女性審神者の名前です。
沈丁花「わしに何が起こったがか教えとーせ…」
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~薙side~
「虎くんっ、ダメだよ…!」
「もふ丸、戻って、おいでっ…!」
「むむむむ無理ですぅ~~!!」
「…構わん」
「え?」
どうにか聞き取れた小さくて低い声。「構わん」と聞こえたのは私の聞き間違いだろうか。
「今日も冷える。だから構わん。これも汚れようが破れようが戦に支障はない」
聞き間違いではなかった。ちょっと意外な答えに大倶利伽羅さんの優しさを感じる。
「…それよりも」と頭上で怯えるもふ丸を見た。
「お前はいつまで虎たちに怯えている?薙が出陣した時、そのままでは薙がどうなっても知らんぞ」
「そっ、それはっ…!」
図星を突かれて何も返せないもふ丸。
大倶利伽羅さん、いつの間にもふ丸が虎たちと馴染めてないのを知ったんだろう…?
いずれにしても良い機会かもしれない。長曽祢さんの肩に乗ったのも薬研くんの実力行使と聞いているから、これもまた手か。
大倶利伽羅さんの隣に座らせてもらい、ひょい、と彼の髪が乱れないようにもふ丸を掬い上げる。そうして膝に乗せて、彼の膝の上でごろごろと喉を鳴らす虎と対面させた。
「ぎにゃっ…」
硬直するもふ丸に対して、虎は興味深そうにもふ丸の匂いを嗅いでいる。ちなみに残りの虎たちは五虎退くんと一緒にいた鳴狐さんと不動くん(虎たちで暖を取るのが好きらしい)、もふ丸の悲鳴を聞いて駆け付けた陸奥守に確保されている。
「何じゃあもふ丸、まだ五虎退の虎たちと仲良うなれちょらんのか」
「ハ、ハムスターはただの捕食対象ですのでぇっ…!」
「大丈夫でございますよ、もふ丸殿。五虎退殿の虎たちは賢いので食べたりはしません。…ほら、仲良くなりたがっているではありませんか」
「…大丈夫だよ」
「そう言われましてもぉ…」
皆に「大丈夫だから」と言われても硬直したままのもふ丸。それに見兼ねた陸奥守が「ちっくと待っちょれ」と何処かへ向かってしまった。解放された1匹がもふ丸のところへ寄っていく。
「薙、今までお世話になりました…」
「何言ってんだコイツ」
ちょいちょい、と魂が抜けそうなもふ丸の頭をいじる不動くんの横で、大倶利伽羅さんが念の為なのかもう1匹を抱きかかえた。
「薙、ここにいたか」
どうしたものかと考えていたところにやって来たのは長谷部さん。主様が薬研くんと一緒に来てほしいとのことで、私は席を外さなければならなくなった。
「薙もある程度話せるようになってるしさ、もふ丸のことは俺たちに任せてくれよ」
「なっ…?!」
絶句するもふ丸にこくりと頷く。手のひらで包むように不動くんの手にもふ丸を移らせて席を立った。
「わたくしめが間に入りますゆえ、ご安心下さいませ」
「お願い、します」
そうして稽古場にいた薬研くんに声を掛けて主様の元へ向かう。
遊玄 様のところの薬研くんが漢方薬の原材料を調達しに遠征することが決まったようで、この本丸でも何か必要なものはないか、とのことだった。
連合システムはこういったことも出来るらしい。確かに効率が良い。
「俺もちょうど欲しいもんがあるんだ。頼めるか?」
「メモを渡してくれれば遊玄様に伝えるよ。今日中にお願い」
「分かった」
「薙は何か欲しいものはない?ある程度は手に入るんじゃないかな」
手に顎を当てて考えてみる。そうして思い浮かんだものが1つ。
「お香の、指南書は、手に入り…ますか?」
「うん、買えるはずだよ。ちょうどお香の原材料の栽培が始まった時代だからね」
紫 様も香道にお詳しい方だからいつかお話を聞きたいところだけど、交流する機会は今のところなさそうだし、何より出来る限り自分で学びたい。
「今回は原材料と指南書だけでいいかな。もし他に必要なものがあったら私たちで行けばいいし」
「そうだな、それがいい」
私を呼んだのは、近侍としてこういった仕事があると教えたかったかららしい。
そうして途中まで一緒に歩いているところで、薬研くんが意外そうに私に話し掛ける。
「香道に興味を持ったのは、大将が作った香を焚いていたからか?」
「それも、あるよ。気分を整える効果が…あるって聞いて。もしかしたら、みんなの役に立てるかも、って思った…の」
「やっぱり薙は優しいな。いつも皆のことを考えてくれてる。俺たち粟田口のことも気に掛けてくれるしな」
「私に、出来ることは、これぐらい…だから」
「頼りにしてるぜ」と返してくれた薬研くんが手合わせに戻っていく。きっと夕餉までずっと稽古場にいるんだろう。
そうしてもふ丸たちのところへ戻ると、何だか賑やかな声が聞こえてきた。さっきとは真逆の雰囲気に何事かと向かってみると、そこには虎に乗ってはしゃぐもふ丸の姿があった。
「虎くんは速いですねぇ!」
…何があったの。
きょとんとしている私に陸奥守がにかっと笑顔を見せる。聞けば菓子を持って来て、同じものを食べさせて距離を縮めさせたらしい。美味しそうに食べる虎たちに自分の分を分けてみたら仲良くなれたそうだ。
「ふっ…」
その様子に満更でもない大倶利伽羅さんの口角が少しだけ上がる。
「大倶利伽羅、さんも、ありがとう…ございます」
「別に俺は何もしていない。こいつらが勝手に仲良くなっただけだ」
そう言って立ち上がって何処かへ行ってしまった。
「あいつはな、ああ見えて動物が好きなんじゃ。ありゃまっこと嬉しがっちゅう」
「そうそう。“慣れ合うつもりはない”って口癖みたいに言ってるんだけどさ、動物は別なのかもな」
宴の時に言っていた鶴丸さんの言葉を思い出す。話し掛けにくいと思っていたけど、実はそうでもない人なんだ、と大倶利伽羅さんが歩いて行った方を見やった。
「虎くんっ、ダメだよ…!」
「もふ丸、戻って、おいでっ…!」
「むむむむ無理ですぅ~~!!」
「…構わん」
「え?」
どうにか聞き取れた小さくて低い声。「構わん」と聞こえたのは私の聞き間違いだろうか。
「今日も冷える。だから構わん。これも汚れようが破れようが戦に支障はない」
聞き間違いではなかった。ちょっと意外な答えに大倶利伽羅さんの優しさを感じる。
「…それよりも」と頭上で怯えるもふ丸を見た。
「お前はいつまで虎たちに怯えている?薙が出陣した時、そのままでは薙がどうなっても知らんぞ」
「そっ、それはっ…!」
図星を突かれて何も返せないもふ丸。
大倶利伽羅さん、いつの間にもふ丸が虎たちと馴染めてないのを知ったんだろう…?
いずれにしても良い機会かもしれない。長曽祢さんの肩に乗ったのも薬研くんの実力行使と聞いているから、これもまた手か。
大倶利伽羅さんの隣に座らせてもらい、ひょい、と彼の髪が乱れないようにもふ丸を掬い上げる。そうして膝に乗せて、彼の膝の上でごろごろと喉を鳴らす虎と対面させた。
「ぎにゃっ…」
硬直するもふ丸に対して、虎は興味深そうにもふ丸の匂いを嗅いでいる。ちなみに残りの虎たちは五虎退くんと一緒にいた鳴狐さんと不動くん(虎たちで暖を取るのが好きらしい)、もふ丸の悲鳴を聞いて駆け付けた陸奥守に確保されている。
「何じゃあもふ丸、まだ五虎退の虎たちと仲良うなれちょらんのか」
「ハ、ハムスターはただの捕食対象ですのでぇっ…!」
「大丈夫でございますよ、もふ丸殿。五虎退殿の虎たちは賢いので食べたりはしません。…ほら、仲良くなりたがっているではありませんか」
「…大丈夫だよ」
「そう言われましてもぉ…」
皆に「大丈夫だから」と言われても硬直したままのもふ丸。それに見兼ねた陸奥守が「ちっくと待っちょれ」と何処かへ向かってしまった。解放された1匹がもふ丸のところへ寄っていく。
「薙、今までお世話になりました…」
「何言ってんだコイツ」
ちょいちょい、と魂が抜けそうなもふ丸の頭をいじる不動くんの横で、大倶利伽羅さんが念の為なのかもう1匹を抱きかかえた。
「薙、ここにいたか」
どうしたものかと考えていたところにやって来たのは長谷部さん。主様が薬研くんと一緒に来てほしいとのことで、私は席を外さなければならなくなった。
「薙もある程度話せるようになってるしさ、もふ丸のことは俺たちに任せてくれよ」
「なっ…?!」
絶句するもふ丸にこくりと頷く。手のひらで包むように不動くんの手にもふ丸を移らせて席を立った。
「わたくしめが間に入りますゆえ、ご安心下さいませ」
「お願い、します」
そうして稽古場にいた薬研くんに声を掛けて主様の元へ向かう。
連合システムはこういったことも出来るらしい。確かに効率が良い。
「俺もちょうど欲しいもんがあるんだ。頼めるか?」
「メモを渡してくれれば遊玄様に伝えるよ。今日中にお願い」
「分かった」
「薙は何か欲しいものはない?ある程度は手に入るんじゃないかな」
手に顎を当てて考えてみる。そうして思い浮かんだものが1つ。
「お香の、指南書は、手に入り…ますか?」
「うん、買えるはずだよ。ちょうどお香の原材料の栽培が始まった時代だからね」
「今回は原材料と指南書だけでいいかな。もし他に必要なものがあったら私たちで行けばいいし」
「そうだな、それがいい」
私を呼んだのは、近侍としてこういった仕事があると教えたかったかららしい。
そうして途中まで一緒に歩いているところで、薬研くんが意外そうに私に話し掛ける。
「香道に興味を持ったのは、大将が作った香を焚いていたからか?」
「それも、あるよ。気分を整える効果が…あるって聞いて。もしかしたら、みんなの役に立てるかも、って思った…の」
「やっぱり薙は優しいな。いつも皆のことを考えてくれてる。俺たち粟田口のことも気に掛けてくれるしな」
「私に、出来ることは、これぐらい…だから」
「頼りにしてるぜ」と返してくれた薬研くんが手合わせに戻っていく。きっと夕餉までずっと稽古場にいるんだろう。
そうしてもふ丸たちのところへ戻ると、何だか賑やかな声が聞こえてきた。さっきとは真逆の雰囲気に何事かと向かってみると、そこには虎に乗ってはしゃぐもふ丸の姿があった。
「虎くんは速いですねぇ!」
…何があったの。
きょとんとしている私に陸奥守がにかっと笑顔を見せる。聞けば菓子を持って来て、同じものを食べさせて距離を縮めさせたらしい。美味しそうに食べる虎たちに自分の分を分けてみたら仲良くなれたそうだ。
「ふっ…」
その様子に満更でもない大倶利伽羅さんの口角が少しだけ上がる。
「大倶利伽羅、さんも、ありがとう…ございます」
「別に俺は何もしていない。こいつらが勝手に仲良くなっただけだ」
そう言って立ち上がって何処かへ行ってしまった。
「あいつはな、ああ見えて動物が好きなんじゃ。ありゃまっこと嬉しがっちゅう」
「そうそう。“慣れ合うつもりはない”って口癖みたいに言ってるんだけどさ、動物は別なのかもな」
宴の時に言っていた鶴丸さんの言葉を思い出す。話し掛けにくいと思っていたけど、実はそうでもない人なんだ、と大倶利伽羅さんが歩いて行った方を見やった。
