フェードアウトしたい
ポケジョブの力を借りてなんとか終わった引っ越しの荷物をガサゴソと片付ける。
ほんっとに、ギリギリだった!
お母さんはほわほわして、あらあらなんて言いながらのんびりだし、お父さんはお父さんで仕事の引き継ぎとかで引っ越し手伝えないくらいに多忙だし、現在も仕事の引き継ぎが終わらなくて、もうちょいしたらこっちに来るらしい。
父の仕事の都合で引っ越しとは? 大変なのは主に私とポケジョブで来てくれたポケモン達だった。
「…………終わったー」
本当に最大限ポケジョブを使ってプライベート満載以外の荷物以外は片付けたけど、プライベートの荷物を何とか自力で片付けたけどミミッキュが居なかったら危なかった。私の運動神経は二つの事を同時にやろうとしてもストライキを起こそうとするんだけど、何もないところで何度転けそうになったことか……。
あと普通に図鑑やノートとかが重い。オタクは直ぐに資料集めに走るから。図鑑とか資料とか本当に読むの楽しい。私の年齢からしたら子供用のしか集めれないけど。
「それにしてもさっぶいなぁ」
窓の外を眺めれば白い物体が窓枠に積もった雪を食べているのが見える。あれは名物の除雪ユキハミちゃんである。
基本的に道路とか主要な場所は温泉を使った地熱で溶けるんだけど、それ以外は自力で除雪なんだよね。その除雪した雪は指定されてる場所に持っていく。そしてそれを「わーい、ディナーだぁ!」ってテンションになってる野生のユキハミちゃんが食べる、と。そしてある程度食べたユキハミちゃんが新鮮で食べやすい雪を求めてさまよって自動的にユキハミちゃんがさらに除雪する。
住人は雪が減って嬉しい、ユキハミちゃんはご飯が沢山食べれて嬉しい。誰も損をしない素敵な関係。
そう、名前を言わずとも分かりますね。ここキルクスタウン。
さっぶいんだよ!!!!!
今まで冬になろうとナックルでは雪が積もったら子供がみんなおおはしゃぎするぐらいだったから寒さに対して特に何も思わなかったけど、理解したわ。私は寒さに弱い。
家の中だけど防寒着あるだけ着てるのに寒い。え、本当にここで暮らすの? 凍死してしまうのでは?
将来に対して嫌な予感を覚えつつテレビを付ければ、そこには今年度のポケモンリーグ開会式のダイジェストが…………。あ、開会式昨日だったんだ。荷物開けたりしてドタバタしてて知らなかったよ。
あ、チャレンジャー達をぐるっと映したのが流れ…………未来のチャンピオンやんっ! 隣には未来の博士に未来のドラゴンストームまで!!!
え、彼処だけ顔面偏差値高くないか? 基本的にこの世界の顔面偏差値高めだけど、彼処だけ異様に高い。これは完全重要人物の顔面。それにしてもキバナさんの機嫌悪いのか表情がかたい。キバナさんに何があったんだろう。
ダイジェストらしくすぐに他の映像に切り替わったので、どこの番組も開会式についてだろうとあたりを付け、付けたばかりだけどテレビを消す。
「まあ、私にはもう関係無いんだけど」
近くに住んでることも無く、会うこともないだろうからね。
前世からのファンだからファンクラブ入会とスクラッチブックは作らせて貰いますけど。
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キバナさん達のポケモンリーグ開会式をテレビで見てから早数年が経ち、私は相変わらずキルクスタウンに住んでいる。
あのポケモンリーグは知ってた通りにダンデさんが勝ち抜いた。ちなみに決勝戦はキバナさんとでした。二次創作でよく見たやつ。
無敗のチャンピオン伝説をちゃくちゃくと強化しているダンデさんだけど、こないだキルクスに来ていたらしい。目的地はナックルだったらしい。お迎えにナックルの新ジムリーダーが来たとポケッターで話題になってた。
ちなみに新ジムリーダーは褐色の肌に綺麗な青い瞳が特徴なんだって。ルリナさんかな? とボケたいけど性別が男なのでボケれないんだよなぁ。そんな新ジムリの肩書きと言うか二つ名は『ドラゴンストーム』です。
あっっっっぶなっ!!!!! 下手に外出したらバッタリとか嫌なトラップだな。キバナさんが私を覚えてると思っての自意識過剰じゃなくて、推しは遠くから眺めたいタイプなんで会いたくないのと、何も言わずに引っ越したからね。一応関係としては幼馴染みだったのに未だに連絡の一つもしてなかったから罪悪感が……。完全に私情です。
ちなみに数年と言ってますが四年である。
そう、四年。
ダンデさんがチャンピオンになって四年。私が引っ越して四年。連絡せずに四年。
キバナさんが覚えてたらめちゃくちゃに気まずいぐらい時間たってるんだよねぇ。
「あんたは何か考えてる場合かね。今はただ休んどきな」
ぼーっとしながら最近のニアミスとも言えないような案件を考えてたら声をかけられた。
この四年間でキバナさんが新ジムリになったように私の生活も変化したのだ。
何がどう変わったかと言えば、10歳で旅を推奨するポケモン世界なので職業選別期間と言うか、半分社会人と言うか…………前世の高校生から大学生みたいな、大人だけどまだ半人前。でも社会人だよねって扱いを受ける。行動に責任が伴うようになったんだよね。
だから私もちょっと10歳から某創作サイトみたいなポケシブにアカウント作って、ポケッターでもアカウント作り漫画からイラストをアップ。それまで描いていた作品をバンバン投げた。
うん。
何も言わないで欲しい。
創作能力が『さいこう』(小説除く)だったのは私も知ってるし理解してた。
理解してるのと実感するのは別ってことなんだよね。
ええ、スカウト来てデビューしました。
相手方が10歳の子供ってのはプロフィールに載ってたけども
さらにびっくりしたのは両親である。子供用ポケモン図鑑とか欲しがる子供だと思ってはいたけど10歳の子供が創作サイトに登録して投稿してるなんて思わないよね。イラスト用のソフト無いから基本的にアナログイラストをスキャンして色調補正してまとめて投稿してるなんて思わないよね、すまんな前世からオタクでな。
ちなみにデビューするのは図鑑のイラストです。『あの人のポケモン~チャンピオン編~』ってタイトルでチャンピオンの使ってるポケモンの進化前から進化後、どんな場所に生息してるかとか、育成する場合の注意とか。基本的にファンやチャンピオンに憧れる子供向けの、ようは『はたらくくるま』的な本である。さらに写真だけじゃなくて躍動感のあるイラストだったりのんびりしてるイラストだったりを差し込みたいらしい。
なるほどなるほど、私の創作サイトにまとめ投稿したポケモンの躍動感あるスケッチ(脳内想像)にこれだとオファーがきたらしい。
作業量的に写真もあるしイラストも各ポケモンにつき三種類ぐらいだし、私もイラスト描くのは苦じゃないタイプで筆も早いタイプだから締め切りの期日を見ても余裕が有る。
深く考えずにペンタブとあるポケモンを欲しがって仕事を請け負ったのが私の失敗だったのだ。
この本のタイトルが『あの人のポケモン~チャンピオン編~』ってのに気付くべきだったし、描いたポケモンの量でも気付くべきだったのだ。このチャンピオン編は全地方のチャンピオンを扱った本で、全地方のチャンピオンなんだから発売するのは、
全 地 方 ! ! !
お陰で名前が売れて仕事が来たよね! 仕事が全地方にあるって可笑しいんだよ、我まだ10歳ぞ!?
基本的にイラストとか図鑑とか多いけど、創作サイトに投稿した漫画がその間に書籍化になったりして仕事量が可笑しくなった。完全に私の失敗。10歳から半社会人扱いなめてた。これ確かに優しく見守って貰えるけど責任はあるやつ。ポケモン世界はもっと子供に優しくして欲しい。
こうして全地方から仕事を貰って職業がイラストレーター兼漫画家になった私は手に職を持ったので半社会人からほぼ社会人になった。なにより10歳までに通うスクールを卒業したら各職業に特化した専門学校だったり、一般的な勉強をする中高一貫的な学校に通ったりする。他の地方は知らないけどガラルだと一年間で挑戦期間が終わるから、リーグを挫折したりファイナル出たチャレンジャーでも期間が終わったら学校に通ったりする場所なんで私も一般的な学校に通ってるんだよ。
そう、私の正しい肩書きは学生兼イラストレーター兼漫画家。
さらに寒いのが苦手なのにキルクス在住。ストレスがヤバかった。それでも生活出来ていたのは両親が居て家事をしなくても良かったから。わぁい、家族万歳!
そんな生活は私が11歳になった時に崩れた。
「ははっ、今回父さんは仕事でパルデア行きになっちゃったんだ」
「お母さんはお父さんと一緒に行くわね~」
パルデア行きも良いし、一緒に行くのは良い。
なんで私を置いてった? 住んでる家は今回置いてく私のために購入したって、実は高給取りなシステムエンジニアだったんだなお父さん。そうじゃなくて、これが手に職を持つ子供の運命なのか? それとも10歳で一人旅に出すポケモン世界だからか? 一番最後が合ってそうだな、子供の自主性を重んじるって言えば何とでもなると思うなよ!
こうして一人暮らしを始め、家事をこなし仕事をし学校に通い寒さにうちひしがれ…………。
完全にキャパオーバーした私はある日ぶっ倒れた。それはそれは雪が降り積もり寒さが厳しい、キルクスでは普通の日に。
学校にも来ない、仕事の連絡もつかない。何があったんだ! となった編集者と学校関係者が近所に住む人間に様子を見て貰ったら倒れた私がいたわけで、お騒がせしました! 死んでなかったけど顔色がヤバかったらしく入院。
この時に様子を見に来てくれた人達が心配してくれて、毎日様子を見てくれる。とてもありがたい。今回もぶっ倒れたからありがたいんだけど…………。
「ほら、さっさと寝な」
「母さんの言うとおり寝た方が良いですよ」
さっきから私を寝かせようとするのが編集者の知っている御近所さん。属性は金髪、人妻、ナイスバディ、現ジムリ。
そしてその御近所さんを母さんと呼ぶのは学校関係者の知っている御近所さん。三年前にチャンピオンリーグに挑戦しファイナルに進出した金髪、未来のジムリ(剣)、岩使い。将来母親に反抗期。いらない情報としては私の通う学校の一個上の先輩。
おいおいキルクスのジムリ親子じゃねーかよ! 私はモブで居たいんだ!! 背景で、背景で居させてください!!!!
「そう言えばあんたの事を知り合いに相談したらね、この子をあんたにどうかってさ」
ベッドに大人しく潜りこんでたらメロンさんが誰かから預かってきたモンスターボールを取り出した。
この子って誰だ? とモンスターボールをじっと見るが分からない。当たり前ではあるんだけど。マクワさんもメロンさんの取り出したボールを見てるけど、何故か頷いてる。これはマクワさん予想ついてるやつかな。
カチッとボールの小型化解除の音と共に赤い光線。それが私のベッドの上に。
えっ、そこベッドの上の前に私の上なんだけど。重さどうなんですかね? 潰れない?
私の心配をよそに現れたのは、節が何個も有り足も何対もある見た目。その姿で誰からか分かる。これカブさんからやろ。
「特性は炎の体。動く時に巻き付いてたら苦しいだろうけど、仕事中や寝てる時にあんたを温めるのには丁度良いね」
「このヤクデはカブさんからですか」
「そうそう、ちょいと訳有りだがこの子が持つ分には関係無い子を見繕って貰ったのさ」
「それは良いですね」
二次で読んだことあるー! ヤクデを巻き付けて体あっためるとか二次で読んだことあるー! カブさんから貰ったヤクデとか、読んだことあるぞ。
いや、でもカブさんからじゃなくても現実問題として体をあっためるのに適してる炎タイプのポケモンってヤクデが最適解なのは間違ってないんだけど。ここ重要、最適解がヤクデ。
そんでカブさんからって言うのはメロンさんの知り合いを考えたら、これ普通の事なんだよね。知り合いの炎タイプのエキスパートで知り合いって言ったらカブさんだよね、年齢も近い方だし。マクワさんが知ってたのはメロンさんがカブさんに相談してたか、渡されたのを見たかしたんだろう。
さらに二次で見たことある訳有りのポケモンだけどあんたなら大丈夫ってやつ。何が大丈夫なんです? 本当に大丈夫なんです?
「私がヤクデ貰うの決定ですか?」
「文句あるなら倒れなくなってから言いな」
「あ、はい」
これ拒否権ないやつっすね。
布団をめくれはススッとヤクデ特有の動きで潜りこんで私の体に乗ってきた。え、これめちゃくちゃあったかい。ヤクデさいこー!!!
「どうですか?」
「…………ヤクデさいこー」
「意識もう飛び始めてるじゃないですか」
体があったまってきたので既に意識が溶けてきてる私の口はヤクデさいこーbotとなってしまった。
なんでヤクデを手に入れなかったんだろうか、いや仕事するので貰った子は仕事にはかかせないんだけど。私の推しのミミッキュは近場がワイルドエリアじゃないからかお出かけしないで家の中をうらちょろしてる。たまーに私が弱ってるときにやって来たゴーストタイプをコンボを決めてボコってるのを見る。あ、あぐれっしぶぅ……。そうだね、ゲームじゃないからターン制じゃないんだよね。
うんうん、ヤクデほんとにさいこー。あったかいのさいこー。訳有りとか知らん。ヤクデさいこー!!!
「また無理しそうだね」
「集中したら周りが見えなくなるタイプらしいです」
「だろうね、じゃなきゃあんな早さでイラストを仕上げたり出来やしないよ」
「…………どうにか出来ないんですか?」
「こう言うのは本人に取って憧れの人物ってのに言われると効果抜群さ」
そんな会話をしながらメロンさんが、私のキバナさんスクラッチブックを本棚から取り出してるなんて知らなかったのだ。
※※※※※※
人物紹介
夢主のイユ(12歳の姿)
キルクス在住になり、11歳で社会人だった為に一人暮らしになった。ポケモンいるからか一人暮らしに対して周りが煩くない。フォローはされるけど。
寒さに弱いのが判明した。キルクスはイユにとって地獄である。
実はキルクスジムリ親子と御近所さんだし、キルクスタウンの自治会で11歳で一人暮らしって周知されてるのを知らない。
この度ヤクデ信者になった。ヤクデさいこー!
次回のフラグが立ったのを知らない。
ちなみに最悪な√としてカントーに引っ越し、赤緑とフラグ立ててから夜逃げみたいにまた引っ越しホウエンで石マニアとフラグ立ってから夜逃げみたいに引っ越してチリちゃんとフラグ立てるやつ。さらにバタフライエフェクトでこの場合はチリちゃん男になってるやつがあるのをイユは知らない。チリちゃん以外は軽く発狂してる可能性有り。
手持ちはミミッキュ(68)、仕事のパートナー(30)、ヤクデ(40)。みんなトレーナーに対してレベル高いけど戦闘しないので関係ない。
ドラゴンストーム(14歳の姿)
新ジムリになった。仕事を持ったので表情を取り繕うことを覚え始めた。実家から出て一人暮らししてる。
家にはひび割れ崩れたのを直したと思われる粘土細工のポケモンが大切に置いてある。
大切な宝を探しているし絶対見つける。
次回のフラグが立ってるのを今は知らない。
メロンさん(年齢は30前半イメージ)
夢主の御近所さん。一人暮らしを知っていたがポケジョブもあるしと軽く見てたら最近仕事した出版社から連絡来て様子を見に行ったら倒れてて驚いた。出版社から夢主の仕事について知って仕事量とかにも驚いた。フォローしなきゃ。
夢主の寒がりを知って今回ヤクデをカブさんに譲渡してもらった。
マクワさん(13歳)
御近所さん。まだ反抗期は来てないがそろそろ来そう。
血筋なのか世話焼きタイプ。それで夢主の様子を見てるけどしつこくしないタイプでもある。
夢主のことは従妹みたいに距離がある親戚の子みたいに思ってる。
両親
パルデア行き。父親はエンジニアとして能力高め。多分某技マシン購入出来るポイントとかのシステムに関わってたりするかも。母親は変わらず天然で楽観的。
父親は一人暮らししてたタイプなので夢主の一人暮らしを大丈夫と思ってた。ちなみに暮らしてたポケモンはイエッサンとサーナイト。ご飯とか世話出来るタイプだった。夢主のミミッキュも仕事のパートナーもご飯とか世話出来ないタイプ。片付けはミミッキュが出来る。
ヤクデ(40れべる)
カブさんのとこにいた自分で進化キャンセルするヤクデ。炎タイプのくせに炎技が嫌いで覚えたら忘れる。そのせいか分からないが特性である炎の体が他と比べて温度が低い。丁度良い湯タンポ。
炎タイプなのに炎が嫌いなのが訳有り。戦闘はしなくても大丈夫なタイプ。