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フェードアウトしたい






 ふう、記憶を入手してバカなことやってから3日経ちました。え、何で3日経ったかって? 起きてキバナさんの彼シャツなんてギルティしてから直ぐにキャパオーバーか、バカなことやった反動かで熱出したんだよね。おかげで色々考えることできたので良かった。
 問題はキバナさんが毎日お見舞いに来てくれたことですよねー! これキバナ女子に刺されるやつー。二次創作でテンプレになるほど、と言うかキバナさんだけじゃなくてガチ恋出来そうなキャラ出てきたら必ず出てくるテンプレ。でもここ二次創作じゃなくて現実だからなぁ、さすがに刺されはしないよね? 髪の毛ボンバーしたけど刺殺はないよね???? 信じてるぞポケモン世界は優しい世界!!!!
 それはそれとして、キバナさんが来る度に部屋の隅っこで毛布にくるまりながら震えてたらなんか「外が怖くなって」しまってその原因になった「キバナさんも怖い」と思うようになったと勘違いされた。
 ちゃうねん、キバナさん好きやけど推しキャラは遠くから眺めたいタイプなんだよ。こう、近くに居られると動悸が激しくなるし自分の存在が申し訳無いって思うタイプなんで。でも勘違いのお陰でキバナさんも部屋に長居しなくなったぞー! やったね、自分の時間が出来た!! 本来の私はキバナさんが関わらなければ外に出ないタイプだったから。インドア万歳!
 そんな訳で体調崩してろくに動けなかったのでちゃんと自己分析を始めてみた。

「天才なのでは?」

 目の前にあるのは子供用のらくがき帳。そこには美大生が描いたのでは? と思われるような写実的に描かれたミミッキュ。そしてまるで今にも動き出しそうなミミッキュのバトルシーンもちらほらと。
 幼児の持つ画力じゃねぇぇぇえ!!!

「まぁ、これで私のジャッジは終わった訳で」

 部屋にある子供用の机に広げられたのは私の名前を書いた自己評価と言う名の通信簿。時間が有り余ってたし、暇だったから…………つい…………。体調崩したと言っても微熱が微妙に続いてるぐらいだから暇を持て余したんだよ。
 そこには知識、かなりいい。外見、まあまあ。運動、ダメかも。ポケモン世界だからそれっぽく評価を下している。そして知りたくないことに気付いてしまったのだ。
 まず前世の記憶があるから知識はお察し。むしろ記憶あってもかなりいいなんだよなぁ。外見は、ね。私的には整ってるなぁって思ってたら違った。もとよりポケモン世界である。モブですらそれなりに整ってると言う現実に気付いたのだ。数多居る塾帰りやビキニのお姉さんを見てみろ。あいつらモブなんだぞ、あれでモブなんだよ。分かってくれただろうか、モブすらも顔面が整ってると言う地獄に…………。つまり私の外見は整ってるどころか目が半目になったところで中の下である。こんな目付きの悪い子供が居るか。
 そして一番のヤバイのは運動。はっきり言って運動音痴では無い。動けるけど遅い。なんと言うか普通の行動は普通なんだけど、運動とか早く動こうとすると遅いんだよ。運動神経への伝達が皆より2倍かかってるのかな? と思うぐらい遅い。さらに厄介なのが焦ると今まで少なからず機能していた運動神経がストライキ起こして転ぶ。
 これ思ったけどキバナさんよく世話してたな。ドラゴンが基本的に世話が焼けるから世話好きなんだろうなぁ。これから世話するドラゴンタイプの入門編として私の世話は卒業だ。だから毎日来ないでいいよ。そろそろジムチャレンジでしょ、キバナさん。旅の準備をしてくれ。

「オタク極振りステかよ」

 机に広げた自己評価表の2枚目に画力、さいこうと記載する。他にあるのは文章、裁縫、工作。文章だけまあまあ。他はさいこうと記載されてるのにめっちゃナルシストって思うけど、今の私からしたら最高としか言えない出来である。とりあえず紙粘土でオノノクスはヤバい。次の日には無くなってキバナさんの部屋に飾ってあるって隣の奥さんから聞いた。キバナさんや、紙粘土だからニスとか塗ってないし水分少な目だから数日後にはひび割れて壊れるぞ。
 裁縫は、まあ、昔(前世)取った杵柄ってやつですよ。コスプレ…………コミケ…………うっ、頭が…………。取り敢えず子供なら許されるミミッキュポンチョとヒバニーパーカー作った。ミシン使えば簡単なんだぜ。ポンチョってなんで大人になると好きでも着にくくなるんだろう。微妙に敷居が高い気がする。似合わないからかなぁ、私が。いや、今は子供なんで遠慮なく着ますけど!
 文章は、こう。書けるけど読み物としては普通だよねって感じ。ゲームシナリオとか台本とかは書けるタイプだこれ。すぐに察したよね、小説は無理なやつって。

「こんなステとか、どう足掻いてもオタクとして生きていけって感じじゃん」

 取り敢えず目下の目標はアニポケの漫画化かなぁ。ネットで調べた感じだとサトシくん居らずにレッドさんとグリーンさんが居るみたい。でもなぁ、どう足掻いてもシゲルくんにオーキド博士なんてまんまだもんなぁ。舞台をマサラタウンにして、博士とか別にするべきかな。平行世界ってことにして何となくマサラタウンだけど、現実とは違う感じ。よくあるスピンオフ作品みたいなもんだ、だから絵柄が違っても大丈夫。自己暗示大事! バトルを見せたいから少年漫画風が良いな。微妙にしか覚えてないからプロット作って、四天王とかロケット団とかも微妙に変えたりしなきゃ。ひぇっ、そうなると衣装も考えたりしなきゃだし。これプロット作りながら出てきたキャラの設定も詰めなきゃダメじゃん。
 あ、そういや一応ゲームで出てたムサシにコジロー、ニャースの三人組はこっちだとどうだろ。三人好きだからキャラの外見変えて設定そのままにするかな。アニポケはあの三人組もいてこそだからな。あー、そうなると悪の組織の服装も考えないと…………しかもエリートは色違いなんだよね。あああああああ、頭が追い付かない。バイバイ、バタフリーは絶対に描くからな!!
 ……………………やることメモしとこ。一気にやろうとするからダメなんだよ。ぐりぐらのホットケーキ作る絵本をプラスルとマイナンで作りたい。スイミーはヨワシで。100万回生きたニャースとかも。
 考えるの止めよう、メモだけしとこう。やりたいことが溢れてきて困っちゃうなあ。
 らくがき帳に深く考えないでもどうにでもなるホットケーキ作る絵本の内容をがりがりと描いていく。文章は後でどうにでもなる。絵柄はちゃんと絵本向けに優しく丸くしてる。

「イユ、起きてるか?」
「ぴえっ?!」

 ふんふーんと、軽く鼻歌まじりで調子に乗り出した途端に声をかけられて変な悲鳴を出してしまった。
 だって、声かけてきたのキバナさんだもん!!!!! さすがガラル紳士ですね入室前にノックして声をかけるなんて子供で出来るなんて素敵ですよ! 是非とも私以外に発揮してほし…………いや、私に声をかける場合は心の準備が必要なんで今のままで大丈夫です!!! ノーアクションで顔面600族は一撃必殺なんで!!!!
 あわあわと慌てながら毛布を被り部屋の隅っこへ避難する私。ちなみに3回は転けた。運動神経ちゃんと活動してくれ。
 私が散らかしたままのらくがき帳に文房具はミミッキュがせっせと片してくれてる。すまない、すまない…………。ちなみにミミッキュはちゃんとポケモン協会に申請を出して私の手持ちとなりました。私は子供なので難しい書類や話をされることなく今日から君のポケモンだよってチャンピオンが持つようなレベルのミミッキュが手渡された時は見事にスペキャならぬスペニャ顔になった。
 うちのミミッキュはなんか私のお世話をするのが好きみたいで、私の身の回りの世話をしてくれる。片付けとかもそうだけど、集中して時間を忘れてたらそれとなく教えてくれたり…………イエッサンかな?

「なんだよ、さっきの声」

 ひぇっ、返事してないのにキバナさん部屋に入って来てるんだけど!!!!!

「今日もそこかぁ」

 今日もここです。定位置なんですよ。
 別にキバナさんのこと嫌いじゃないんですよ。でも近くに居られると居たたまれないんです。それが分かってるからミミッキュも私とキバナさんの間で揺れてる。近付けさせはしないけど、部屋に入れてやるって感じ。私の護衛かな???

「あのな、オレ…………今度のジムチャレンジに出れることになったんだ」

 距離があるのにしゃがんで隅っこに丸まってる私に向かって、へにゃりとワンパチみたいなヌメラみたいな笑顔で報告してくれたキバナさん。
 え、可愛いな? 可愛すぎない??? これで男の子ってどう言うことだろうか。変なストーカーとか付いちゃうんじゃない? いや、それよりもジムチャレンジっと、キバナさんまじか。そういやキバナさんは今年で10歳でしたね! だからジムチャレンジ参加出来るのか。トーナメントまでに10歳になる子が参加可能だったっけ。私は参加するつもり無いから詳しくは知らないし、推薦状の宛ても無いですし。
 そっかぁ。キバナさんジムチャレンジかぁ…………なんと言うか感慨深い。参加するって言うのは何となく分かってたけど現実として理解すると、心に来るものがある。

「ほんと、キバナさん参加するの?」

 流石に声をかけるのに毛布を被ったままは失礼なんで脱ぐ。髪の毛ぼさってなってるだろうけど、気にしない。
 だって、キバナさんめっちゃ出たがってたんだよ。チャンピオンになるってキラキラした目で言ってたんだよ!!! そんなん喜ばないわけないじゃない!!!!!

「よかった、おめでとキバナさん」

 まだ微熱だし、さっきまで毛布被ってたから頬があっつい。絶対赤いがそんなの知らん。私の遠くから眺めてたいとかも今は置いておくんだ。
 いいか、私とキバナさんはご近所さんでちょっと前までは仲良くしていた、幼馴染と言うものだ。そんなの幼馴染が前から参加したいと言っていたジムチャレンジに参加するんだぞ。そんなのお祝いするしかないじゃないか。
 前世は一応成人していたんだから、毛布なんて被ってお祝いなんて出来ない。ちゃんと大人だった意地があるんですよ。え、記憶戻ってからの行動が大人っぽくない? 知らんな。
 なんだろう、私の事じゃないのに嬉しくなる。好きな人や推しが喜んでるとこっちも嬉しくなるんだよなぁ。勝手に口角が緩んでしまう。子供らしいふにゃふにゃした笑顔をさらしてしまってるけど、中の下である私の笑顔でもきっと需要はあるはず。子供ってだけで付加価値有るんで。

「んぐっ!」
「ありがとなイユ! お前にそんなに喜んで貰えるとオレ様も嬉しいぜ!」

 どんっとした衝撃と共に体を締め付けられる感覚…………これはキバナさんに抱きしめられてますわぁ。何でだよ!!! ミミッキュちゃん、私の護衛のミミッキュちゃんはどうしたよ。毛布外したんだから大丈夫って判断ですか??? ひえっ、キバナさんに抱きしめられるのは許容外なんですけど!!!???
 待って待って、頭部にぐりぐりされる感覚が。これはまさかほっぺすりすりされているのでは??? え、麻痺するんです???

 
「来週からジムチャレンジが開始するから、オレのこと応援してくれよ?」
「…………ひゃい」

 いまだにほっぺすりすりされながら、許容値がオーバーしてろくな返事が出来ない。ははーん、すでに言語能力に麻痺が入ったな。
 気分が落ち着くまで私を抱き締めて思う存分すりすりしたキバナさんは、気分良くお隣へと帰って行った。

「ひぇぇ…………なんてことしてくれたんだよぉ…………」

 推しからのファンサが凄すぎて理解が出来ない。別にキバナさんにその気は無くともヤバヤバである。ガラルの地方設定からスキンシップ過多だとしても、誰にでもこの調子ならいつか女の子に刺されるのでは? ゴシップもいいけどいつか出来るだろう本命さんに勘違いされないようにね、お姉さんは心配です。

「さて、キバナさんも帰ったし夕食までアニポケの設定でも練り練りしますか」













 


「そう言えばパパが転勤することになったの話してなかったわねぇ」

 夕食に呼ばれてテーブルについて少ししてからの母の言葉に首を傾げるしか出来ない。言うの遅くない?

「転勤って引っ越しするの?」
「そうよぉ、ジムチャレンジに合わせての人事異動ですって。キルクスタウンの方になるんだけど温泉楽しみだわぁ」

 うふふっとふわふわ笑っている母親は、穏やかと言うか能天気だなあって思う。私がワイルドエリアに行って行方不明だった時は焦ってて普段の様子から想像出来なかったって言うほど違ってたらしい。私は見てないから知らないけど。
 それにしてもジムチャレンジに合わせての人事異動って事は引っ越しも来週、下手したら今週。今週はあと4日である。

「ママ、引っ越しの準備大丈夫なの?」
「ダメかもしれないわね」
「私もお手伝いするし、ポケジョブにも頼もうね」
「そうねぇ」

 ほわほわしながら受け答える母を見て、あ、私の運動神経は母のこのほわほわ具合を受け継いだな。暢気具合が私の運動神経と一緒だ。
 そう言えば最近父の帰りが遅いなぁって暢気に思ってたけど、人事異動に伴う仕事引き継ぎとか色々あるからかあ。父には引っ越しの手伝い頼めないな。
 あ、来週からキバナさんはジムチャレンジって事は参加のために早めにエンジンシティに行くだろうから、引っ越し報告しないでこのままフェードアウト出来るのでは?


 








※※※※※※※※


▼名前が出た夢主、イユちゃん

 名前はバラの品種名「ベルサイユのバラ」から。昔園芸雑誌か何か見て衝撃を受けた。美しく咲いて美しく散るって感じでは無いけど、誰かに美しく散らされるんじゃないですかね?(他人事)
 運動神経が全く無くて判断力も無いのでバトルは壊滅的。代わりに作成技術が高い。オタクは変な技能持つから仕方ないね。
 息抜きで描いたプラとマイは創作投稿サイトにぶん投げて評価がめっちゃついた「ひえっ」
 口から良く悲鳴にも満たない鳴き声が出てくる。
 有り余った時間で自己評価したら自分の容姿が中の中だったのに半目になったことで中の下になったことを知ってしまった。
 ミミッキュ以外の手持ちは決めている。
 引っ越すことでキバナさんに何かが起こると気づいてない。




▼キバナさん(ジムチャレンジします)

 ジムチャレンジ中に10歳になることが判明。
 好きな子に嫌われたのかと思って距離を取ってたけど会いたいから毎日会いに行ってた。ストレスになったらダメだから直ぐに退散していたが慣れたら居座る気満々。
 ちなみに外に出したら大変な目に合うから、外に出たくないならそのままでいて欲しい。
 ジムチャレンジ参加出来るのが嬉しくて報告したら、毛布脱いでくれたし顔見せてくれて嬉しい。さらにヌメラみたいなふにゃふにゃした笑顔を向けてくれたし熱でほっぺ赤くて思わず抱き締めてほっぺすりすりした。
 チャレンジの準備でドタバタして、開会式前日にスボミーインから家に「イユも開会式見てくれるかな?」と電話したら引っ越したと聞いて「は???????」となる。
 イユはスマホ持ってないので連絡取れないし、ドタバタと引っ越したのでキバナさん家に引っ越し先教え忘れてる。
 オレ様から逃げれると思ってんのかよ(ガチギレ)



▼ミミッキュ

 レベルがレベルなので戦うことに意欲的ではないがピカチュウは嫌い。必要としてくれたイユの世話が楽しい。
 キバナ? ああ、イユが本気で嫌がってないから近付くなポーズはしとくね。あ、毛布取るなら居なくても大丈夫だね。片付けの続きしとくね。



 
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