このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

うつつでなりて【刀剣乱夢×twst】

私が監督生になっておよそ半年が過ぎ去った。
なんだかんだいつも一緒エーデュースの二人は部活、グリムはマジフト部で試合があると聞くなりマジフト場に飛んで行った。特段珍しことではないので夕飯までには帰るようにと小さな背中に声をかけて、自分は夕飯の準備をするためにサムの店によるところである。

「ハーイ、小鬼ちゃん!ご機嫌いかが?」
「ご機嫌は可もなく不可もなくです。料理酒はありますか?」
「もちろんin stock now ! こちらでいかがかな?」
「ありがとうございます。ついでにこの付箋とペンのインクも買います」
「セーンキュッ!」

サムの店を出て、寮に帰るために鏡の間へと向かう。
すると突如上空が赤く染まり、あちこちから暗雲のようなものが立ち込めてきた。
黒い雲の間から裂けるように何かが四方八方へ飛んでいく様子を見てしまった私は、
今までの経験からよくないものの気配を感じ、すぐさま学園へと引き返した。
学園へ戻るとそこにはケイト先輩とリリア先輩がいた。二人は部活終わりで夕飯を食べようと食堂へ向かっていたらしい。

「あれ監督生ちゃん?」
「ケイト先輩、こんばんは」
「わしもいるぞ」
「リリア先輩もこんばんは」
「なんか急いでる感じ?」
「ええ、まあ…。ケイト先輩方は何をしてるんですか?」
「部活も終わったし、食堂が混む前にご飯食べちゃおうと思って。あと空が急に赤くなったからマジカメに投稿する写真を撮ろうとしたところ!」
「ふふふ、こんなに赤い空を見るのは何時ぶりよのう」
「リリアちゃんその笑い方怖すぎ~」
「そうなんですね。お二人は雲の間から何かが飛んでったのとか見てませんか?」
「えー?特に何も気づかなかったけどな~」
「わしもじゃ」
「そうなんですね…」
「何々?それを探す感じ?マジカメのネタになりそうだからオレも監督生ちゃんについていこうかな!監督生ちゃん魔法使えないんでしょ?少しくらいならけーくんの魔法見せてあげる!」
「え、別に面白いとかないと思いますけど…」
「おぬしは高確率で面白いことに巻き込まれているからのぉ。今回はわしもついてくぞ」
「まあいいですけど…」

とりあえず、邪悪な気配を探る方が先かな。
先輩たち(特にリリア先輩)も多少腕に覚えがあるみたいだし、こっちのモノであれば魔法が一番頼りになるし。

「とりあえず中庭あたりに行きましょうか」
「OK~」
「楽しみじゃのう!」

先ほどケイト先輩たちと出会ったメインストリートから一番近い中庭についた。
気配を探っても特に異常らしいものは無い。
それよりも空の赤さと雲が増えてきている気がする。
そんな風に思案していると、校庭の方から焦った怒鳴り声が聞こえると同時に背筋に既視感のある寒気が襲った。まさか。

「先輩方!校庭の方に行きます!」

中庭から校舎を横切り、校庭へと走る。
まさか、この世界にアイツらが来たのか?

「な~んか結構やばい感じ?」
「悲鳴がするというのはただ事ではないな」

全速力で300Mほど走り、校庭へ着いた。そこには今まで部活をしていたのであろう幾人かの生徒と、空よりも赤黒い刀に角の生えた監督生にとっては見知った化け物がいた。

「なんじゃあれは!」
「いや、何あれ怖すぎ!」

化け物の数は全部で3体。生徒は5人くらい?部活の片付けでもしてたのかな。あ、バルガス先生いるじゃん。バルガス先生が防御魔法展開しながら生徒たちを避難させているみたい。
それでも迷っている暇はない。
大丈夫、集中して。
私はお札を投げながら、「祓はらへ給たまへ 清きよめ給たまへ!」と叫んだ。
ほんとお札持っててよかった~。

「え、え?監督生ちゃん?」
「おぬし今、何をした?」

ケイト先輩のぽかん顔いただきました。リリア先輩、とりあえずその殺気みたいなのしまって。めちゃ怖い。大丈夫、あなたたちの次期王様に何かしようとか欠片も思ってません。

「説明は後でします!とりあえず今は生徒を非難させましょう!食堂へ誘導してください!」

あ~なんか久しぶりすぎて気配に鈍感になってたかも。さっきのやったら色々感じるわ。めっちゃ気配があちこちにあるなぁ。

「監督生ちゃんも早くいくよ!」

立ち止まって空を見上げていたケイト先輩に促されたけど、それよりも原因が気になるし、一応学園の事だから学園長に話もしないとだろうし。校庭に来たのが短刀と脇差だからそんなに被害はなかったけど、他のやつらも来てたらもっと大変なことになるし、うん、もうちょっと探索をしよう。

「ケイト先輩、リリア先輩!私もう少し様子を見るのでバルガス先生たちと食堂に行ってください。あと、バルガス先生にも協力してもらって、生徒を食堂に集めてください。そしてこの札を食堂の出入り口、窓に貼ってください。これでしばらくはあいつらも近づけないはずです」
「ちょ、ちょとと!なにがなんだかわからないよ!」
「すみません、今説明している暇はないんです」
「…わかった。おぬし、あとできちんと説明してもらうぞ。行くぞケイト」
「~~もう!監督生ちゃん無理しないでね…!」

先輩方に持たせた結界の札は割と真面目に作ったものだから何かあってもしばらくは持ちこたえるはず。
それよりも今は、気配をつぶしに行かねば…

「う~ん、温室かな」
「キミ…監督生か?」

え~せっかく一人行動できると思ったのになぜ知り合いにエンカウントするんだ。

「リドル先輩、…とトレイ先輩?」
「先ほどこちらから悲鳴が聞こえたようだけど、何かあったのかい?」
「まあ、何かありましたけどひとまず今は大丈夫です」
「何かって?何があったんだ?」
「(説明めんどい)…それより、バルガス先生が生徒は食堂に集まるように言ってましたので、お二人も食堂に行ってもらえますか?」
「キミも生徒なんだから食堂に行くんだろう?こちらは反対方向だよ」
「いえ、私はバルガス先生に言われて温室あたりまで声をかけに…」
「ふうん?」

めっちゃ疑われてる。リドル先輩、かわいいし美人だし、男子校にありがちなむさくるしさが無くて目の保養枠なんだけど、そんなかわいこちゃんに疑われるとかつらい。

「まあまあリドル。監督生はこれから温室に行くんだろ?なら俺たちもついてそのあと一緒に食堂に行けばいいじゃないか」
「トレイ…」
「い、いや、私一人で大丈夫で~す…いえ、やっぱり先輩たちについてきてもらおうかな~あはは…」

トレイ先輩笑顔で睨まないで~もう~私忙しいのに~

「そうだね、では早く行こうか」

リドル先輩が踵を返すとトレイ先輩の暗黒微笑みたいな顔にお前も早くしろと刻まれていた。最近トレイ先輩が某双子の微笑みの姿に見えてきた。

そんなこんなで温室が近くなってくると、誰かが魔法攻撃でもしているのかドーンやら、伴ッ!など激しい音と、クルーウェル先生の声がする。

「子犬ども!俺の後ろから逃げろ!そして学園長かだれか先生を呼んで来い!」
「ラギー!そいつらを先導しろ!」

おおっと、もう交戦中か~
リドル先輩の後ろ走ってたけど、これは一刻の猶予も争う感じだ。

「リドル先輩、私先に言ってますね。やばそうだったら食堂に行ってください!トレイ先輩も!」
「ちょ、キミ!」
「は、早すぎないか監督生…」

戦場で鍛えた脚はその辺のお坊ちゃまたちとは鍛え方が違うんでぃ!
文字通り瞬足で駆け付けた温室ではクルーウェル先生とレオナ先輩を筆頭にあいつらと交戦中だった。他にも3人くらい生徒がいたが、ラギー先輩がまとめてクルーウェル先生の後ろにある薬学室に続くドアに走っていた。

「失礼しまっす!ラギー先輩、そのまま食堂へ向かってください。食堂はたぶん安全です!」
「子犬!?」
「草食動物、お前今どんな状況かわかってんのか!お前もこっちきてねぇで逃げろ!」
「いやいや、そんな満身創痍な先輩たちより役に立ちますって!そおぉおい!」

お、適当に投げたけどお札が当たったわ。てかなんか校庭より多くない?
ここ校庭の何分の一の面積だと思ってんの?
密です。密です。

『ウガガァァァ!!!』

あれれ~おかしいな~。
動きが止まってるから効いてはいるけど消滅しないって、さっきのよりちょっと強い系?

「はあ、はあ…監督生!無事か?」
「…っ、ふー、はぁ、はぁ…」

トレイ先輩お早いお付きで…リドル先輩大丈夫です?呼吸できてます?

「おい、子犬。さっきのは何だ?」
「ちょっと結界先に貼らせてください。よっこいしょっと」

鞄を開いてペンケースに入っていた筆と、先ほどサムの店で買ったインクを取り出して、
自分の半径1.5Mほど、先生たちにも自分の周りにいてもらって円を書く。そんで印を結べば簡易結界の出来上がり!

「何だこれ?」
「ちょっとレオナ先輩、あんまりたたかないでください。結界を張りましたが簡易的なものなんで壊れやすいんですから」
「結界?子犬は古代魔法が使えるのか?」
「古代魔法とやらは知りませんけど、私には魔力とは別の力があって、それを使うと結界も張れます。そしてあいつらを倒すにはその力じゃないとダメなんです」
「すると、キミはあの薄気味悪いものが倒せるっていうのかい!?」
「ええ。でもここはちょっと数も多いし、力も強いやつらなんで私一人では無理です。なので、先生たちに協力してほしいんですが…」
「子犬。言ってみろ」
「…私があれを倒すために、こっちでいうところの召喚術を行います。その時間を稼いでほしいんです。さっき先生たちが魔法で攻撃してたのを見る限り、効いてはいるみたいなんで。クルーウェル先生とレオナ先輩とリドル先輩は火で攻撃して、トレイ先輩は先生たちのサポートをお願いします。私はこの結界内で召喚術を行うので、気にしないでください。あと、万が一のためにこのお札を一人一枚渡しておきますね。このお札はあいつらから攻撃されても何度か防いでくれます」
「…聞きたいことはたくさんあるが、ひとまず後にして言う通り時間稼ぎをしよう。だが、さっきので消耗している分そんなには持たないが…」
「3分持たせてください。それだけあれば十分です」
「はっ!たった3分で召喚術をしようって、さすがに無理だろ」
「レオナ先輩。賢い先輩ならわかると思いますが、今はそんなことで言い争う暇はないんです。先輩にとって私は信用できないかもしれないですけど、今だけは信じてください」
「…」
「…レオナの負けだな。よし、俺は後方から回復魔法と防御魔法をかけ続ける。リドル、リドルは俺の前で攻撃魔法を使ってくれ。攻撃は最大の防御っていうしな」
「まあ寮生を守るのも寮長の務めだからね…」
「ではキングスカラー、お前は俺とペアでやるぞ。一人でバラバラでやるより危険も少ないだろう」
「チッ!」
「お願いしまーす!」

クルーウェル先生とレオナ先輩が私の斜め左前に立ち、トレイ先輩とリドル先輩は右斜め前に陣取る。

「さあって、さっきインクとお酒買っておいてよかったなあ」

まず先ほど使った筆にまたインクをつけ、五芒星を書く。その周りに呪文を書いてっと…
お酒、お神酒じゃなくて料理酒だけど緊急だし許して!

『此れの神床に坐す 掛けまくも畏き天照大神
恐み恐みも白さく(かしこみかしこみしろさく)
高き尊き御教の間に(たかきとおときみおしえのまにまに)
負ひ持つ業に請う(おいもつわざにこう)
我この身を持つてしその力を示せむ
その名を「薬研藤四郎」「加州清光」--顕現!』

「大将!久しぶりだな!」
「主、俺のこともうかわいくないの?」

「薬研!久しぶりっ!清光はいつだってかわいいよ!」
「えへへっ!主ったら半年も来ないんだもん。なにかあったの?」
「加州の旦那、なにやら今はおしゃべりしてる暇はなさそうだぜ」
「急にごめんね!色々あったことは後で話すから、あいつらやってくれる?」
「りょーかい」
「合点承知だぜ、大将!」

私はこの世界に来る前、審神者という職に就き、時代を守るために刀の付喪神たちと戦をしていた。審神者とは適性のあるものが研修や修行を経て最終試験を合格し、刀剣男子と呼ばれる刀の付喪神を率いている者を指す。
加州と薬研は私の初期刀と初鍛刀であり、数いる刀剣男子の中でも私の指示なしに指示通り動ける以心伝心の神様なのだ。

「先生方!あとはその二人に任せてこの結界の中に戻ってきてください!」

薬研と加州の活躍により、無事にあいつらを倒した。

「…さて、子犬。説明してもらおうか」
「もちろん説明しますけど、ここにいるとまた危ない目に合うかもしれないので、一旦食堂に行きませんか?あそこはもっとちゃんとした結界が貼ってあるはずなので、あっちの方が安全です」

クルーウェル先生が頷き、先輩たちもそれでいいというような表情をしていたので食堂に向かう。

「監督生さん!」
「…ジェイド先輩?」
「バルガス先生から伝言をお預かりしています。なんでも学園長と連絡が取れないから学園長室に行くと。あとのことは監督生さんに指示をもらえとのことです。…ところでそちらの見慣れないお二方は…」
「わかりました。時間がないのでざっくりと説明しま「こじゃが!「監督生!「子分!」」
「ヴィル先輩、エース、デュース、グリム…」
「一体何がどうなってんのか説明しなさいよ!」
「い、いまから説明します…!の、ので、え、えり、くびが、しま、る…」
「シェーンハイト、そこまでにしておけ。寮長たるお前がそんなに取り乱してしまえば、他の生徒たちにも影響する。なにより、子犬の首が閉まって話せん」
「あら、クルーウェル…先生も一緒だったのね」
「では、気を取り直して説明しますよ…」



1/5ページ
スキ