいつ。探偵は手癖が悪くないとなれないのかな?こないだ探偵な小学生に落とした手帳を「あれれ~、これ安室さんとお揃いだ~」とか言いながら中身を流れ読みされたんだけど。探偵怖いな。
 それに援交って確実に犯罪。警察官とかやったら大問題程度には犯罪だ。しかも私に渡したもので中学生、セーラー服って言う援交したい女の子の属性が強化された。しかもスカートがミニスカじゃないのが何ともマニアック。
 え、本当に彼氏大丈夫か?もしかしてロリコンだけどカモフラージュで私と付き合ってるのかな。

「援助交際は君とやりたいんだ」
「???」

 どっかで頭打ったのかな?それとも熱かな?
 彼氏の額に手を当てたけど残念ながら熱くなかった。熱かったら良かったのに。
 ならあれは本当にパーフェクトゴリラ探偵の安室透の言葉なのか。え、本当に?

「君はほら、発育悪いから似合うと思って」
「私は女子に嫌われようとあなたの顔を殴る」

 ぎゅっと拳に力を入れれば、それに気付いた彼氏が困ったなあ、みたいな顔をする。確実にお前が悪い、私の中でギルティ。
 確かに私は発育が悪い。でも幼児体型ではないんだ。クビレもある。胸はそれなり、だからお尻には力を入れている。身長は女子中学生平均よりは少し低い程度。それなのに何故発育悪いとか言うかな?

「僕より童顔だから似合う」
「その喧嘩買った」

 本能でストレートを叩き込んだら簡単に止められた。これだからゴリラ彼氏は……。私が全く鍛えてないのもあるけど、それにしてもあっさり止められ過ぎ。
 私が童顔なのコンプレックスだって知ってるのにそれを利用して援交プレイしたいとか本当に頭可笑しい。そして何で援交したいの。やっぱり警察必須?

「取り敢えず話し合う必要があると思うんですよ、私は」
「僕もそう思います。どれだけ僕があなたと援助交際したいか」
「それは話し合わないで良くない?」
「別に僕は犯罪としての援助交際をしたいとは言ってないんです。ただあなたの化粧を落とした外見が中学生でもいけると思ったら中学生のあなたとヤりたいと思っただけなんですよ」
「頭可笑しい」
「そうですか?」

 きょとんとした顔をしてるけど言ってることが可笑しい。君はそんな直接的に言わないでオブラートに包んだと見せかけて豪速球を投げつけてくるよね。あと先に囲うようにゆるゆる手を出してなし崩しとか流されてとかだよ。あと普通のプレイしかしてないのにいきなり特殊過ぎる性癖をぶん投げられた私はどうしたら良い。
 あ、よく見たら目の下にうっすらとくまさんががおーと猛威を振るっているぞ。何でそんなに隈が出来るまで寝れない仕事が来るのかな、探偵さんよ。もうちょいちゃんと探偵設定をしっかりしよう。

「透くん」
「何ですか?」
「どれだけ寝てないの?」
「………………二時間寝たので三徹ぐらいですかね」
「その前は?」
「二徹だったような……」

 それって実質五徹じゃないかな。二時間は睡眠に入らないだろうし。
 つまりこの頭可笑しいのは睡眠不足と言うことか。良かった、彼氏はただのパーフェクトゴリラ探偵だった。これは睡眠不足でちょっと深夜テンションになっただけだったんだ。セーラー服はちょっとした事故の証拠だったんだ。

「はいはい透くん寝ましょうねぇ」
「援助交際プレイしてくれるんですか!」
「しないけど寝ましょうね」
「じゃあ童貞とビッチプレイします?」
「寝ろ!」

 根性でズルズルと寝室に引き摺って布団に押し入れて頭をよしよしすればやっぱり限界だったらしく即落ちした。
 頑張ってるもんね、起きたらまた頑張ろうね。
 あと頭可笑しくなってるのは治してくれ。








 翌朝。

「迷惑かけてすいません」

 朝までぐっすりだった彼氏は復活したらしい。そして記憶に残ってるらしく少しばかり恥ずかしそうにしてる。
 そうだよね、頭のネジが外れたどころじゃない発言してたもんな。

「睡眠不足で本音が漏れてしまったようで」
「え?」
「ですが一度言ってしまったのでこれからは本音が言えますね」
「うん?」
「今回は無理でしたが今度援助交際プレイしましょうね」
「えぇ~…………」

 彼氏の頭が戻らなかった。いや、これ戻らなかったんじゃない。元からだったんだ。


 つまり元から彼氏の頭が可笑しい。


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