女性審神者の名前です。
梅「審神者として出来ることは全てやらなきゃ」
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―熱い。この場にあるもの全てが燃えている。
逃げようにも逃げられない。いや、たとえ逃げられたとしても逃げてはいけない。それが刀剣の宿命だ。自身に選択肢などあるはずがない。ただただ目の前の現実に身を委ねるだけ。
火の手は更に広がり、いよいよ建物全体が覆われたようだ。何かが崩れていく物音の中に人々の叫ぶ声が聞こえる。「ここももう危険だ!」「逃げるぞ!」と誰かが誰かを止めている声も聞こえた。
それでいい。逃げられるなら逃げてほしい。そして、無事に生き延びてほしい。
今にも崩れそうな天井を仰ぎ、そっと目を閉じた。
「 」
久々にやって来た鍛刀部屋に、私と始まりの一振りである清光、今週の近侍の堀川が集まった。
鍛刀が久々ならば、審神者服を着るのも久々だ。これを着ると修行時代を思い出して自然と背筋が伸びる。
「では、始めます」
霊力を込めた式札をそっと顕現用の刀剣に乗せる。やがて式札が光り始め、その光はどんどん大きくなり、そして人型の形となって輝きが落ちると同時にその姿が露わになった。
「えっ…?!」
そうして顕現したのは女性だった。それも束の間、手にしていた刀を落としてふらりと崩れていく。
「わっ」
咄嗟に堀川が抱き止めたものの、意識がない。
「主さん、この人すっごい熱いですよ?!」
「え、ちょ、主?!どーいうこと?!」
「わ、私も分からないよ…!ひとまず、私の作業部屋に運んで!清光は手入部屋からお香持って来て!青いやつね!」
「分かった!」
清光がドタドタと手入部屋へ行き、女性を抱きかかえた堀川と私は2階を目指す。寝室の襖を荒々しく開けて布団を取り出し、急いで作業部屋へと運んだ。
「主、お香持って来たよ!」
「今、主さんがあの人を着替えさせてます。僕は桶と手拭いを持って来ますね!」
「あ、うん…!」
戸惑っている声色で話す2振りを襖越しに聞きながら私の寝間着を着させる。彼らに手伝ってほしいところだが、女性なので私が1人でやるしかない。
それでもどうにか着替えさせて2振りを呼ぶ。
「えーと、主。やっぱ女の人…だよね?」
「うん」
「刀剣って男だけじゃなかったんですね…」
「そこも調べないとならないけど、まずはこの子をどうにかしないと。熱も酷いし、霊力が酷く乱れてる」
堀川が下の厨で水と氷を桶に入れ、手拭いをギュッと絞って彼女の額に乗せる。体温計で熱を測ってみると、39℃を超えていた。そのせいか手拭いはすぐに温くなってしまって、変わらず彼女は意識が戻ることはなく苦しんでいる。式札に込めた霊力では足りないようで、彼女の胸に手をかざして霊力を注ぎ込むことにした。
「主、大丈夫そう…?」
「やってみないと分からないかな…」
心配そうにしている2振りに、顕現したのが女性なのは伏せるよう伝える。せめて彼女の容態が落ち着くまでは静かに過ごしたい。皆に話すのはそれからでもいい。
だが、必要最低限の男士には話した方が良いだろう。清光に長谷部を呼ぶよう頼むと、やはり彼らしく光の速さでやって来た。
「主、この長谷部、只今参り…、はっ?!」
「しーっ!」
霊力を注ぎ込む私と彼女の姿に口を手で覆う。「まさかこんなことが…」と小さく漏らした。それはこの場にいる皆が思っていることだろう。
緊張が走る部屋に、霊力を注ぎ込む音と温くなっては手拭いを替える音だけが響く。これは手強い。
「長谷部、お願いね」
「はっ」
「2振りも今日はここまででいいよ。あとは私がやるから」
「でも…」
「あんまり遅いと安定くんも兼さんも心配するよ。大丈夫だから」
「分かりました…」
後ろ髪を引かれる思いなのだろう。何度も私と彼女を見ながら3振りは出て行った。
「主様…」
「こんのすけも寝ていいよ」
「…何かあったらすぐにお呼び下さいね」
「ありがとう」
作業部屋には私と彼女だけとなり、清光に焚いてもらったお香の効果を確かめる。もしかしたらこれでは足りないかもしれない。
他に良い調合はあったか考えながら、彼女に霊力を注ぎ続けた。
―翌朝
「主、失礼いたします」
「おはよう」
「主…、徹夜だったのですね…?」
「まぁね…」
「彼女の様子はどうでしょう」
「落ち着いてきたかな。ほんの少しだけ、ね」
私はあれからずっと彼女に霊力を注いでいた。少しで済むだろうと思いきや、霊力の乱れが落ち着くことはなかったのだ。今はこんのすけの提案で予め私の霊力を込めておいた札を使っている。少し休んだらもう1度直接霊力を込めなければ。
長谷部に少し休むことだけを伝えて、彼が敷いてくれた布団に入る。今週末に師匠のいる本丸に顔を出す予定だったが、こんのすけにはそれを延期してほしいと連絡するよう頼んである。
少しだけ、少しだけ…。
自分が思っていた以上に体は疲れていたようで、すぐに眠りについた。
逃げようにも逃げられない。いや、たとえ逃げられたとしても逃げてはいけない。それが刀剣の宿命だ。自身に選択肢などあるはずがない。ただただ目の前の現実に身を委ねるだけ。
火の手は更に広がり、いよいよ建物全体が覆われたようだ。何かが崩れていく物音の中に人々の叫ぶ声が聞こえる。「ここももう危険だ!」「逃げるぞ!」と誰かが誰かを止めている声も聞こえた。
それでいい。逃げられるなら逃げてほしい。そして、無事に生き延びてほしい。
今にも崩れそうな天井を仰ぎ、そっと目を閉じた。
「 」
久々にやって来た鍛刀部屋に、私と始まりの一振りである清光、今週の近侍の堀川が集まった。
鍛刀が久々ならば、審神者服を着るのも久々だ。これを着ると修行時代を思い出して自然と背筋が伸びる。
「では、始めます」
霊力を込めた式札をそっと顕現用の刀剣に乗せる。やがて式札が光り始め、その光はどんどん大きくなり、そして人型の形となって輝きが落ちると同時にその姿が露わになった。
「えっ…?!」
そうして顕現したのは女性だった。それも束の間、手にしていた刀を落としてふらりと崩れていく。
「わっ」
咄嗟に堀川が抱き止めたものの、意識がない。
「主さん、この人すっごい熱いですよ?!」
「え、ちょ、主?!どーいうこと?!」
「わ、私も分からないよ…!ひとまず、私の作業部屋に運んで!清光は手入部屋からお香持って来て!青いやつね!」
「分かった!」
清光がドタドタと手入部屋へ行き、女性を抱きかかえた堀川と私は2階を目指す。寝室の襖を荒々しく開けて布団を取り出し、急いで作業部屋へと運んだ。
「主、お香持って来たよ!」
「今、主さんがあの人を着替えさせてます。僕は桶と手拭いを持って来ますね!」
「あ、うん…!」
戸惑っている声色で話す2振りを襖越しに聞きながら私の寝間着を着させる。彼らに手伝ってほしいところだが、女性なので私が1人でやるしかない。
それでもどうにか着替えさせて2振りを呼ぶ。
「えーと、主。やっぱ女の人…だよね?」
「うん」
「刀剣って男だけじゃなかったんですね…」
「そこも調べないとならないけど、まずはこの子をどうにかしないと。熱も酷いし、霊力が酷く乱れてる」
堀川が下の厨で水と氷を桶に入れ、手拭いをギュッと絞って彼女の額に乗せる。体温計で熱を測ってみると、39℃を超えていた。そのせいか手拭いはすぐに温くなってしまって、変わらず彼女は意識が戻ることはなく苦しんでいる。式札に込めた霊力では足りないようで、彼女の胸に手をかざして霊力を注ぎ込むことにした。
「主、大丈夫そう…?」
「やってみないと分からないかな…」
心配そうにしている2振りに、顕現したのが女性なのは伏せるよう伝える。せめて彼女の容態が落ち着くまでは静かに過ごしたい。皆に話すのはそれからでもいい。
だが、必要最低限の男士には話した方が良いだろう。清光に長谷部を呼ぶよう頼むと、やはり彼らしく光の速さでやって来た。
「主、この長谷部、只今参り…、はっ?!」
「しーっ!」
霊力を注ぎ込む私と彼女の姿に口を手で覆う。「まさかこんなことが…」と小さく漏らした。それはこの場にいる皆が思っていることだろう。
緊張が走る部屋に、霊力を注ぎ込む音と温くなっては手拭いを替える音だけが響く。これは手強い。
「長谷部、お願いね」
「はっ」
「2振りも今日はここまででいいよ。あとは私がやるから」
「でも…」
「あんまり遅いと安定くんも兼さんも心配するよ。大丈夫だから」
「分かりました…」
後ろ髪を引かれる思いなのだろう。何度も私と彼女を見ながら3振りは出て行った。
「主様…」
「こんのすけも寝ていいよ」
「…何かあったらすぐにお呼び下さいね」
「ありがとう」
作業部屋には私と彼女だけとなり、清光に焚いてもらったお香の効果を確かめる。もしかしたらこれでは足りないかもしれない。
他に良い調合はあったか考えながら、彼女に霊力を注ぎ続けた。
―翌朝
「主、失礼いたします」
「おはよう」
「主…、徹夜だったのですね…?」
「まぁね…」
「彼女の様子はどうでしょう」
「落ち着いてきたかな。ほんの少しだけ、ね」
私はあれからずっと彼女に霊力を注いでいた。少しで済むだろうと思いきや、霊力の乱れが落ち着くことはなかったのだ。今はこんのすけの提案で予め私の霊力を込めておいた札を使っている。少し休んだらもう1度直接霊力を込めなければ。
長谷部に少し休むことだけを伝えて、彼が敷いてくれた布団に入る。今週末に師匠のいる本丸に顔を出す予定だったが、こんのすけにはそれを延期してほしいと連絡するよう頼んである。
少しだけ、少しだけ…。
自分が思っていた以上に体は疲れていたようで、すぐに眠りについた。