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うつつでなりて【刀剣乱夢×twst】

学園長の移動魔法によって無事食堂に逃れた審神者たちは大勢の生徒が集まる中、食事をしていた。否、審神者だけが食事をしていた。

「うわ~~~~~ん!!!夢にまで見たみっちゃんのオムライス!!!」
「いや~、主はいつもおいしそうに食べてくれるから作り甲斐があるよ!」
「ううっ…みっちゃんのご飯が食べれないこの数か月は本当につらかった!!」

審神者はドン引きしている周りを気にせず、涙を流しながら皿を抱えるようにして食べる。

「みっちゃん!おかわり!」
「はい、次もデミグラスソース?カレーとハッシュドビーフもあるよ」
「ハッシュドビーフ!ビーフ多めで!」
「OK~」

審神者は久しぶりの光忠の料理にご満悦である。
光忠によって盛られたオムライス~ハッシュドビーフソース~をこれでもかと口を開けてほおばる。

「あ、あの、監督生さん…」
「ふぁい?(もぐもぐ)」
「楽しそうにお食事するのもいいですが、あの化け物を早く何とかしないと…!」
「…ひょっとまってくらはい(もぐもぐ)」
「デュース、カントクセーの胃ってどうなってんの?」
「いや俺に言われても…というか俺たちと一緒に飯食ってるときあんなに食べてなかったよな」
「俺様でもあんなに食えねーんだゾ…」
「ねぇねぇトレイくん」
「なんだケイト」
「あの料理って1時間そこらでできるの?」
「魔法を使っても難しいとは思うがな…」


食堂に着くなり、光忠が既に配膳を済ませたこれぞ和食!をごはん3杯、一通り食べた後、醤油ラーメン半チャーハン餃子セット、とんこつラーメン4玉を食べ、間に食堂の人気デザート「エルサおばちゃんのアイスクリン」を食べ、デミグラスソースのオムライスを2つ、今ハッシュドビーフのオムライスを食べ終わった。フードファイター並みに食べている。

「ふう~食べた食べた!ひとまず御馳走様!」
「はい、お粗末様でした。まだ材料はあるから食べたくなったらいつでも言って」
「ありがと~~~!!!で、これからの話なんですけど…」

漸くおなかが膨れたらしい審神者は光忠が入れてくれた緑茶(しっかり湯飲みと急須がある)を飲みながら彼らが化け物という者たちと、自分のもとの世界についてもう一度話し始めた。


「なるほど。では貴女はそのカタナに付く神と世界を守る軍人だったということですね」
「まあそんな感じです。時間遡行軍がこっちにいる理由ははっきりしないんですよね。強いて言えば私がここにいるからって思うんですが、にしてもこの数か月は何もなかったですし」
「…クロース・ティターネスはもとは茨の谷の中でも名家と言われていた一族だった」
「ツノ太郎?」
「ああ、なんか見たことある顔だと思ったらあやつはティターネスの子だったのじゃな」
「クロースのユニーク魔法は表向き物の時を数秒戻すとされている」
「なにそのチート魔法。表向き?じゃあほんとは違うの?」
「ああ、本来は時に干渉する魔法だったと記憶している」
「時に干渉する?時間を戻すほかって、時を止めたり?」
「それもある。通常、干渉するといっても時を数秒戻して、割った食器を割る前の状態に戻したり、時を止めて躓いた石ころを避けるとかその程度のことしかできないはずだが…。クロースは己が3年の時から急に部屋にこもってとある実験していると聞いたことがある」
「とある実験って?」
「マレウス様、俺も聞いたことがあります。…時を遡り、その時代のものを現代に連れてくるという実験だと」
「そう。実際目にしたものは居ないため、噂の域をでない。彼のものは3年になったとき親を亡くしたと聞いた。そして、彼の一族は『時の一族』と呼ばれていた」


クロース・ティターネスは茨の谷では名の知れた一族の子であった。
大昔、まだツイステッドワンダーランドという大陸名が付けられる前、とある地域では領民から大層慕われたティターネスと呼ばれる領主がいた。体が大きいが穏やかで優しく、不思議な魅力にあふれた人だった。働き者で、彼が育てた食物は非常に美味しくまた豊作であった。
彼は生まれ持った知識を領民に惜しげもなく与え、それを見ていた神様が彼に時を操る能力をくれたのだという。そうして彼はそのちからを使い、より一層農耕に精をだし、領民からはより慕われ神のように崇められた。
やがてその領主も妻を迎え、子を為し、ティターネス一族はいつの間にか時に関する魔法が使えるようになった。
しばらくすると、大陸で戦争という名の争いが各地で起きるようになった。
ティターネスの領地でもほかの領民領主から攻撃され、応戦を余儀なくされた。
やがて戦争は大きく、激化し、多くの領地は滅び、一族は散り散りになった。
そんな一族の生き残りであったクロースは、今は亡き親から一族の復興を望まれるほど強い力を持って生まれた。クロースは両親からの愛を受けようと、厳しい教育に耐え、遂に名門ナイトレイブンカレッジの切符を手に入れたのであった。
親の言うことを従順に聞き、学校でも優秀な成績を収めていた。
しかし彼が3年になってその生活は一変する。
クロースの両親は彼が3年生になって数日、不慮の事故で帰らぬ人となった。
今まで親の言うことだけに従ってきたクロースは、どうすればいいのかわからなくなった。
欲していた親の愛が永遠に手に入らないことに絶望したクロースは一つ思いついた。
無いなら、あるところから持ってくればいい。
この時代の両親は無くなってしまった。であれば、まだ両親がいる時代から、今自分が生きている時代に持ってくればいいのではないか。
そうすれば両親の愛が手に入る。
幸い、時を操るユニーク魔法を持っている。今は数秒しか操ることはできないけど、もっと魔法を磨けば年単位でも操ることができるようになれば…!
そう思ったクロースは、時間に自由のある学生の間に両親を連れてくるべく、部屋にこもり、実験を繰り返した。

「え、じゃあその噂を真とするなら、まさかご両親を…」
「おそらくな」
「…私がここに連れてこられたのって学園長のせいじゃなくて、その実験で時空のひずみが起こったから?だったら時間遡行軍もひずみに呼ばれたんだ!」
「ちょっと監督生さん!私をそんな風に思っていたのですか!なんと嘆かわしい!うお~~ん!!」
「だって学園長見るからに怪しいので、なんかの生贄に使われるのかなと」
「い、生贄なんてそんな恐ろしいこと!教育者である私にできるはずありません!」
「まあ、いまはそんなことどうでもいいです。えーとまとめると、クロース・ティターネスさんが繰り返してた事件で時空のひずみが起こって、私たち異世界のものを呼び込んでしまったかも知れないと。オーバーブロットを起こしたのは?」
「状況からして学園長が退学を言い渡したときじゃからのう…」
「じゃあオーバーブロットの理由は、学園で実験したいのに、学園長から退学を言い渡されてストレスがマックス値になってしまったからということで」
「そんな適当な!だいたい私は理事長から学園を預かる身としてですね…「はいはい、わかってますよ」
「大方の予想は当たっていると思うぞ。そもそもユニーク魔法は魔力を大幅に消費するものだ」
「う~ん、原因はわかってもそれだとどうしようもないな…。時間遡行軍は切ればいいだけだけなんだけど、クロース先輩はなぁ…」
「そんなん前みてぇに魔法で攻撃してあっちの魔力が尽きて気絶させればいいだろうが」
「レオナ先輩、いまだに根に持ってます?だいたいあれは正当防衛です。今回はあっちから手を出されないので魔力尽きるのを待つこともできないですよ」
「…じゃあ主が浄化すればいいんじゃない?」
「清光…。でも強制的に浄化すると先輩にまで影響を及ぼしちゃうかもだし、せめてもうちょっと先輩について情報が欲しい~」
「私ひらめきましたよ!先ほど貴女は『物に眠る想いや心を目覚めさせ力を引き出す能力』があるといいましたよね。であれば、クロース君の持ち物からその心を目覚めさせて聞けばいいのでは!?クロース君の部屋に行けば彼のお気に入りのものとかいつも使っているものとかあるでしょうし!」

クロウリーがマスクの奥で瞳をにんまりしているのが手に取るようにわかる。
審神者は確かにそれならば、クロースについての情報は浄化するのに十分の情報を集められるだろう。
しかしそれには代償が必要である。


「…主、俺たちは主の意向に従うよ」
「清光、私は…」
「ん、わかってる。俺たちは主が人間じゃなくなっても俺たちの主だし、なんなら主に配下?になるなら願ってもないよ」
「は?小エビちゃんが人間じゃなくなるってどういうことだよ!」

審神者と清光の近くにいたフロイドは小声で行われていた会話を聞き取ってしまった。

「小エビちゃんが死んじゃうくらいなら、その原因でいいじゃん。なんで小エビちゃんが犠牲になんないといけないわけ!?」
「フロイド先輩、落ち着いてください。別に死にはしません。…あ、でもある意味死んだことになるのかな?」
「だったら…!」
「だから落ち着いてください!…学園長、確かに審神者には物に眠る想いや心を目覚めさせ力を引き出す能力があるといいました。でもそれは正しくて間違いなんです。正確には、審神者はかれらの本体である『刀』」に眠る想いや心を目覚めさせ力なんです。でも私はそれとも少々異なります。私はほかの審神者にはない、『神通力』という力を持っています。それを使えば刀以外の物でも同じことができるでしょう」
「で、ではそのジンツウリキとやらを使えば…」
「ええ。でもこの姿では神通力は使えません。神通力は神の力。私が神に成らねば使えません」
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