女性審神者の名前です。
沈丁花「わしに何が起こったがか教えとーせ…」
空欄の場合はデフォルト名になります
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
~薙side~
この日の近侍の仕事は夕餉後に終わった。
多くの男士は既に寝たようだけれど、何故か今夜は眠れそうにない。お風呂とスキンケア、ストレッチを済ませても眠気が来なくて、先に寝たもふ丸を眺めているうちに、ぼんやりと考え事をし始めていた。さっき思い出した記憶のことだ。
きれいな着物だったなぁ…。
きっと前の主様は同じようなお召し物で2人の少女と共に過ごしていたんだと思う。前の主様と同じ視線のように見えたということは、きっと私もその場にいたんだということになるんだろうけれど、巫女服を着た女性が薙刀を持って田んぼに立っていた姿とどう結び付くのかが分からない。そもそも、身分の高い者が巫女服を着ることはあるんだろうか。
だとしても、祭事らしきものが見えたのにも納得がいく。脇差として神社にいた頃に豊作だったと感謝された記憶と繋げると、薙刀時代から豊作祈願にまつわることに関わっていたのかもしれない。
…そっか。あの時思い出したのは、私が薙刀だった頃の記憶なんだ。
この間粟田口の子たちと遊んだ“パズル”で例えるならば、記憶のピース。それが繋がったような気がした。
でも、どうして私は脇差に生まれ変わったんだろ…。
しかも、脇差での戦い方が分からない。“薙刀直し”をされた鯰尾くんも骨喰くんは充分に戦えている。…ということは、脇差ではあまり実戦で使われなかった可能性が充分に有り得る。ここは考えれば考えるほど分からなくなる。この部分に関しては、前の主様を思い出さないと理由は分からない。
整理してみよう。
・薙刀時代に祭事に参加していた(豊作祈願?)
・その後、何らかの理由で薙刀から脇差へ(実戦経験は少ない?)
・男の人が私を神社へ持って行った後に奉納された(神社は不明。関東?)
・神社での生活→豊作祈願の利益がある神様(刀剣)として存在していた。
・空襲で焼身になる→その後の行方は不明(誰かに引き取られた?)
・前の主様には妹君もしくは息女がいる(いつ?)
抜けているところがあるかもしれないけれど、大体はこんな感じだろう。
豊作祈願、か…。
そこでふと体が何かを思い出した。このままだと眠れる気配は一向にない。体が求めるままにジャージに着替えて稽古場に向かってみた。
「……」
木刀の薙刀を手に取ってみると、脇差よりしっくりくる。やっぱり私は薙刀での実戦経験の方が長いんだろう。
岩融さん、少々お借りします。
素振りをした後、相手がいる体であれこれと立ち回ってみる。
うん、いい感じ。
楽しくなってきて色々と動いているうちに汗をかいてきて、寝る前にさっと内湯に入ろうかと思っていたところに、人の気配。
しまった。
今の私は脇差。薙刀を振るっている姿を見られたら怒られてしまう。ゆっくりとそちらを見やると不動くんだった。何故かぼーっと私を見ている。
「あ、え…と…」
不動くんとこうやって話すのは初めて。どうしたら良いのか分からずにいると、我に返った様子で「盗み見してごめんな」と謝られた。
「見て、た…?」
「あ、いや…、まぁ…。ここの電気がついていたから来てみたんだけどさ…」
「薙がいるとは思わなかった」と呟く不動くん。彼がこのことを言いふらす男士には思えないし、「内緒にして」と言うのも違う気がする。
「眠…れ、なくて」
「分かるよ。そういう時ってあるよな」
その場しのぎではない様子の言葉にほっとした。
座って扉に寄り掛かった不動くんの隣に座って少し話すことにした。
「俺の前の主ってさ、織田信長公なんだよ。旅に出るまで信長公のことばかり考えてさ、最期が最期だったからずっと俺はダメ刀って思ってたんだ。そうやってくよくよしてたから、眠れない日が多かったし、酒にも溺れてた」
特に気持ちが落ち込んでいた日は、夜中にこっそりとここに来ていたのだと教えてくれた。
「今も信長公について思うことはあるよ。でも、今の主の守り刀としてありたいって気持ちが強いんだ」
守り刀…。
何だろう、その感覚を知っている気がした。考え込む私に変に記憶を刺激してしまったのかと焦る不動くんにゆっくりと首を横に振った。
「そっか…」
「え?」
「もし…かしたら、私は、前の主様の、守り刀…として、脇差、になったのかも」
ぱちり、と記憶のピースが更にはまった感覚がした。“薙刀直し”は主戦力となる刀種が移り変わって薙刀の価値が薄れた時代に行われたものだと聞いている。前の主様は私を薙刀から脇差に直した。そして、守り刀としてお傍に置いて下さったんだ。
「そうだよ、きっとそうだ!」
それなら実戦経験が少ないのにも納得がいく。打刀と一緒に差して、打刀の出番の方が多かった。そして、私を使わずに済んだ。
「ありがとう…」
「俺は何もしてないよ。…でも、薙の力になれて良かった。この調子で色々思い出せるといいな」
笑顔で頷く。会話が一段落したところで、ふと不動くんが思い出したように「そういえばさ」と私を見た。
「薙のさっきの動きってさ、何と言うか、舞ってるみたいに見えたんだよな」
舞っている?どういうことなのだろう。
「いやもちろん実戦的な動きでもあったんだけどさ。俺の見間違いかなぁ」
2振りで「うーん」と首を傾げる。ここは岩融さんに見てもらった方が良いのだろうか。
「少なくとも俺にはキレイな舞にも見えたよ。何か意味があるのかもな」
「…そうかも」
「なぁ薙、気付いてるか?」
「え?」
何のことか分からずにまた首を傾げると、不動くんらしい笑顔でこう言ってくれた。
「話し方がもっと自然になってる」
「あ…、本当…だ…」
「何だか自分のことのように嬉しいよ。いつか俺たちと同じくらい喋れるようになったらさ、次郎太刀の居酒屋スペースで一緒に飲もうよ。絶対楽しいぜ!」
「うん」
「さ、そろそろ寝よう。明日に響いちゃうからな」
先に立ち上がった不動くんが手を差し出してくれて、その手を借りて立ち上がる。木刀を元の場所に戻して、電気を消して途中まで一緒に部屋へと戻った。
この日の近侍の仕事は夕餉後に終わった。
多くの男士は既に寝たようだけれど、何故か今夜は眠れそうにない。お風呂とスキンケア、ストレッチを済ませても眠気が来なくて、先に寝たもふ丸を眺めているうちに、ぼんやりと考え事をし始めていた。さっき思い出した記憶のことだ。
きれいな着物だったなぁ…。
きっと前の主様は同じようなお召し物で2人の少女と共に過ごしていたんだと思う。前の主様と同じ視線のように見えたということは、きっと私もその場にいたんだということになるんだろうけれど、巫女服を着た女性が薙刀を持って田んぼに立っていた姿とどう結び付くのかが分からない。そもそも、身分の高い者が巫女服を着ることはあるんだろうか。
だとしても、祭事らしきものが見えたのにも納得がいく。脇差として神社にいた頃に豊作だったと感謝された記憶と繋げると、薙刀時代から豊作祈願にまつわることに関わっていたのかもしれない。
…そっか。あの時思い出したのは、私が薙刀だった頃の記憶なんだ。
この間粟田口の子たちと遊んだ“パズル”で例えるならば、記憶のピース。それが繋がったような気がした。
でも、どうして私は脇差に生まれ変わったんだろ…。
しかも、脇差での戦い方が分からない。“薙刀直し”をされた鯰尾くんも骨喰くんは充分に戦えている。…ということは、脇差ではあまり実戦で使われなかった可能性が充分に有り得る。ここは考えれば考えるほど分からなくなる。この部分に関しては、前の主様を思い出さないと理由は分からない。
整理してみよう。
・薙刀時代に祭事に参加していた(豊作祈願?)
・その後、何らかの理由で薙刀から脇差へ(実戦経験は少ない?)
・男の人が私を神社へ持って行った後に奉納された(神社は不明。関東?)
・神社での生活→豊作祈願の利益がある神様(刀剣)として存在していた。
・空襲で焼身になる→その後の行方は不明(誰かに引き取られた?)
・前の主様には妹君もしくは息女がいる(いつ?)
抜けているところがあるかもしれないけれど、大体はこんな感じだろう。
豊作祈願、か…。
そこでふと体が何かを思い出した。このままだと眠れる気配は一向にない。体が求めるままにジャージに着替えて稽古場に向かってみた。
「……」
木刀の薙刀を手に取ってみると、脇差よりしっくりくる。やっぱり私は薙刀での実戦経験の方が長いんだろう。
岩融さん、少々お借りします。
素振りをした後、相手がいる体であれこれと立ち回ってみる。
うん、いい感じ。
楽しくなってきて色々と動いているうちに汗をかいてきて、寝る前にさっと内湯に入ろうかと思っていたところに、人の気配。
しまった。
今の私は脇差。薙刀を振るっている姿を見られたら怒られてしまう。ゆっくりとそちらを見やると不動くんだった。何故かぼーっと私を見ている。
「あ、え…と…」
不動くんとこうやって話すのは初めて。どうしたら良いのか分からずにいると、我に返った様子で「盗み見してごめんな」と謝られた。
「見て、た…?」
「あ、いや…、まぁ…。ここの電気がついていたから来てみたんだけどさ…」
「薙がいるとは思わなかった」と呟く不動くん。彼がこのことを言いふらす男士には思えないし、「内緒にして」と言うのも違う気がする。
「眠…れ、なくて」
「分かるよ。そういう時ってあるよな」
その場しのぎではない様子の言葉にほっとした。
座って扉に寄り掛かった不動くんの隣に座って少し話すことにした。
「俺の前の主ってさ、織田信長公なんだよ。旅に出るまで信長公のことばかり考えてさ、最期が最期だったからずっと俺はダメ刀って思ってたんだ。そうやってくよくよしてたから、眠れない日が多かったし、酒にも溺れてた」
特に気持ちが落ち込んでいた日は、夜中にこっそりとここに来ていたのだと教えてくれた。
「今も信長公について思うことはあるよ。でも、今の主の守り刀としてありたいって気持ちが強いんだ」
守り刀…。
何だろう、その感覚を知っている気がした。考え込む私に変に記憶を刺激してしまったのかと焦る不動くんにゆっくりと首を横に振った。
「そっか…」
「え?」
「もし…かしたら、私は、前の主様の、守り刀…として、脇差、になったのかも」
ぱちり、と記憶のピースが更にはまった感覚がした。“薙刀直し”は主戦力となる刀種が移り変わって薙刀の価値が薄れた時代に行われたものだと聞いている。前の主様は私を薙刀から脇差に直した。そして、守り刀としてお傍に置いて下さったんだ。
「そうだよ、きっとそうだ!」
それなら実戦経験が少ないのにも納得がいく。打刀と一緒に差して、打刀の出番の方が多かった。そして、私を使わずに済んだ。
「ありがとう…」
「俺は何もしてないよ。…でも、薙の力になれて良かった。この調子で色々思い出せるといいな」
笑顔で頷く。会話が一段落したところで、ふと不動くんが思い出したように「そういえばさ」と私を見た。
「薙のさっきの動きってさ、何と言うか、舞ってるみたいに見えたんだよな」
舞っている?どういうことなのだろう。
「いやもちろん実戦的な動きでもあったんだけどさ。俺の見間違いかなぁ」
2振りで「うーん」と首を傾げる。ここは岩融さんに見てもらった方が良いのだろうか。
「少なくとも俺にはキレイな舞にも見えたよ。何か意味があるのかもな」
「…そうかも」
「なぁ薙、気付いてるか?」
「え?」
何のことか分からずにまた首を傾げると、不動くんらしい笑顔でこう言ってくれた。
「話し方がもっと自然になってる」
「あ…、本当…だ…」
「何だか自分のことのように嬉しいよ。いつか俺たちと同じくらい喋れるようになったらさ、次郎太刀の居酒屋スペースで一緒に飲もうよ。絶対楽しいぜ!」
「うん」
「さ、そろそろ寝よう。明日に響いちゃうからな」
先に立ち上がった不動くんが手を差し出してくれて、その手を借りて立ち上がる。木刀を元の場所に戻して、電気を消して途中まで一緒に部屋へと戻った。
