女性審神者の名前です。
梅「審神者として出来ることは全てやらなきゃ」
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私が起きたのは、皆が昼餉を済ませた頃だった。気合いを入れて作業部屋に行くと、新しいお香が焚かれていた。そうしてくれたのは堀川だと、彼女の様子を見ていたこんのすけが教えてくれた。
「主様、大丈夫ですか?あまり顔色が優れませんが…」
「大丈夫」
私にもっと力があればここまで至らなかったはず。こんのすけの頭と頬を優しく撫でて、清光、長谷部、堀川の3振りを呼ぶよう頼む。
しばらくすると、長谷部が握ったおにぎりを持って集まってくれた。食後のデザートとしてどら焼きも食べ、堀川が淹れてくれた緑茶と共に皆と話す。執務室と作業部屋を仕切っている襖を開けたまま、時折彼女の姿を見ながら彼女の様子を話す。既に長谷部は皆に、当分の間この部屋に近づかないように伝えてくれている。
「少しだけ霊力が落ち着いたように感じますね」
「うん。ただ、今の状態だと回復にどれぐらい掛かるのかは読めないな」
「彼女もそうですが、俺は主の体調も心配です。どうか、ご無理はなさらずに」
「ありがとう。でも、あの子を顕現させたのは私。審神者として出来ることは全てやらなきゃ。皆には心配掛けちゃうかもしれないけど、そこは許して」
「…分かりました。ですが、何かお困りのことがあれば何でもお申しつけ下さい」
「俺も何でもするよ。俺だけじゃない。皆も何でもするよ。だから、1人で抱え込まないでよね」
「うん」
みんなが優しくて思いやりのある男士で良かった。
この本丸にいられる私は本当に幸せ者。
そこで穏やかな雰囲気のところに、落ち着いていたはずの彼女の呼吸が荒くなる。慌てて新しい札を持って近づいてみると、酷くうなされていた。悪夢を見ているようだ。
この子が刀剣だった頃、何があったのだろう。今は紋だけでは情報不足で何も分からない。彼女が意識を取り戻すまで待つしかないのが悔しい。
札と一緒に彼女の胸に手をかざして霊力を注ぐと、悪夢から解放されたのか、熱で苦しそうにしながらも何とか落ち着いた。
「主さん、この人は脇差ですよね」
彼女の本体は反りがあって鯰尾と骨喰のものと似ている。恐らく“薙刀直し”をされた脇差だろう。でも、その2振りとは何かが違う気がする。それは長谷部も感じていたらしく、本体を手に取って刀装具をじっくりと確かめている。
「主、柄を良く見て下さい。これは本物の鮫皮です」
柄糸の下に張られているものは“鮫皮”と呼ばれているが、実際に使われていたのはエイの皮。鮫皮は非常に高価なもので、本物を使われている刀剣は少ない、と師匠から教わった。
「…ということは、前の主さんは身分が高い人ってことになりますね」
「あぁ、そのようだ」
鞘の装飾も豪華だ。鍔も拘って作られているように見える。腕の立つ刀工が薙刀直しをしたのかもしれない。
それと、気になることもある。あの子の霊力は大太刀と似たものが混じっている気がするのだ。
「長谷部、石切丸さんを呼んで来て。大麻 を持って来てって伝えてくれる?」
「分かりました」
サッと立ち上がって部屋を出て行った長谷部を横目に、清光に加持祈祷を頼むのかと聞かれたが、それもあるし霊力を視てほしいのもある。
しばらくして、石切丸がやって来た。
「おや」
眠っている彼女を見て少しだけ目を見開いた。
「そういうことだったのだね。それで、私は加持祈祷をすればいいのかな?」
「お願いできる?あとね、この子の霊力を確かめてほしくて。石切丸さんと似てる気がするの」
「分かったよ」と彼女の近くに座り、額に手をかざす。確かに自身のものと似た霊力を感じるらしい。
「じゃあ、この人って神社にゆかりがあるってこと?」
「その可能性はあるね。ただ、仮に彼女が奉納されていたとしても、それが脇差だったという話は聞いたことがないよ」
「そこなんだよねぇ…」
石切丸が来るまでの間、神社とゆかりのある薙刀と脇差を調べてみたけれど、該当はなかった。ということは、少なくとも彼女はこの本丸にいる刀派の刀剣ではないと考えるのが自然。刀派に属していれば何かしら情報が得られるはずだから。
「それと主、今焚いているお香では彼女の霊力が落ち着くまでに時間が掛かりそうだね。もう少し効果のあるお香はあるかい?」
「この本丸にあるお香で1番効果があるのはそれなんだ。やっぱり紫 ちゃんに聞かないとならないかな」
紫ちゃんは交流のある審神者の1人。私の後輩で神社の家系の子だ。趣味が香道なのもあって、こういった時に用いるお香も詳しい。事情が事情なので出来れば自力でどうにかしたかったけれど、やはり彼女に聞いてみた方が良さそうだ。
「ひとまず、加持祈祷を行おうか」
「お願いします」
皆が姿勢を正して加持祈祷を見守る。
「祓い給え、清め給え、神ながら守り給え、幸え給え…」
この部屋で聞こえるのは。大麻を振る音だけ。やはり石切丸が加持祈祷するとなると空気が変わる。祓詞 も3回唱え、彼女の額に手をかざす。
「はい、終わったよ」
「ありがとう」
「きっと皆から何か聞かれるだろうけれど、霊力が酷く乱れていて意識が戻っていない、と伝えれば良いかな?」
「うん、それでお願い」
「問題は全振りに伝えるタイミングですね」
皆で考え込む。隠しているわけではないが、後ろめたさも感じる。少なくとも彼女の意識が戻るまでは静かに過ごしたい。ただ、それがいつになるか、だ。
「今日は堀川くんにはあの子の看病をメインにお願いしようかな。私は調べものをしてみる」
「分かりました」
「みんなは普通に過ごしてていいからね」
「承知しました」「りょうかーい」「分かったよ」とそれぞれが返事をして部屋を去っていく。和泉守が堀川が私に付きっきりで近侍の仕事をしているのを不思議がるかもしれないけれど、清光が上手く回ってくれるだろう。
「主様、大丈夫ですか?あまり顔色が優れませんが…」
「大丈夫」
私にもっと力があればここまで至らなかったはず。こんのすけの頭と頬を優しく撫でて、清光、長谷部、堀川の3振りを呼ぶよう頼む。
しばらくすると、長谷部が握ったおにぎりを持って集まってくれた。食後のデザートとしてどら焼きも食べ、堀川が淹れてくれた緑茶と共に皆と話す。執務室と作業部屋を仕切っている襖を開けたまま、時折彼女の姿を見ながら彼女の様子を話す。既に長谷部は皆に、当分の間この部屋に近づかないように伝えてくれている。
「少しだけ霊力が落ち着いたように感じますね」
「うん。ただ、今の状態だと回復にどれぐらい掛かるのかは読めないな」
「彼女もそうですが、俺は主の体調も心配です。どうか、ご無理はなさらずに」
「ありがとう。でも、あの子を顕現させたのは私。審神者として出来ることは全てやらなきゃ。皆には心配掛けちゃうかもしれないけど、そこは許して」
「…分かりました。ですが、何かお困りのことがあれば何でもお申しつけ下さい」
「俺も何でもするよ。俺だけじゃない。皆も何でもするよ。だから、1人で抱え込まないでよね」
「うん」
みんなが優しくて思いやりのある男士で良かった。
この本丸にいられる私は本当に幸せ者。
そこで穏やかな雰囲気のところに、落ち着いていたはずの彼女の呼吸が荒くなる。慌てて新しい札を持って近づいてみると、酷くうなされていた。悪夢を見ているようだ。
この子が刀剣だった頃、何があったのだろう。今は紋だけでは情報不足で何も分からない。彼女が意識を取り戻すまで待つしかないのが悔しい。
札と一緒に彼女の胸に手をかざして霊力を注ぐと、悪夢から解放されたのか、熱で苦しそうにしながらも何とか落ち着いた。
「主さん、この人は脇差ですよね」
彼女の本体は反りがあって鯰尾と骨喰のものと似ている。恐らく“薙刀直し”をされた脇差だろう。でも、その2振りとは何かが違う気がする。それは長谷部も感じていたらしく、本体を手に取って刀装具をじっくりと確かめている。
「主、柄を良く見て下さい。これは本物の鮫皮です」
柄糸の下に張られているものは“鮫皮”と呼ばれているが、実際に使われていたのはエイの皮。鮫皮は非常に高価なもので、本物を使われている刀剣は少ない、と師匠から教わった。
「…ということは、前の主さんは身分が高い人ってことになりますね」
「あぁ、そのようだ」
鞘の装飾も豪華だ。鍔も拘って作られているように見える。腕の立つ刀工が薙刀直しをしたのかもしれない。
それと、気になることもある。あの子の霊力は大太刀と似たものが混じっている気がするのだ。
「長谷部、石切丸さんを呼んで来て。
「分かりました」
サッと立ち上がって部屋を出て行った長谷部を横目に、清光に加持祈祷を頼むのかと聞かれたが、それもあるし霊力を視てほしいのもある。
しばらくして、石切丸がやって来た。
「おや」
眠っている彼女を見て少しだけ目を見開いた。
「そういうことだったのだね。それで、私は加持祈祷をすればいいのかな?」
「お願いできる?あとね、この子の霊力を確かめてほしくて。石切丸さんと似てる気がするの」
「分かったよ」と彼女の近くに座り、額に手をかざす。確かに自身のものと似た霊力を感じるらしい。
「じゃあ、この人って神社にゆかりがあるってこと?」
「その可能性はあるね。ただ、仮に彼女が奉納されていたとしても、それが脇差だったという話は聞いたことがないよ」
「そこなんだよねぇ…」
石切丸が来るまでの間、神社とゆかりのある薙刀と脇差を調べてみたけれど、該当はなかった。ということは、少なくとも彼女はこの本丸にいる刀派の刀剣ではないと考えるのが自然。刀派に属していれば何かしら情報が得られるはずだから。
「それと主、今焚いているお香では彼女の霊力が落ち着くまでに時間が掛かりそうだね。もう少し効果のあるお香はあるかい?」
「この本丸にあるお香で1番効果があるのはそれなんだ。やっぱり
紫ちゃんは交流のある審神者の1人。私の後輩で神社の家系の子だ。趣味が香道なのもあって、こういった時に用いるお香も詳しい。事情が事情なので出来れば自力でどうにかしたかったけれど、やはり彼女に聞いてみた方が良さそうだ。
「ひとまず、加持祈祷を行おうか」
「お願いします」
皆が姿勢を正して加持祈祷を見守る。
「祓い給え、清め給え、神ながら守り給え、幸え給え…」
この部屋で聞こえるのは。大麻を振る音だけ。やはり石切丸が加持祈祷するとなると空気が変わる。
「はい、終わったよ」
「ありがとう」
「きっと皆から何か聞かれるだろうけれど、霊力が酷く乱れていて意識が戻っていない、と伝えれば良いかな?」
「うん、それでお願い」
「問題は全振りに伝えるタイミングですね」
皆で考え込む。隠しているわけではないが、後ろめたさも感じる。少なくとも彼女の意識が戻るまでは静かに過ごしたい。ただ、それがいつになるか、だ。
「今日は堀川くんにはあの子の看病をメインにお願いしようかな。私は調べものをしてみる」
「分かりました」
「みんなは普通に過ごしてていいからね」
「承知しました」「りょうかーい」「分かったよ」とそれぞれが返事をして部屋を去っていく。和泉守が堀川が私に付きっきりで近侍の仕事をしているのを不思議がるかもしれないけれど、清光が上手く回ってくれるだろう。