女性審神者の名前です。
菜の花「この本丸で俺たちと話すのって違和感ないの?」
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~薙side~
神社の鳥居を見た瞬間、懐かしい感じがした。私の中の何かが“ここではない”と言っているけれど、神社暮らしが長かった私にとっては懐かしさを感じるにはそれで充分だった。石切丸さんも同じようで、2振りで微笑み合った。
「遥様、おかえりなさいませ」
「おじさん、畏まらなくていいってば」
「さすがに審神者様にフランクに迎えるわけにはいかないさ。これだけは許しておくれ」
燭台切さんが主様に尋ねた通り、審神者は現世ではそれなりの立場にあるようで、神社でもお寺と同じように私たちを迎えて下さった。少し後ろにいらっしゃる女性は着物を着ていて、更にその横には浅黄色の袴を着た青年が立っている。この神社を守るご家族なのだとすぐに分かった。彼は私と石切丸さんを見るなり目を見開いている。
「神様と御神刀…」
その青年は霊感が強いからすぐに分かるのだと主様が教えて下さった。石切丸さんは神社暮らしが長くて御神刀であった記憶がある一方で、私は記憶を全て取り戻しているわけではないし、神様として扱われた記憶も曖昧だからどんな表情をしたら良いのか分からない。
それより、ここの神様は…?
「あ…」
本殿に確かに神様がいる。穏やかな表情でこちらを見ていて、風がふわりと吹いて私たちを歓迎してくれた。
「薙ちゃんは見えるのかい?」
燭台切さんの問いに頷いた。石切丸さんは神様の気配しか感じられないようだ。
「じゃあ早速ご挨拶しようか」
まるで私たちだけの為に待っていたように参拝客はいない(私たちもそう括って良いのか分からないけど)。これならゆっくりご挨拶が出来そうだ。
「投資全勝祈願!」
「博多さん、心の中でお願いするんだよ」
「しもうた、つい口に出てしもうたばい」
それぞれがご挨拶と祈願をした。主様は今回の遠征が楽しいものになるよう見守っていただきたい、とお願いしたようだ。
神主様がお茶を淹れるとのことで行ってみると、主様が渡した最中と芋羊羹が並べられていた。神様もまずは一息つくと良いと仰って下さったので、ひとまずそれをいただくことにした。ここで、主様のお母様が仰っていた“だいちゃん”こそが浅黄色の袴を着た青年で、この神社を継ぐご子息、そして主様の幼馴染と教えてくれた。多分主様より少し年上…だと思う。
「今年は厄払いが多くてな。やっと落ち着いたところだ」
私が神社にいた頃は見掛けたことはなかったけれど、厄年の人々が集まる同窓会は全員で厄払いを受けるらしい。個人的に厄年でなくても毎年厄払いを受けに訪れる参拝客や、他にも“車”を買い替えた人々の交通安全祈願、地鎮祭など多岐に渡るようだ。
「それにしても、付喪神様と審神者様が参拝して下さるというのは不思議なものだ」
「そういうものなのかな?」
主様はぴんときていないようだ。元々幼馴染が神社の家系で身近だろうし、連合を組んでいる紫様も神社の家系。その話を聞いている私たちにとっては自然なことなんだろうけど、私はちょっと違うかもしれない。
しばらく他愛もない話をした後、ぶわりと風が吹いて木々が揺れた。神様が話したいようで手招きしている。話し相手を見つけたのもあるのだろうけれど、どうやらちょっとお茶目な性格らしい。
“誰かと話すのは久方ぶりだ。そなたは五穀豊穣を司る神のようだな”
“あなた様も五穀豊穣のご利益があるとお見受けしますが…”
“土地柄あまり縁がない。稀に趣味で野菜を育てている者たちの願いを聞くことはあるが”
“厄払い、病気治癒、合格祈願の参拝客が多いようですね”
現世では年明けに大きな試験を受ける者が多く、それに合わせて訪れる参拝客が増えるのだと教えてくれた。私は五穀豊穣だけなので大変そうだ。そう伝えると神様は豪快に笑ってみせた。
“それが我の仕事だからな。そなたの五穀豊穣は森羅万象の象徴だ。現世にいる間も畑を見つけたら願ってやるといい。きっと豊作になるだろう”
“ありがとうございます”
“ところで、投資全勝祈願と口に出しておった者がおったな。高価なものを買う時は気を付けよ、と伝えてくれ。少しずつ蓄えると良い”
さすがというか、全てお見通しらしい。乱ちゃんはお金の使い過ぎには気を付けること、それでも欲しいものの縁には恵まれること、小夜くんにはそのまま植物を愛で続ければ問題ないこと、燭台切さんは火傷に気を付けるよう助言を下さった。石切丸さんと私に関しては人の身を得られて羨ましいと言われて、笑いを堪えるのに必死になってしまった。
“この神社の方々にお伝えすることはございますか?”
“審神者が持って来た最中を持って来るよう言ってくれぬか”
「ブフッ」
たまらず吹き出した。
甘いものがお好きなようで、毎日でなくても良いからたまには供えてほしい、とのことだった。
すぐにそれを伝えると神主様が大急ぎでお供えに行って、そこからちらりと神様を見るとほくほくと満面の笑みを浮かべていて更に吹き出してしまった。
帰りに本殿を見たら話し相手がいなくなってしょげていたのは私だけの秘密にしよう。
神社の鳥居を見た瞬間、懐かしい感じがした。私の中の何かが“ここではない”と言っているけれど、神社暮らしが長かった私にとっては懐かしさを感じるにはそれで充分だった。石切丸さんも同じようで、2振りで微笑み合った。
「遥様、おかえりなさいませ」
「おじさん、畏まらなくていいってば」
「さすがに審神者様にフランクに迎えるわけにはいかないさ。これだけは許しておくれ」
燭台切さんが主様に尋ねた通り、審神者は現世ではそれなりの立場にあるようで、神社でもお寺と同じように私たちを迎えて下さった。少し後ろにいらっしゃる女性は着物を着ていて、更にその横には浅黄色の袴を着た青年が立っている。この神社を守るご家族なのだとすぐに分かった。彼は私と石切丸さんを見るなり目を見開いている。
「神様と御神刀…」
その青年は霊感が強いからすぐに分かるのだと主様が教えて下さった。石切丸さんは神社暮らしが長くて御神刀であった記憶がある一方で、私は記憶を全て取り戻しているわけではないし、神様として扱われた記憶も曖昧だからどんな表情をしたら良いのか分からない。
それより、ここの神様は…?
「あ…」
本殿に確かに神様がいる。穏やかな表情でこちらを見ていて、風がふわりと吹いて私たちを歓迎してくれた。
「薙ちゃんは見えるのかい?」
燭台切さんの問いに頷いた。石切丸さんは神様の気配しか感じられないようだ。
「じゃあ早速ご挨拶しようか」
まるで私たちだけの為に待っていたように参拝客はいない(私たちもそう括って良いのか分からないけど)。これならゆっくりご挨拶が出来そうだ。
「投資全勝祈願!」
「博多さん、心の中でお願いするんだよ」
「しもうた、つい口に出てしもうたばい」
それぞれがご挨拶と祈願をした。主様は今回の遠征が楽しいものになるよう見守っていただきたい、とお願いしたようだ。
神主様がお茶を淹れるとのことで行ってみると、主様が渡した最中と芋羊羹が並べられていた。神様もまずは一息つくと良いと仰って下さったので、ひとまずそれをいただくことにした。ここで、主様のお母様が仰っていた“だいちゃん”こそが浅黄色の袴を着た青年で、この神社を継ぐご子息、そして主様の幼馴染と教えてくれた。多分主様より少し年上…だと思う。
「今年は厄払いが多くてな。やっと落ち着いたところだ」
私が神社にいた頃は見掛けたことはなかったけれど、厄年の人々が集まる同窓会は全員で厄払いを受けるらしい。個人的に厄年でなくても毎年厄払いを受けに訪れる参拝客や、他にも“車”を買い替えた人々の交通安全祈願、地鎮祭など多岐に渡るようだ。
「それにしても、付喪神様と審神者様が参拝して下さるというのは不思議なものだ」
「そういうものなのかな?」
主様はぴんときていないようだ。元々幼馴染が神社の家系で身近だろうし、連合を組んでいる紫様も神社の家系。その話を聞いている私たちにとっては自然なことなんだろうけど、私はちょっと違うかもしれない。
しばらく他愛もない話をした後、ぶわりと風が吹いて木々が揺れた。神様が話したいようで手招きしている。話し相手を見つけたのもあるのだろうけれど、どうやらちょっとお茶目な性格らしい。
“誰かと話すのは久方ぶりだ。そなたは五穀豊穣を司る神のようだな”
“あなた様も五穀豊穣のご利益があるとお見受けしますが…”
“土地柄あまり縁がない。稀に趣味で野菜を育てている者たちの願いを聞くことはあるが”
“厄払い、病気治癒、合格祈願の参拝客が多いようですね”
現世では年明けに大きな試験を受ける者が多く、それに合わせて訪れる参拝客が増えるのだと教えてくれた。私は五穀豊穣だけなので大変そうだ。そう伝えると神様は豪快に笑ってみせた。
“それが我の仕事だからな。そなたの五穀豊穣は森羅万象の象徴だ。現世にいる間も畑を見つけたら願ってやるといい。きっと豊作になるだろう”
“ありがとうございます”
“ところで、投資全勝祈願と口に出しておった者がおったな。高価なものを買う時は気を付けよ、と伝えてくれ。少しずつ蓄えると良い”
さすがというか、全てお見通しらしい。乱ちゃんはお金の使い過ぎには気を付けること、それでも欲しいものの縁には恵まれること、小夜くんにはそのまま植物を愛で続ければ問題ないこと、燭台切さんは火傷に気を付けるよう助言を下さった。石切丸さんと私に関しては人の身を得られて羨ましいと言われて、笑いを堪えるのに必死になってしまった。
“この神社の方々にお伝えすることはございますか?”
“審神者が持って来た最中を持って来るよう言ってくれぬか”
「ブフッ」
たまらず吹き出した。
甘いものがお好きなようで、毎日でなくても良いからたまには供えてほしい、とのことだった。
すぐにそれを伝えると神主様が大急ぎでお供えに行って、そこからちらりと神様を見るとほくほくと満面の笑みを浮かべていて更に吹き出してしまった。
帰りに本殿を見たら話し相手がいなくなってしょげていたのは私だけの秘密にしよう。
