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うつつでなりて【刀剣乱夢×twst】


「まず、あいつらの正体の前にざっくりと私のことを説明しますね」
「子犬の先ほどの力のことか?」
「ええ、あと彼らのですね」

私は背後にぴったりとくっついている薬研と加州をちらりと見る。
薬研も加州も私の視線に気づいてくれ、軽く首を振って応えてくれた。

「私が異世界から来たのは皆さん…少なくとも先生たちはもご存じでしょう。私は元の世界で審神者と呼ばれる職についてこの薬研や加州たち他にも80ほどの神様を率いて、先ほど学園を襲ったやつらと戦っていました。この世界に来てしまったあの日もそうでした」

そう、あの黒い棺にいつの間にか入れられている直前の記憶は、政府からの特命調査の帰宅途中のことだった。
私は審神者の中でも古株のほうで、さらに家柄的にもそういう不可思議な現象には慣れっこだし、事実今までもなんどかそういう依頼を家でも審神者としてでも受けてきた。
今回の調査は新時代への時間遡行軍の干渉とみられる事象があったということで、日課や通常調査とは違い自分が直接刀剣男士たちと一緒に新たな時代へと調査を行った。結果的にその事象は文明開化の音の一端であるということになり、本丸へ帰るためにゲートを開ける懐中時計を動かしていた時だった。突然審神者の目の前に時空のひずみが起き、吸い込まれてしまった。
それからはこのナイトレイブンカレッジの学園長と名乗る男に保護(雑用を押し付けられ、オーバーブロットとかいう実力者たちの闇の力を鎮めるって保護の対価にしては多すぎない?)されていたということになる。
余談だが、刀剣男士達とは懐中時計越しに連絡を取っていたので元の世界ではそれほど混乱はしてないらしい。少なくともそう聞いている。あっちでは長谷部が書類仕事をしながらこんのすけ経由で政府に私をもとの世界に戻せるようになんとかしているのだとか。

「私のいた世界では、過去へ干渉し歴史改変を目論む「歴史修正主義者」という存在がいます。歴史修正主義者は時間遡行軍という先ほどのようなものたちを使い時代に影響を与えるのです。そこで時の政府はそんな奴らに対抗すべく、私たち審神者の物に眠る想いや心を目覚めさせ力を引き出す能力で刀と呼ばれる武器に眠る神を呼び起こし、彼らとともに歴史を守ってきました」

「その時間遡行軍というやつら、学園長室にもいるぞっ!」

食堂の扉が勢いよく開いたと思ったら、額から血を流し、左肩を抑えるようにしているジャミル先輩と、そんなジャミル先輩を支えてきたらしいカリム先輩がいた。

「ジャミルが俺をかばってケガしたんだ!だれか回復魔法ができるやつはいないか!」
「では僕が…ジャミルさん、怪我は額の切り傷と肩の脱臼と打撲だけですか?」
「すまないジェイド。そうだ。脱臼は力が入らなくて自分で入れなおすことができなかった。血も見た目ほどひどい怪我にはなっていない」

「カリムくん、学園長室でなにがあったんスか?」
「ジャミルと図書館へ向かおうとして、学園長室前の廊下をあるっていたんだが、突然学園長室の扉が飛んできて、ちょうど扉側にいた俺にぶつかりそうだったからジャミルがそれを庇ったんだ!」
「おいカリム、学園長室の中はどうなってたんだ?」
「それはわからない。すまない、逃げることに精いっぱいで…」
「…わかりました。一刻の猶予もないようなので話はここで終わらせていただきます。とにかくその時間遡行軍がなぜこっちにいるのか私にもわかりませんが、時間遡行軍は彼ら刀剣男士にしか倒すことができません。私はこれから学園長室に行きます。皆さんはこの食堂から絶対出ないでください」
「主。落ち着いて」

カリム先輩の話を聞いてすぐ走り出そうとした私に待ったをかけたのは清光だった。

「そうだぜ大将。まずは状況把握とこっちの戦力を揃えなきゃいけないだろうな」

…そうだった。危ない。丸腰で敵の本拠地に特攻するところだった。

「主、俺ら二振りじゃとてもじゃないけどさばけないよ。部隊はどれだけ呼べる?」
「…2部隊がいいところかな。正直こっちでどれほど自分の力が使えるのかわからないし。あっちにいる時より霊力の消耗が半端じゃない」
「ん、わかった。じゃあ編成を考えよう。その間に薬研は偵察に行ってくれる?」
「ああ、地図か場所を案内してくれればすぐにでも出発するぜ」
「クルーウェル先生、地図とか校内の見取り図はありますか?」
「あ、ああ。ちょっと待て、その子供一人に行かせる気か!?」
「彼らは人間のような為りをしてますが、神です。年だけで言ったらここの誰よりも生きてますよ。それに今は彼一人に頼るしかないんです」
「…ならルチルスを連れて行きなさい。この子は使い魔だからたとえ何かあっても無事だし、私と念話でつながることができるからメッセンジャーにもなる。この子に話しかければそのまま私に伝わる」

トレイン先生がそう言っていつもは腕に抱いているルチルスを薬研の前に降ろした。

「じゃあ大将行ってくるぜ!猫の旦那、案内よろしく頼むぜ!」
「なぁん」
「薬研!すぐ増援を送るからそれまで持ちこたえて!」
「はいよ!」
「ではわしもついていこう。学園長室にはマレウスがいるはずじゃ」
「…ダメって言っても行くんでしょうから止めませんけど、くれぐれも気を付けてくださいね」
「わかっとるよ人の子よ。わしやマレウスでも奴らを仕留めることは難しいじゃろう。せいぜいあの薬研とかいう者の邪魔はするまい」

リリア先輩も行ってしまった。まあマレウス先輩もいるらしいししょうがないだろう。

「主、部隊の編成と、作戦会議をしよう」
「うん。まずは校舎内の把握もしなきゃ…クルーウェル先生、校内図ありがとうございます。清光、あいつらの気配はどこまで感じる?」

私はクルーウェル先生が魔法で出した校内図をもらい、食堂のテーブルに広げる。
そしてついでに出してもらったペンで食堂に赤丸を付け「本丸」と記入し、学園長室には青ペンでバツ印を付ける。

「この、バツのところはやばいね。ここが一番いやな感じがする。あとは南にも小さいけどいくつか…このあたりかな」

清光が赤でバツを付けたところは学園の南棟で通常授業するための教室があるところだった。

「基本校内になるから大太刀とか薙刀は少ないほういいわね」
「こっちの時間遡行軍もあっちと変わらない強さだから、練度が高い奴らのほうがいいよ」
「だとすると、極の子たちとカンスト太刀中心かな」

私は校内図の余白に3部隊の編成を書く。

「主、2部隊じゃなかったの?3部隊とか無理しないでよ!」
「加州清光。時には無理をしてでも為さなければならないことがある。それはあなたも身をもって知っているでしょう」
「…わーかったよ!でもホントにやばいと思った時は退却するからね!」
「ではゲートを開けます!」

第一部隊、加州清光、薬研藤四郎、今剣、骨喰藤四郎、三日月宗近、蛍丸
第二部隊、厚藤四郎、乱藤四郎、小夜左文字、岩融、髭切、膝丸
第三部隊、白山吉光、大和守安定、堀川国広、和泉守兼定、燭台切光忠、鶴丸国永

私が集中するとあたりに桜の香りがしてくる。
懐かしい、やさしい香り。
…そして、桜吹雪とともに私の神様が姿を見せた。

「この三日月宗近、主の為に参ったぞ」
「…みんな、懐中時計を通して話していたとは言え久しぶりに会えたけど、こき使うからよろしくね!」
「あるじさま!ぼくひさしぶりのしゅつじんたのしみです!」
「うん!じゃあ第二部隊は学校の南側を、第三部隊は基本食堂周辺をお願いね」
「ちょっと待て、草食動物。そいつらだけじゃあ道順とか不便だろ。俺たちを連れていけ」
「レオナ先輩。でも危険です」
「ハッ!さっきはこき使っておいて。それとも何か?俺たちの力は信用ならねぇってか」
「…確かに寮長や副寮長レベルの方は多少なりとも頼りにはなりますけど、さっきのでかなりブロッドがたまってるんじゃ…」
「こんなもん回復薬飲めばすぐ回復する。…お前は自分たちの城が燃えるのをただ指くわえて待ってろってひでーこというのか?」

確かに、私も自分の本丸を他のものに任せて自分は何もせずにいる…そんなことはできない。

「わかりました。くれぐれも危険な目に合う前に撤退してくださいね。いける人は誰ですか?」
「サバナクローからは俺とジャック」
「ハーツラビュルは僕とトレイとケイト」
「オクタヴィネルはジェイドとフロイドを出しましょう。僕はここで怪我人の手当てをしますから、怪我した場合は速やかに来てください」
「スカラビアはオレが!」
「カリムはダメだ。どうしてもというなら俺が行く」
「ルーク、行くんでしょう」
「ウィ」
「小じゃが、ルークを使いなさい。私はここで回復系の魔法薬を作るわ」
「い、イグニハイドは後方支援ということで学園中にある監視カメラにハッキングして監督生氏に情報提供ってことで…」
「子犬、この場はトレイン先生に任す。俺も学園長室に行く」
「了解です。ではサバナクローとハーツラビュルの皆さんは第二部隊と一緒に南棟へ行ってください。厚、頼んだよ!」
「任せてくれよ大将!」
「スカラビアとイグニハイドとヴィル先輩は食堂ですね。ジャミル先輩は無理しないでください。カリム先輩、カリム先輩が動くとジャミル先輩も動かざる負えないのでジャミル先輩のいうことはちゃんと聞いてください。白山、傷ついた子たちの手当てをお願い。光忠は…ごはん作っておいてくれる?途中霊力回復するかもしれないし。鶴丸と安定、堀川と和泉ちゃんは周辺を警戒して」
「白山吉光、あるじさまの命、引き受けました」
「材料次第だけど主の好きなスイーツを作って届けるよ」
「主といると驚きの連続でいいな!」
「うん、みんなよろしくね。では第一部隊隊長加州清光、薬研藤四郎、今剣、骨喰藤四郎、三日月宗近、蛍丸」
「ん、主、準備はできてるよ」
「クルーウェル先生と、ジェイド先輩とフロイド先輩、ルーク先輩は私たちについてきてください。学園長室を目指します。今剣、骨喰は先に薬研が行ってるから加勢してきて!場所はここね」
「子犬、移動魔法使えば早い」
「ルチウスが、学園長室中で交戦中といっている。今なら学園長室から少し離れたところに移動可能と」
「わかりました!じゃあ三日月と蛍丸を先に移動魔法で送ってください」
「ああ、わかった」
「三日月、蛍丸。薬研と交代して、もし怪我人がいたら食堂へ連れてきてって言っておいて」
「あい、わかった」
「はーい」
「では行くぞ」
「では刀剣男士よ、武運を祈る!」

そうして私たちも学園長室へと走る。途中、札を巻いて結界を張ったり、今剣に頼んで時間遡行軍がいないか上から見てもらったりする。

「皆さんは知りながらですけど聞き逃さないように。まず学園長室に付いたら中にいる生徒と学園長を助け出します。怪我人がいるかもしれないので、ジェイド先輩の魔力は回復魔法に使ってください。フロイド先輩は防御魔法中心にお願いします」
「かしこまりました」
「りょ~か~い」
「ルーク先輩は何か武器とか使えますか?」
「弓なら心得はあるよ。実践魔法でほらこの通り」

おお、どこかもなく弓矢が出た。実践魔法って何でもありか?

「であれば、このお札を矢に括り付けて攻撃してください。これがあれば敵もひるむくらいはするはずです。くれぐれも自分のいのちだいじに!でお願いします」
「ウィ!」
「学園長室までもう少しです!」



ーーーーーーーーーメモーーーーーーーーー
場面切り替わる(次回から三人称になる。ので、前編と①は直しが必要)

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